韓国目指した北朝鮮の一家3人、逮捕され強制収容所送りに

韓国統一省の調べによると、今年9月の時点で韓国に入国した脱北者の数は累計3万3718人。その多くが、北朝鮮の中でも中国との国境に面した地域の出身者だ。逆に言うと、それらの地域には脱北して韓国や第三国に住む家族や親戚を持つ人が多く、連絡を取り合っている人も少なくない。

韓国・京畿道庁の外郭団体、京畿道女性家族研究院が2016年に道内に住む脱北女性400人を対象に行なった調査によると、回答者の39.3%が北朝鮮に子どもを残したまま脱北し、そのうち57.5%が子どもと連絡を取り合い、47.0%が送金した経験があると答えた。また、62.1%が子どもを韓国に連れて来たいと答えた。

北朝鮮当局は、家族や親戚に脱北者がいる人を「脱北予備軍」と見て、監視と締め付けを強化しているが、それでも脱北がしばしば起きている。

今年3月末に、中国との国境に面した咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧で、脱北直前で逮捕された一家3人も、韓国を目指していた。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、40代男性のハンさんとその一家には、脱北して2018年から韓国に住む親戚がいて、頻繁に連絡を取り合っていた。脱北を目指してのことだが、なかなか計画を実行に移せずにいた。

その動きを察知した保衛部は、隣家と職場の同僚を抱き込み、スパイに仕立て上げて監視を続けていた。保衛部からスパイになれと求められ、断ることは困難だ。

そうとはつゆ知らず、脱北計画を進めていたハンさん一家は、今年3月末に実行に移すことにした。そして、闇夜に乗じて国境を流れる豆満江の河原から中国に向かって歩みだそうとしたところ、潜んでいた保衛部の要員に逮捕された。

当局は新型コロナウイルス対策として、国境地帯に近づく者に対して、無条件で銃撃するように命令を下しているが、一家が銃撃されたのかどうかを含めて、逮捕時の状況はわかっていない。

一家は、咸鏡北道保衛局の集結所で1ヶ月間の取り調べを受けた上で、反逆罪、スパイ罪の容疑者が入れられる拘禁所に移送され、さらに5ヶ月間厳しい取り調べを受けた。情報筋は言及していないが、拷問を受けたことは想像に難くない。

情報筋は言及していないが、取り調べの過程で暴言、暴行、拷問を受けたことは、想像に難くない。9月末になって、一家は管理所(政治犯収容所)に移送された。

刑期満了後に社会復帰が可能な「革命化区域」と、何があっても絶対に出てこられない「完全統制区域」のどちらに入れられたのかは不明だが、たとえ後者だとしても、衛生状況が劣悪で、まともな食事が与えられず、恣意的な暴力、処刑が横行していることを考えると、一家が生きて出てくるのは非常に困難だろう。

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