<金口木舌>「恩返し」の絆

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 猛毒を持つことから恐れられるハブ。咬傷(こうしょう)被害は2019年は55件にとどまったが、復帰前は年間400件以上の被害が発生していた▼忌み嫌われるハブだが、大宜味村など北部には「ハブの恩返し」という民話が残っている。海岸近くのアダンの木々が燃える中、海水をくみに来た女性がハブを助ける

▼ハブは後日、お礼にと女性の赤ちゃんのお守りをして泣きやませ、ハブにかまれないおまじないを教える。ハブの首元が細くくびれているのは、赤ちゃんに首根っこを握られたからだという

▼21日付の本紙の投稿欄に掲載された稲福隆さん=大宜味村=の「楓空(ふうあ)ちゃんへの寄付」。高額な手術費用が必要だった金城楓空さん(10)の父親は同村出身。「食事代を減らしても寄付する」。楓空さんの祖父に世話になったという集落の人らからの寄付が次々と寄せられた

▼小児がんでは希少な「腹膜悪性中皮腫」にかかった楓空さんの手術が22日、無事終わった。東京都の国立国際医療研究センターで腫瘍のある臓器などを切除する「完全減量切除」と、腹腔内に抗がん剤を循環させる「術中腹腔内温熱化学療法」が施された

▼小さな体で長時間の手術を乗り切った楓空さん。療養生活が始まっているが、つらくて泣きたいときもあるはず。そういうときは、楓空さんの笑顔のために紡がれた「恩返し」の絆を思い出してほしい。