フローリングに使用される素材にはさまざまなタイプがあり、それぞれに特徴があります。今回はフローリングの種類、メリット・デメリット、主要な木材について解説します。
フローリング材には「無垢」「複合」の2タイプがある
フローリング材は大きく分けると、無垢と複合の2種類があります。
無垢(単層)フローリング
無垢フローリングとは、天然の丸太から板を切り出し、他の木材が入っていない床材のことです。オークや杉など、特定の木材のことを意味するわけではありません。
木材を自然な状態で利用したフローリング
木材をそのままの状態で活用しているため、自然の風合い・質感があるのが特徴です。木目を活かした自然なテイストの部屋にしたい場合、無垢材がよく馴染みます。人工的に作られた素材ではないため、品質には多少のバラつきがあります。一つひとつの木材に個性があり、人工的な木材にはない独自の模様を楽しめるのもメリットです。
複合(複層・合板)フローリング
複合フローリングとは、薄い板を何枚も重ねてできた床材です。合板や集積材といった基材の表面に、特殊シートなどの化粧材を張って作られます。人工的に作られるので、無垢材より品質が安定するのがメリットです。複合フローリングは、さらに以下の3種類に分かれます。
無垢材のような質感を楽しめる「挽き板タイプ」
のこぎりなどで挽いて2~3mmの厚さに加工した「挽き板」を表面に張るタイプです。表面が天然木に近いため、無垢のような肌触りが欲しい人におすすめです。
バリエーション豊富な「突き板(単板)タイプ」
「天然木化粧合板」とも呼ばれるタイプで、薄くカットした天然木を基材に張り合わせて作られます。カラーバリエーションが多く、ホワイトやライトブラウンなどの色もあります。挽き板タイプにはやや劣りますが、天然木の質感も楽しめます。
シートを木材に貼り合わせる「シートタイプ」
木目などをデザインした紙・樹脂などのシートを、基材に張り合わせて作られます。天然木は使用されていませんが、特殊技術によって木のような質感を表現している商品もあります。表面をさまざまなデザインにできるため、選択肢が豊富なのがメリット。コストも安く、一般的な住宅でも多く使われています。
《参考》「クッションフロア」と「フローリング」の違いは?
クッションフロアとは、塩化ビニル系シートを素材とする床材のことで、柔らかくクッション性があります。機能性が高く、防水性が高い・バリエーションが豊富・低コストといった点がメリットです。キッチンや洗面所など、水回りの使用におすすめです。一方で、質感はフローリングに劣る、凹みが残りやすい、熱に弱いといったデメリットもあります。
無垢フローリングのメリット
次に、無垢フローリングの魅力について3点解説します。
天然木ならではの質感や肌触りの良さ
無垢フローリングの最大の特徴は、天然木を使うことによる質感・肌ざわりの良さです。混じりけのない本物の木だけが持つ風合いがあり、独特な重厚感も合板にはない魅力です。天然木の香りにはリラックス効果もあるとされています。
経年劣化で味わいのある色合いに
天然木は時間経過とともに、色合いや表情が変化していくのも特徴。ウォルナットは日焼けをすると赤味が増し、色が徐々に薄くなっていきます。オークやメープルは日焼けによって黄色味が少し強くなります。
最初は若々しい印象でも、年月を経るとアンティーク家具のような落ち着いた風合いに。5年後・10年後と、家族とともに家に歴史を刻み、その家独自のフローリングが作られていきます。長期間に渡ってさまざまな風合いを楽しめるのも、無垢フローリングの醍醐味です。
調湿作用で空間を快適に保つ
天然木は一定程度乾燥すると、周囲の水分を吸収して自らの水分をキープする性質があります。周囲の湿度が高いときは水分を吸収し、湿度が低いときは水分を放出することにより、常に60%程度の湿度を維持しようとする作用です。
この働きにより、夏は湿気を吸収してカラッとした空気に、冬は湿気を放出して適度な湿気のある空気にします。1年間を通して無垢材が部屋の湿度を整えるので、快適な空間をキープするのに役立ちます。
無垢フローリングのデメリット
肌ざわりの良さや色合いの変化が魅力の無垢フローリングですが、以下のデメリットを把握しておきましょう。
反りや隙間ができる可能性がある
天然木は調質作用により、水分の吸収・放出を繰り返すため、膨張と収縮が発生します。木の種類によっては反りやねじれが起こったり、使用しているうちに形状が変化して、隙間ができてしまう可能性もあります。収縮対策としては、信頼できる業者の木材を利用し、施工前の処理をきちんと行うこと、また定期的なメンテナンスも大切です。
水シミや傷に弱い
無垢フローリングは人工的な集積材と比べると傷がつきやすく、補修が必要です。特にスギなどの柔らかいタイプは、落下物で凹みやすいため注意が必要です。犬猫の爪痕もつきやすいため、ペットを飼っている家庭ではフローリングに傷が多くなりがちです。
また水にも弱い傾向があるため、水を含むと膨張して反りが発生するケースも。濡れたらすぐに拭き取って、しみこませないことが大切です。濡れたまま放置すると、雑菌が繁殖する原因になります。
無垢フローリングのお手入れ方法を詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
無垢フローリングのお手入れ方法|塗装の種類によるメンテナンスの違いと汚れたときの対処法も紹介
こまめなワックスがけが必須
傷や水シミに弱い点をカバーするために、定期的な手入れは必須です。ワックスをかけることで水分をはじき、汚れもつきにくくなります。無垢の床には、ワックスも自然素材のものが最適です。まずはワイパーや掃除機で掃除した後、汚れを水拭きします。
ワックス用のスポンジを使い、ワックスを薄くのばしていきましょう。板の目に沿って、薄く塗っていくのがポイントです。少ないかな?と感じる程度の量で始めましょう。仕上げに乾拭きをして塗りムラをなくし、余分なワックスを取り除きながら床を磨きます。
節が少ないほど値段が高額になる
節とは天然木を切り出した際に、表面に現れる枝の断面のことです。天然木のなかでもスギやヒノキなどは、節が少ないものほどより価格が高くなる傾向があります。たとえば吉野杉では「無節」のものが昔から高級材として珍重されてきました。
応接間・玄関など人目に付きやすい場所や、建物のなかでも重要とされる場所で使用されます。もっとも下の等級が「節あり」で、大きな節が表面に見られるものです。目に見えない場所に使う構造材、ウォークインクローゼットなどで利用されます。
複合フローリングのメリット
複合フローリングには、無垢フローリングにはない下記のようなメリットがあります。
傷や凹みに強い商品が多い
複合フローリングは表面に木やシートなどで加工を施しているため耐久性があります。家具にも広く使われ、傷や凹みに強いのが特徴です。無垢フローリングでは傷やシミをカバーするため、メンテナンスの頻度を多くしなければなりません。しかし複合フローリングはこまめなメンテナンスは不要で、掃除も簡単です。
反りや収縮の危険性がない
複合フローリングは無垢フローリングの弱点を補うよう、加工した木材です。品質のバラツキが生まれにくく安定性があります。よって膨張や伸縮が少なく、温度の変化にも強いです。形状の変化が起こりにくく、反りが発生したり隙間が生まれたりすることが少ないのもメリットです。
デザイン豊富で、機能性が充実
表面を人工的に加工するため、さまざまなデザインの製品があるのも複合フローリングの特徴。大理石風など、天然木にはない色柄も選べます。部屋の目的・テーマに沿ったデザインにすることが可能です。
さまざまな機能を備えているのも特徴で、「防音性が高い」「滑りにくい」「ワックスがけ不要」などの製品も見られます。住む人のニーズに合った機能を持った製品を選ぶことで、より暮らしやすい部屋にできるのもメリットです。
複合フローリングのデメリット
多種多様な選択肢があるのが魅力の複合フローリングですが、以下の注意点を把握しておきましょう。
肌触りが良くない
木材加工の技術向上により、本物の天然木のように見える合板もあります。一見本物でも、触ってみると明らかに天然木とは質感・肌ざわりは違います。一方で無垢フローリングと比較してコストが下げられるのがメリットです。肌ざわりや質感を選ぶか、コストやメンテナンスのしやすさを選ぶか、暮らし方や空間の目的にあわせて選びましょう。
調湿作用がない
複合フローリングには、無垢フローリングのような調湿作用はありません。湿気や乾燥が気になる場合、除湿乾燥機や空気清浄機などでコントロールする必要があります。
違和感があることも
複合フローリングは表面加工しているため、違和感を覚える人もいます。たとえばツヤツヤして光沢が強い複合フローリングに、「綺麗で魅力的だ」と感じる人がいる一方、「わざとらしくて不自然だ」と感じる人もいます。製品によっては安っぽさも出てしまいます。自然な風合いでないと受け入れられない場合は、無垢フローリングをおすすめします。
経年劣化がある
無垢フローリングは経年変化の風合いが魅力ですが、複合フローリングは人工物のため経年変化による楽しみはありません。むしろ表面のシートがボロボロになるなど、経年劣化はデメリットになります。また、深く傷がつくと表面のシートや無垢材が割れて、中の合板が見えてしまうこともあります。
フローリングに使用される代表的な木材
フローリングで利用される主な木材の種類について紹介します。堅さや色合いなど、それぞれ特徴があります。
・ウォルナット(ウォールナット)
ウォルナットはベッドや棚などの家具によく使用される木材です。クルミ科で針葉樹のアメリカンウォルナットと、マメ科で広葉樹のアジアンウォルナットの2種類があります。色はダークブラウンで、シックで落ち着いた雰囲気を作りたいときに最適です。
硬さと耐久性に優れ、衝撃にも強いというメリットもあります。重厚である一方、湿度による伸縮が大きいため、施工する際は伸縮への対策が必須です。
・オーク(ナラ)
オークも家具でよくみられる木材で、ナチュラルブラウンの優しい色味が特徴です。いろいろなテイストの部屋にフィットしやすいのもメリット。古くから船舶や酒樽などでも利用されている木材のため、耐久性・耐水性に優れています。
重さを支えるフローリングにも適しており、定番で人気のある木材です。乾燥した時期にきつく施工すると梅雨の時期に膨張し、割れが生じることがあります。
・チェスナット
チェスナットとはクリの木のことで、日本の家屋や寺社仏閣などでも広く利用されてきました。鉄道の枕木にも利用され、堅さのある木材として知られています。色はオークとやや似ていますが、木目がより明瞭で和洋どちらの部屋にも馴染みます。
タンニンを多く含み、腐りにくい性質もあります。経年変化で落ち着いた風合いに変化していくのも魅力です。ただし、水分に反応して変色することがある点に注意が必要です。撥水性の高い塗料を塗ってメンテナンスしましょう。
・メープル
カナダなどで広く見られる広葉樹で、硬くて耐久性のある木材です。その重厚さから、アメリカのNBAのコートに使われることの多い木材でもあります。クリーミーで爽やかな色合いで、明るいナチュラルテイストの部屋によく合います。淡い色調ながら、木目が特徴的で、特定の木目のあるものは珍重されることもあります。
・ブラックチェリー
主に北米の北東部に生育するブラックチェリーは、高級木材として知られています。色調変化が劇的で、光を浴びると赤味が増して、一定のレベルに達すると落ち着きます。風合いに華やかさがあり、経年変化によって光沢も深まって上質感のある趣に。木肌がきめ細かいので、足触りもなめらかで心地良い木材です。表面の硬度は、やや硬いレベルに該当します。
・チーク
チークはクマツヅラ科の落葉広葉樹で、東アジアに広く分布しています。古くから最高級の木材として、一般家具のほか豪華客船の甲板・彫刻・装飾品などにも利用されてきました。外見は黄褐色で高級感があり、経年変化で色が深くなります。
腐食や虫食いにも強く、色あせが目立たないのも特徴です。チークには天然の油成分を含み、経年変化で独特の飴色になっていきます。一部の生産国において希少性が高いため、輸出制限がかかり、手に入りにくいこともあります。
・ヒノキ
日本で広く見られる針葉樹であるヒノキは、代表的な高級木材のひとつ。ヒノキ風呂は独特の香りもあって人気を集めています。ヒノキも無垢フローリング材として利用され、部屋全体でヒノキの芳香を楽しめるのもメリットです。強度や耐久性も問題ないので、フローリングにも最適です。一部でヒノキの香りを苦手とする人もいること、使う時期によって価格の変動が激しい点に注意が必要です。
・スギ
ヒノキと同様、スギも日本でよくフローリングに利用される木材です。昔から家屋に使われてきたため、和風の部屋にもフィットします。木材としては柔らかさもあるのが特徴で、肌触りが良く、素足でスギのフローリングを歩くのが心地良いと感じる人もいます。スギの独特の芳香は好き嫌いが分かれるので、苦手な場合は避けたほうが無難です。