勝間和代「マイホームで得する人、賃貸で得する人」

勝間和代さんは、早稲田大学ファイナンスMBAを卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーやJPモルガンで働いた経歴を持つ”お金のスペシャリスト。そんな勝間さんに、前回に引き続き「お金」や「人生」の哲学を、著書『圧倒的に自由で快適な未来が手に入る! 勝間式ネオ・ライフハック100』(KADOKAWA)から一部抜粋して紹介します。〈撮影:疋田千里〉


家を買った方が得するケースとは?

家は買ったほうが得か、それとも借り続けたほうが得か。これは、よくされる質問の一つです。答えは、それぞれに一長一短あるので、ライフスタイル次第ということになります。

まず、平均的なグレードの家の場合、ローンを組んで買うのと賃貸で借り続けるのと、どちらの総費用が安くなるかというと、これは買ったほうが安くなります。

なぜ買ったほうが安くなるかというと、スマホの長期割引と同じ理屈です。スマホは、契約期間が2年、3年、5年と長くなるほど料金が安くなりますよね。その代わりに、2年ないしは3年以内で解約しようとすると、解約金がかかります。それと家のローンもまったく同じ仕組みです。だから、同じ家に、20年、30年住むとしたら、借りるより買ったほうが安くなります。

気をつけたいのは、ローンの設定額です。私は、ローンは手取りの25%以内を推奨していますが、多くの方は手取りの30%くらいで組んでしまいがちです。30%設定だと何が問題になるかというと、ボーナスが減ったり、転職をするために一時的に収入が減ったりしたときに、払えなくなることです。仮に払えたとしても、ほかの生活費をものすごく切り詰めなくてはいけなくなります。

すると、多くの人が金利を減らすためにローンの借り換えを考えるでしょう。いったい、この長期割引はどのくらい安くなるのかというと、平均利回りの4%ぐらいで、思ったほど安くならないのが現実です。

それが賃貸なら、家賃を払えなくなったから住み替える、ということが可能です。ただ賃貸だと、老後、年金生活者になったときに借りられないのではないか、と心配する声が上がります。

確かに、家賃を滞納される不安から、高齢者の入居を断る貸主もいるでしょうが、4人に1人以上が65歳以上の超高齢社会の日本において、そんなことをし続けたら、賃貸物件は空き部屋だらけになります。基本的には、年金を受給している限り、貸してくれる家はたくさんあると考えていいと思います。現に、高齢者の入居をサポートする不動産仲介業者も少なくありません。

私はずっと賃貸物件に住んでいますが、老後にもし体の自由がきかなくなったら、高齢者施設やケアつきの高齢者専用賃貸物件に入ると思います。最終的には賃貸生活になるなら、ずっと賃貸のままでいいか、と考えています。高齢者施設に入るときに、持ち家がすんなり売れるとも限りませんから。

賃貸は選べる自由度が高く、住み替えできるのが魅力

私が賃貸物件に住んでいる理由はまず、賃貸は分譲よりも物件数が多い分、自分が選べる自由度が高い、ということです。選択肢が多いと選ぶのが大変という人もいますが、それは短期間で探そうとするからです。

賃貸契約が切れる最低でも半年前、できれば1年前には賃貸情報サイトに登録して、自分の条件に合う物件をキャッチできるようにしてください。そうすることで、物件を見極める力もつきますし、掘り出しものと呼ばれる物件と出合う確率も上がります。

あと賃貸の魅力はやはり、住み替えがきく柔軟性の高さです。子どもが独立して住人の数が変わったり、勤務先や収入が変わったりといった、ライフスタイルの変化に応じて家も替えられます。私は、今の家に珍しく10年ぐらい住んでいますが、今まではだいたい3〜5年のサイクルで引っ越しをしてきました。その分引っ越し代はかかりますが、柔軟性を重視したい人には賃貸がおすすめです。
逆に、すごく安定思考で、10年20年と住み替えることはまずない人は、買ったほうが割安になるのでおすすめです。

ただ買うなら、なるべく中古にしてください。安いから、ということ以外にも理由があって、中古のほうが一軒家にしてもマンションにしても、立地がよりいい物件を探しやすいのです。立地がいいところの多くには、すでに建物が立っているものです。それが、立地がいい物件は中古のほうに多い理由です。

中古なら、余裕を持ってローンの設定額を収入の25%以内にしやすいのもおすすめする理由の一つです。また、予算が余ったらそのお金で水回りや電気回り、エアコンなどをリフォームしましょう。中古住宅で、最新の設備にして住むのが一番おすすめになります。

賃貸の場合でも、大家さんと交渉すればリフォームできます。原状回復を義務にするとOKしてくれる大家さんは多く、私も結構リフォームをしています。多いのは乾燥機を入れるためのリフォームで、今の家では、天井にいろんな新しい照明をつけたり、壁に鏡をつけたりしました。

持ち家を買うなら中古を。新築は最後の選択肢に

いろんな人の事例を聞いて痛感するのは、周りの人が家を買いだしたから、など、あまり深く考えずに住宅ローンを組むと、あとあと苦しむケースがあるということです。

賃貸で暮らしながら、本当に条件に合う物件と出合って、ここなら20年でも30年でも住みたい、と思ったときにだけ住宅ローンを組むようにしてください。しかも、新築ではなく中古がおすすめです。

新聞のチラシなどで新築の広告を見ると、いいなぁと思って欲しくなるものですが、新築を買うとローンの返済に追われて、本当にお金が貯まりません。新築は、中古を探してもいい物件が見つからなかったときの、最後の選択肢にしましょう。

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