無念の閉店 神奈川・三浦の「ガラス工芸館」 新型コロナで来訪者激減

10年余の歴史に幕を閉じ、シャッターが閉まった「三浦ガラス工芸館〝Kirari〟」=三浦市三崎3丁目

 三浦市三崎3丁目の空き店舗を活用した「三浦ガラス工芸館“Kirari”」が9月末、閉館した。下町商店街の活性化を図ろうと、三崎漁港内の産直センター「うらりマルシェ」などを展開する三浦海業公社(四宮利雄社長)が運営していたが、新型コロナウイルスの影響で来館者が激減。10年余の歴史に幕を閉じた。

 ガラス工芸館は2010年3月、新たな観光施設として「チャッキラコ・三崎昭和館」など2施設と同時にオープンした。年間約130万人を数える「うらりマルシェ」への来訪者を三崎の下町商店街に誘導するのが目的だった。

 国内外の作家によるガラス工芸品の展示即売に加え、評判だったのが体験コース。講師の指導で小さなトンボ玉やジェルキャンドルなどが手作りできた。四宮社長によると、19年度も約1万3千人が来館。誘客目的の施設のため多少赤字だったが、本体部分で十分吸収できる額だったという。

 それが、新型コロナ禍で一変した。同館は4月から2カ月間の休館を余儀なくされ、再開した6月以降も体験コースは開設しなかった。体験の指導はある程度接触したり、密になったりする恐れがあるためだ。

 その結果、20年度の来館者は8月末までで前年同期に比べ76%減少し、赤字額は3倍以上に膨らんだ。「今後も体験コースの再開は難しく、経営的にも厳しい。9月の取締役会で閉館を決定した」と四宮社長は無念の表情を浮かべた。

 現在は講師のスタッフらが委託されたガラス工芸品の返却作業など残務処理に追われている。同社長は「閉館は残念だがやむを得なかった。今後も下町の活性化に貢献していく方針は変わらない。観光客に親しまれる新しい施設をできるだけ早くオープンさせたい」と話している。

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