「ボールは一級品」球団OBが指摘する阪神・高橋が“左のエース“になるための条件とは?

阪神・高橋遥人【写真:荒川祐史】

阪神OB藪恵壹氏が期待する高橋の成長と乗り越えるべき課題

■阪神 2-1 巨人(24日・東京ドーム)

阪神は24日、東京ドームでの巨人戦に2-1で勝利した。先発の高橋遥人投手は、巨人が誇る大エース、菅野智之投手と今季3度目のマッチアップで、6回を4安打1失点と好投し、ようやく菅野に土をつけた。今季は開幕13連勝という無敵ぶりを発揮している菅野に投げ勝ったことは、3年目左腕にとって「すごく自信になったと思いますよ」と語るのは、阪神OBで元メジャーの藪恵壹氏だ。

この日の両投手の状態について「ここへ来て調子自体はちょっと落ちて来ていますね。菅野投手は13連勝が止まって2連敗。真っ直ぐがきていなかった。高橋もそうでしたね」と話す。

「菅野投手は7回に指がつったようで、一度マウンドで投球練習をしながら、ベンチへ戻り、またマウンドに上がりました。それくらい、シーズン終盤にきてピッチャーはかなり疲労がたまっているなと、両投手を見て感じました」

そんな中、沢村賞投手の候補にも挙がる菅野に投げ勝った高橋だが、この日の勝因はどこにあったのか。

「丁寧に投げていましたし、連打されないピッチングでした。唯一、菅野投手に中越え二塁打を許した6回だけですよね。投手に打たれると、ああいう展開になる。でも、よく1点で凌ぎました。あそこを1点で凌いだことで、直後の勝ち越しに繋がりました」

藪氏も現役時代、何度もマッチアップを重ねながら、なかなか勝てなかった投手がいるという。それが、元中日の今中慎二氏だ。

「僕は大分、ドラゴンズ戦で勝てなかったんですけど、相手はだいたい今中でしたね。正確なマッチアップ回数は覚えていませんが、印象としては3、4回は勝てなかった気がします。最後の方で少し勝つようになりましたけど。ようやく勝った時はエース級に投げ勝ったということで、大きな自信になりました」

元エースの藪氏から愛のある辛口エール「課題は多いですよ」

もちろん、菅野に投げ勝った高橋にとっても大きな自信が沸く勝利となったはずだ。だが、右の西勇輝と並び、左のエースとして活躍する可能性があるだけに、高橋には「課題は多いですよ」と、さらなるレベルアップを要求する。

「彼はプロ3年目になるのに、コンディション不良が多い。ローテーションの軸になる選手が、コンディション不良でパッと離脱されると、チームは困ります。今日で今季は11試合目の先発。これでは物足りないですよね。通常、143試合ある時に先発は30試合くらい投げます。今季の倍以上ですよ。でも、11試合で疲れが見えているのは不安ですね」

藪氏が高橋に参考にするようアドバイスするのが、今季19試合に投げて10勝5敗の成績を挙げる西だ。

「西投手なんか全然元気ですよ。開幕当初と何ら変わりのないボールを投げていますから。それにはやっぱり、それなりの理由があると思います。高橋投手のコンディション不良が多いのは、練習しすぎて疲労がたまりすぎているのか、逆にトレーニングが少ないのか。それがどっちなのかを見極める必要はあると思います。せっかく西投手という素晴らしい投手がいるんだから、高橋投手は参考にしながら、自分でやるべきことを選択していかないと、僕は長くエース級でいられないと思います」

藪氏が辛口エールを送るのも「ボールは一級品ですよ」と、高橋が持つ才能を認めるからだ。自身もエースとして活躍した経験があるだけに「期待が大きいと要求されるものも高くなります」と話す。

高橋が来季に好感触を繋ぐためには、藪氏はこんな期待をする。

「今季はあと2試合、多くて3試合。そこでストロングフィニッシュを飾ってほしいですね。いい状態で来年に繋げることが大事。今日勝って5勝4敗と勝ち越しましたが、もっと勝ち星を上乗せして終わってほしいですね。西投手と左右の両輪として切磋琢磨して、2桁勝利を目指すつもりでやってもらいたいと思います」

残り13試合となった今季を力強く締めくくるべく、高橋の奮起に期待したい。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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