改定版「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を徹底解説~労働時間、健康はどう管理する?~

2020年9月1日、厚生労働省は改定版「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表しました。
「副業・兼業の促進に関するガイドラインは副業や兼業をしている従業員に対し、企業が気をつけておかなければならないことがまとめられています。
今回は、改定版で追加された労働時間管理や健康管理についてわかりやすく解説します。

改定ポイント1:労働時間管理

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改定ポイントの一つは、副業・兼業を行う場合における労働時間管理です。

労働時間の上限

労働者には労働基準法によって労働時間の上限が定められています。
では副業・兼業の労働時間の上限はどのように決められるのでしょうか。
改定版「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、本業と副業・兼業の労働時間を通算したものに上限が定めることとされています。
この”通算”が適用されるのは、「雇用関係にある働き方」のみであり一般的に会社員やアルバイトなどが対象です。
つまり本業が会社員で副業ではフリーランサーという場合にはこの労働時間の通算は適用されないのです。

労働時間の管理

続いて、労働時間管理の仕方です。
従来、労働時間管理の基本は労働者からの申告ベースであり本業と副業・兼業含め企業側は労働時間の把握が極めて難しい状況でした。
そこで改定版「副業・兼業の促進に関するガイドライン」によって示されたのが「管理モデル」の導入。
「管理モデル」とは、本業の企業と副業・兼業の企業でそれぞれ前もって労働時間の範囲を決めておくもので、先に労働者と契約をした本業の企業の法定外労働時間と、後に契約をした副業・兼業の企業の労働時間(所定の労働時間と所定外労働時間)について労働基準法における上限規制の範囲内でそれぞれ上限を設け、その範囲内で労働させるものです。
これによって、企業側は労働者からの報告ベースで労働時間把握をしなくても、労働時間の上限を超すことはないメリットがあります。
なお、導入に際しては、先に労働者と契約した企業が、後に契約をした企業に対して管理モデルによる労働時間管理を求め、労働者および後に契約した企業が合意する必要があります。

改定ポイント2:健康管理

改定版「副業・兼業の促進に関するガイドライン」には、労働時間の管理に加え、労働者の健康管理も盛り込まれました。
まず、労働者の健康管理は、労働者が副業・兼業をしているかにかかわらず行わなければなりません。
健康診断に加え、50名以上の事業場であればストレスチェックも実施する必要があります。
また、過重労働者面談など、労働時間が関わってくる措置は、前述の労働時間管理と同様に、労働時間を通算のうえで対象かどうかを選定する必要があります。
一方、労働者側も健康保持の自己管理を行い、心身の不調があれば都度相談をしていくことが必要です。
ここでも、労働時間が絡んできますので「管理モデル」を用いて管理をしておくと健康措置の線引きも明確になりそうですね。

おわりに

今回は、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」ガイドラインの改定ポイントを解説しました。
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、「労働時間はどちらの企業が管理するのか?」「健康診断などの健康管理はどちらの企業がするのか?」への回答が示されています。
しかし健康管理の点では、管理モデルなどの細かい具体例が記されておらず、やはり各企業と労働者の間での話合いで決めていくことになりそうです。

<参考>
・ 厚生労働省「「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定しました」

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