ひふみ投信・藤野氏に聞く「投資初心者は、何から始めるべきですか?」

「ひふみ投信」で知られる、レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役会長兼社長の藤野英人氏。[前回](https://media.moneyforward.com/articles/5508
/summary)に引き続き“お金の賢人”藤野氏に「お金に強くなる習慣」をどうやって身につけたらよいかを話してもらいました。


習慣1:投資はまず“自分”に対して

――「老後2000万円問題」などで投資に興味を持つ人が増えているようです。まずどんなことから始めるとよいでしょうか。

投資というと、金融商品を買って利益を狙うことばかりに気が向きがちですが、それよりもはるかに効果が高い投資があります。それは、自分への投資です。

金融商品を買って利益を上げれば、その利益には課税されてしまいます。株や投資信託であれば、利益の約20%が税として徴収されることになります。NISA(小額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった投資の利益課税されない有利な制度はあるものの、使える額には制限があります。

しかし、たとえば英語の勉強をしてTOEICの点を100点上げられたら、その100点はすべて自分のものにできます。自己投資で成長した部分はすべて丸取りでき、誰かに取られる心配もありません。自分への投資は非課税で無限に成長できる非常に有利な投資で、それで稼ぐ力を身につければ結果として金融商品よりもずっと安定的な利益を得られるでしょう。「投資の神様」として知られるウォーレン・バフェットでさえ、「最強の投資は自己投資である」と発言しているほどです。

もちろん、お金を投資に回して利益を狙っていくことにもぜひ挑戦してほしいと思いますが、投資の対象はそれだけではないことも覚えておいていただきたいと思います。お金の投資では最初の一歩を踏み出せないという人も、ぜひ自己投資から始めてみてください。

習慣2:個別株投資に挑戦し、自己成長につなげる

――投資をスタートしたいという場合、どんな方法がいいでしょうか。

前回記事でもお話しましたが、最も簡単なのは、投資信託を毎月一定額、自動で買い付けていく積み立て投資です。残ったお金で生活することで家計をスリム化できる効果もあるうえ、一度設定した後はほったらかしでいい。お金を増やしながら、自己投資のための時間をしっかり確保できます。

そこからもう一段、ステップアップしたいなら、個別株への投資にチャレンジしてみるといいでしょう。私の周囲でも、うまくやっている人は積み立て投資と個別株投資を両立している人が多いです。個別株投資はリスクは高まるものの、成功すればより大きな利益が期待できるうえ、自分への投資を兼ねられるという大きなメリットがあります。

個別株だけでなく、金や原油などの商品やREITなど、何でも構いません。これらの金融商品はすべて経済と紐づいているので、投資することで否応なしに経済や世の中の動きと向き合うことになります。こうした投資を続けることで社会人としての視野が広がり、現状を的確に把握する力や先読み力が養われます。株価の動きは投資家のメンタルも影響するので、人の心理の動きを学ぶ機会にもなります。結果的に、それがビジネスでも成功する力につながるのです。

習慣3:理解できる対象、理由を言える対象に投資する

――具体的な投資対象はどうやって選ぶのがいいでしょうか。

自分が理解できて、投資する理由を明確にできるものに投資するのが鉄則です。成長が期待できるビジネスであるとか、経営者が素晴らしいとか、割安だとか、なんでもいいので投資する理由をシンプルに説明できることが必要です。

それができない投資対象だと、「よくわからないけど、上がりそう」といった漠然とした理由になってしまいがちです。それではギャンブルと同じで、たとえ成功してもまぐれ当たりに過ぎないので、そこからは何も学べません。

理解だけでなく、興味や関心のある分野を対象とするのもお勧めです。趣味や好きなもの、自分が働いている業界の近接領域などでもいいでしょう。関心が広がると理解できる対象も増えて投資できる対象が広がり、利益のチャンスも増えることになるので、さらに関心が広がるという良いサイクルが生まれます。

実は私は、「多趣味過ぎるファンドマネージャー」といわれるほど幅広い楽しみを持っているのですが、趣味そのものが楽しいのはもちろん、仲間の輪が広がるし、人脈が増えることで入ってくる情報や関心の対象もどんどん広がるのを実感しています。結果として利益のチャンスも広がるので、本当にいいことづくめです。

――視野や人脈を広げたり余暇を楽しむことが、結果として投資にも生きてくるのですね。

私は大学卒業後、司法試験を目指して働きながら勉強しようと、資産運用会社に就職しました。アルバイトよりも聞こえが良くて稼げそうという安直な理由でしたが、そこで毎日のようにさまざまな企業の社長の話を聞いたことで価値観が大きく変わりました。

たとえば、水道の蛇口の栓を作るメーカーでは、その栓の形によって水の出方はもちろん、水道代や水質、水の用途まで変えることができるそうです。その会社の社長さんは自らのビジネスに誇りを持ち、人々の生活や事業をより便利にする栓の開発に情熱を注いでいることがひしひしと伝わってきました。この社長に会うまでは水道の栓なんて気に留めたこともなかったけれど、そこにはさまざまな技術と関わる人たちのエネルギーが注がれているのです。

そう思って周囲を見渡せば、あらゆるものがそうであることに気づきます。私たちは人々のエネルギーと情熱が注がれたものに囲まれて生きていることがわかると、見える景色が変わってきます。世の中は実にカラフルで、前向きなエネルギーに満ちていると感じられるのです。

私は投資を、「未来のためにエネルギーを投入し、未来からお返しをもらうこと」と定義づけています。あらゆるモノやサービスは、誰かが「作っても売れないかもしれない」というリスクを負って、お金と時間、情熱と愛情を注いだ結果です。これは裏を返せば、リスクを取ってお金やエネルギーを投じる人がいなければ、新しい未来は生まれないということです。

私たちにはそれぞれ本業があるので他の会社の仕事を手伝うことはできませんが、リスクを取って応援したい企業にお金を投じることができます。これが投資の本質です。株式投資は対象となる企業が生み出す未来からお返しをもらうことであり、利益はそのお返しのひとつに過ぎません。そのほかにもその企業のおかげで生活が便利になったり、投資することで視野や知識が広がったり、ワクワクする気持ちになれたり、老後の生活に不安がなくなったりすることも、すべて投資のリターンなのです。

習慣4:「勝つか学ぶか」の世界観に自分を置く

――投資は、お金を右から左に動かすだけではないのですね。

投資はラクして儲けるからずるいとか、お金でお金を得ることだという人もいますが、それはその人の考える投資がずるいからではないでしょうか。車が便利な移動手段であると同時に大事故を引き起こす危険をはらむのと同じで、物事には二面性があります。楽して儲けてずるいとかギャンブルだと考える人には、それ相応の結果しか出せないでしょう。

投資に限りませんが、物事を「勝つか負けるか」という軸だけで評価していると、得られるものは限られてしまいます。そこで私は何に対しても、「勝つか学ぶか」だと考えるようにしています。

もし、投資で損失を出してしまっても、それは負けではなく次に生かせる学びのチャンスだと考えるのです。失敗した理由を学ぶことで、次の投資ではその損失を補って余りあるリターンを得られるかもしれません。「勝つか負けるか」という価値観を捨て、「勝つか学ぶか」の世界観に自分を置くことで、人生のあらゆることを自己成長の材料にできます。それが結果として、資産の成長につながっていくことにもなるのです。

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