SDGsに貢献、ノーベル平和賞に世界食糧計画!コロナ禍が「飢餓のパンデミック」を引き起こす?

2020年のノーベル平和賞は、食料支援を行う国連機関「世界食糧計画(WFP)」が受賞しました(10月9日発表)。「今年は紛争に加えて新型コロナウイルスの大流行により世界中で飢餓の瀬戸際に立つ人々が急増した。WFPは大きな貢献をしている」と評価されています。

WFPと一体、どんな組織なのでしょうか。さらに、国内企業での食料ロス削減の取り組みを紹介します。


ノーベル平和賞に「世界食糧計画(WFP)」

WFPは19年、アフリカや中東など88ヵ国で約9,700万人に420万トンの食糧を援助し、50ヵ国1,730万人以上の子供に学校給食を提供しました。国連のSDGs(持続可能な開発目標)の目標2「飢餓をゼロに」に寄与するものと言えるでしょう。

10月16日の世界食料デーでは、コロナ禍による供給網の寸断が「飢餓のパンデミック」を引き起こす恐れについて改めて警告されています。

「食品ロス」削減は消費者の意識改革で

世界の飢餓人口は14年の6億3,000万人から、19年に6億9,000万人(推定)に増加した一方、世界の食料生産量の3分の1は廃棄されています。日本の食品廃棄物等は2017年度に2,550 万トンにのぼり、このうち、まだ食べられるのに廃棄される「食品ロス」は612 万トンありました。世界の食糧援助量の約1.6倍にも相当します。

食料の有効利用を目指し、日本は19年7月、食品関連事業者を対象とする「食品リサイクル法」(2001年5月施行)に、サプライチェーン全体の食品ロスを2030年度までに半減(2000年度基準)する政策目標を設定しました。

SDGsの目標(12)「つくる責任、つかう責任」の構成項目「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を半減させる」が意識されています。

食品ロス削減推進法

19 年10 月には、家庭からの食品ロスも対象に入れた「食品ロス削減推進法」が施行されました。食品ロスの約半分は家庭から出るため、消費者による買い過ぎや作り過ぎ、過度な健康・鮮度志向などの改善が望まれます。

当局は10月を「食品ロス削減月間」、10月30日を「食品ロス削減の日」に設定し、多様な主体が連携する国民運動に位置付けました。

これを受け、セブン&アイグループは10月、食材をまるごと使い切る「エコレシピ」の配布や調理実演などお客様と共に“もったいない”の削減に取り組んでいます。同社は2050年までに食品廃棄物の75%削減、食品リサイクル率100%を目指しています。

食品ロス対策で、利益確保へ

食品小売店による対策としては、流通時点での在庫管理の効率化が有効でしょう。スマートフォンアプリを使って小売店と消費者をマッチングするサービスも出始めています。

例えば、ファミリーマートは、19年から季節商品(うなぎ、クリスマスケーキ、おせち、恵方巻など)の完全予約制を導入。20年の「土用の丑の日」には、店舗独自で考えた売場演出など地域密着の取り組みを行い、新たにアプリ「ファミペイ」でウェブ予約を開始しました。

その結果、予約制開始前の2018年と比べて、販売金額は変わらないものの、廃棄金額は約80%減少し、加盟店利益は約240%増加しました。

食品の保存期間を延ばす試みとしては、肉や魚を特殊なシートで包んで長期保存する技術の活用が期待されます。イオングループ傘下のダイエーは19年11月、新しい包装「真空スキンパック」を導入。牛肉の場合は従来包装に比べ消費期限を約10日間延ばすことができます。先行導入した店舗では、食品ロス比率が4.3%から1.9%に低下しました。

コロナ禍で「フードバンク」が活躍

流通できないものの品質には問題のない食料品を企業が寄付し、生活困窮世帯などに配る「フードバンク」の活用も広がっています。

ローソンは19年8月、物流センターで廃棄してきた「店舗への納品期限を迎えてしまった商品(賞味期限内)」等の余剰食品を、全国フードバンク推進協議会を経て支援が必要な家庭や子ども食堂、施設などに寄贈し始めました。同社は2030年に食品ロスの18年比50%削減を目指しており、19年度の食品リサイクル等の実施率は50.2%、食品の寄贈数は合計15万5,000個に上ります。

西友も2009年から同様の食品寄付に取り組んでいます。今春のコロナ禍では、休校に伴う給食の停止などで、日常の食事すらとれない人・世帯が増加しました。同社は4月から6週間、白米14トン、卵6,000ケースなどの食料を延べ3,000世帯に寄付しました。すでに施設への配送システムが構築されていたため、支援が必要な時期に素早く届けることができました。

食料資源を有効活用する食品ロス対策は、2030年のSDGs達成に向けた意欲的な試みであると共に、ESG投資の「E(環境)」を意識した取り組みとしても注目されるでしょう。

<文:チーフESGストラテジスト 山田 雪乃>

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