aiko、真夜中のラジオリスナーに寄り添う声

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aikoの声はなぜこんなにも真夜中が合うのだろう? その歌声を耳にしても、ラジオでのトークを聴いても、不思議と夜……しかも24時を越えた真夜中が思い浮かぶ。だからと言って、決して寂しい雰囲気ではない。暗闇の中でも凜としていて、優しさも温かさも伝わってくる、そんな感じ。

笑うのが苦手な人、人混みが苦手な人、会社が苦手な人、学校が苦手な人、明日もいい日でありますように――。もう放送されていたのは20年近く前になるが、『aikoのオールナイトニッポン』のエンディングで毎回語られていたこの文句をふと思い出すのも決まって夜だ。考えてみれば、深夜ラジオという媒体を通してずっと彼女の声に触れてきた気がする。

実際に最近もaikoと深夜ラジオの縁は深い。今年2月、『King Gnu井口理のオールナイトニッポン0(ZERO)』で井口とaikoが「カブトムシ」を2人で熱唱して話題になった。世の中のほとんどの人間が寝静まっている深夜3時、しかもラジオのブースというとても小さな空間から生まれた2人のハーモニーはたくさんのリスナーたちの心を打った。井口からの熱烈なラブコールを受けての出演だったが、そこにaikoが何の違和感もなくハマったのは、やっぱり深夜ラジオの空気に馴染んでいるからだろう。

TBSラジオの『山里亮太の不毛な議論』でも、aikoは“不毛ファミリー”として迎えられている。初めてこの番組に出演したのは2014年のことだから、もう6年以上の付き合いになるが、出演するたびにコーナーでいじられているのもリスナーに愛されている証拠。恒例の『大喜利甲子園』にもラジオネーム「赤面のどちんこ」として参加するほど信頼関係は深い。昨年6月に山里が蒼井優との結婚を発表した際には、スタッフにも情報が隠されていたため、偶然にも当日のラジオにゲスト出演。山里の結婚を祝福し、翌週には収録という形で、山崎静代と「てんとう虫のサンバ」を披露した。

もっと関わりが長いのは『ナインティナインのオールナイトニッポン』だ。岡村隆史個人がパーソナリティの時期にも定期的にゲストに呼ばれ、時に岡村の愚痴を聞き、時に岡村を笑顔で叱り、時に鼻うがいを指導するなど、番組には欠かせない存在になっていた。今年4月、賞味期限が切れ、膨れあがっている“5年もの”の桃の缶詰を開けるという実にラジオらしいバカバカしい企画にも見届け人として参加。岡村のオファーを受けて、1時間足らずで生み出した新曲「ホワイトピーチ」をSNSで公開し、緊急事態宣言下で気持ちの沈んだリスナーたちを喜ばせた。

そして、山里の時と同じように、先日はまたまた偶然にも岡村の結婚発表をする場面にゲスト出演。スポーツ紙“aikoスポーツ”の記者さながらに、リスナーに代わって岡村の心境に迫り、最後には矢部浩之も含めた3人で「ボーイフレンド」を歌い上げた。aiko自身もヘビーリスナーゆえに、岡村の報告を聞いて嬉し涙を流す場面も。リスナーのメールを読む際に、まるで自分の番組のように「ありがとうございます」と感謝の言葉を挟んでいることからも強いリスペクトを感じさせた。

ここで紹介したのは一例で、他にも本当に数多くのラジオ番組に出演している。彼女の歌がラジオから流れてきたとき、“有名アーティスト”という遠い存在ではなく、不思議と“こっち側の人”という親近感を持つ。もしかすると「aikoの声が真夜中に合う」と感じるのは、ラジオの電波を介し、それだけ多くの夜を一緒に過ごしてきたからかもしれない。

2017年に開催された『岡村隆史のオールナイトニッポン歌謡祭 in 横浜アリーナ』に出演した際、aikoはベストアルバムの特典DISCにしか収録されていない「ラジオ」を最後の1曲に選んだ。「私は本当にラジオが大好きで。この歳になっても、ずっと聴いてるんですよ。これからもラジオとともに、寂しい心を埋めていきたいと思います」。そんな言葉のあとに切々と歌い上げたこの曲の歌詞にはこんな一節がある。

「小さい頃はこの世界に 生きてるのはあたしだけなのかもと 不安になった時に必ず 『違うよ』とノイズ混じりに叱られた」

使い古された表現だけれども、「ラジオは心に寄り添うメディア」だとよく言われる。そういう意味で言えば、パーソナリティとして、ゲストとして、そしてひとりのラジオ好きとして、aikoはずっとリスナーに寄り添ってくれた。誰もが孤独や寂しさを感じずにはいられない真夜中。そんな時も、ラジオで熱く歌い、大いに笑い、たまには優しく叱りもし、時々シモネタを叫ぶaikoの声はずっと私の、そしてあなたの側にいる。

締切直前の深夜4時、ようやくコラムの原稿を書き終えたから、寝る前にゆっくりaikoの歌でも聴こう。