退任のDeNAラミレス監督が見出したオープナー適性 10年目・武藤の強みとは?

DeNA・武藤祐太【写真:津高良和】

「50球ぐらいでは球速が落ちず、投げ切れるだけのスタミナがある」

■DeNA 3-0 広島(25日・横浜)

DeNAは25日、横浜スタジアムで行われた広島戦に3-0で勝利した。今季3度目のオープナーとして登板した先発の武藤が3回無失点と好投し、試合の流れを作った。

武藤は初回に内野ゴロ2つで簡単に2死を取った後、鈴木誠には1球もストライクが入らず四球に。続く松山にもカウント3-0となったが、4球目で二ゴロに打ち取り難を逃れた。3回には死球もあり2死一、二塁と初めて得点圏に走者を背負ったが、中村祐を見逃し三振に仕留め、この回限りで降板した。「調子が良ければ60球ぐらいで5回まで投げて勝ちがつく可能性もあるかもしれない」とラミレス監督は淡い期待をしていたが、3回終了時点で投球数は55球。4回からは伊勢がマウンドに上がった。

武藤に勝ち星は付かなかったが、後を継いだ5投手が完封リレーを演じて先発した武藤がお立ち台に。前日のリモート会見で「先発とは思っていない。あくまで中継ぎの1人だと思っている」と話していた右腕はその言葉通り、「中継ぎの1番手として、1イニングでも長く投げようと思った。野手の皆さんに助けてもらいながら、ゼロで抑えることができた」とファンの声援に応えた。

今季はここまで19試合に登板しているプロ10年目の武藤。数多くいるリリーフ投手の中で、オープナーとして抜擢される理由がある。ラミレス監督は「これまでロングリリーフの経験もあり、長いイニングを投げることができる。50球ぐらいまでは球速が落ちることなく、投げ切れるだけのスタミナがある」と、その適性を説明する。

退任表明の翌日に自ら貫いた采配で最高の結果「どんな形でも勝ちは勝ち」

そんな指揮官の目論見通り、今季初のオープナー起用となった8月10日の阪神戦では3回を1失点に抑え、最終的にチームは勝利した。2度目となった10月1日のヤクルト戦は3回途中2失点で負け投手になったものの、指揮官は「初回から148キロ出ていたし、変化球も良く、内容は悪くなかった。打線が援護してあげられなかった」と合格点を与えていた。

今季で最後となるラミレス采配で、オープナーの採用は目玉のひとつといえるが、その作戦も武藤のような投手の存在があってこそのことだ。先発陣の駒不足に苦しむ中、継投での完封劇と、最高の結果を残した3度目の今回は「広島戦ではいい投球をしている」と、ラミレス采配の要素のひとつである「相性」も加味した結果だった。

試合後に「今日は完全にリリーフデー。どんな形でも勝ちは勝ち」と胸を張ったラミレス監督。今季限りでの退任を表明した翌日に、自ら貫いてきた采配で最高の結果を残してみせた。(大久保泰伸 / Yasunobu Okubo)

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