核禁条約、発効へ

 かつて「全てなくすには天文学的な費用と時間がかかる」といわれたが、この20年で世界は「なくす」方へと傾いた。地雷を完全に禁止する条約は非政府組織(NGO)が手を取り合ってつくり、結果を出している▲「全廃」への道は険しいが、地雷の製造、使用は劇的に減ったという。十数年前、条約づくりに動いた日本のNGOスタッフにこう聞いた。「今この時にも誰かが地雷の犠牲になっていて、廃絶は急を要する。だから国際世論が一気に高まったんです」▲そのスタッフは「核兵器は、地雷とは違うだろう」とも言った。地雷と同じように世論を盛り上げるのはきっと難しい-そういう指摘だった▲確かに「一気に」ではなかったが「核兵器が人道に反する」という国際世論はじわじわと、着実に広まっている。核兵器禁止条約に同意する国・地域がとうとう50に達した。来年1月のうちに国際的な効力を持つ▲道を敷いたのは、核の非人道性を身をもって訴えた被爆者にほかならない。長い長い歳月を経て熟した果実は、限りなく重い▲地雷の禁止条約は、同意する国を増やして効力をより強め、「なくす」流れをつくったという。核兵器禁止条約も、果実をより重くする道を探りたい。前途はなおも険しいが、ため息交じりの道中には、もうしたくない。(徹)

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