社説:高校生の就活 進路実現の希望支えたい

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 新型コロナウイルスの感染拡大で、高校生の就職活動への影響が懸念されている。

 厚生労働省によると、7月末時点の高校新卒者への求人数は前年同期より24%も減少している。宿泊業・飲食サービス業や生活関連サービス業・娯楽業などで落ち込みが目立ち、就活の厳しさが予想されている。

 感染拡大に伴う休校で高校生の就活準備に支障が出ているため、今年は企業の採用選考が例年より1カ月遅い今月16日に解禁された。

 コロナの収束が見通せない中、戸惑いながら挑んでいる生徒もいることだろう。

 高校生の就活には、選考開始日から一定期間は1社しか受けられない「1人1社制」と呼ばれる独特のルールがある。

 短期間で就職先を見つけられ、学業への影響が少ないなどの利点があるが、複数企業の採用選考に臨めないことによる課題も指摘されている。

 生徒の希望に沿った進路が実現できるよう、就活ルールの特殊性を踏まえた支援と配慮が求められる。

 就職を目指す高校生は学校推薦で企業に応募するのが一般的で、採用の早期化を防ぐため、政府が経済団体や全国高等学校長協会と協議し、選考日程を統一している。

 厚労省によると、1人1社制は秋田、沖縄両県以外の都道府県で採用されているといい、これらの地域の生徒は、職場見学などを経て1社を選び、採用選考に臨んでいる。

 近年は企業の旺盛な採用意欲を背景に、高校生の就職内定率は高い水準を維持してきた。多くの生徒に就職の機会を与えられる1人1社制も大きな役割を果たしてきたといえる。企業にとっても、安定的に人材を確保できるメリットがある。

 ただ、生徒が希望通りの仕事に就けているとは言い難い側面もある。

 厚労省が昨秋に公表した2016年3月卒業生への調査結果によると、就職後3年以内の離職率は大卒者が32%だったのに対し、高卒者は39%と7ポイント高かった。高校生は複数の企業を比較できずに就職するため、ミスマッチが生まれやすいことが一因とみられている。

 求人数の減少で企業の選択肢がより狭まれば、生徒が仕事内容を十分理解しないまま就職を決めてしまう可能性もある。学校や企業は職場の雰囲気なども含め、例年以上に丁寧な情報提供に努めてほしい。

 高校生の就活ルールを巡っては、政府の規制改革会議が昨年6月の答申で「就職機会を保障しようとするあまり、高校生の主体性を過度に制限している」と1人1社制の問題点に言及した。職業選択の自由を阻害しているとの指摘もある。

 生徒がやりたい仕事を見つけ、希望する職種の企業に就職できる制度にする必要がある。

 複数社への応募に道を開くことも今後の検討課題となろう。教育委員会は生徒や学校、企業など関係者の意見を聞きながら議論を深めてほしい。