WS第5戦8回裏の攻防 筒香より先に崔志萬を起用すべきだった?

レイズはワールドシリーズ第5戦に2対4で敗れ、ドジャースに王手をかけられた。反撃の最後のチャンスとなったのは8回裏。先頭のケビン・キアマイアーがヒットで出塁し、ここから両軍の監督による駆け引きが始まった。レイズのケビン・キャッシュ監督はこの場面でマイク・ズニーノの代打に筒香嘉智を起用したが、ファンのあいだでは「筒香より先に崔志萬(チェ・ジマン)を起用すべきだった」という声も上がっている。

8回裏無死一塁の場面で、ドジャース2番手の右腕ダスティン・メイに対してキャッシュは左打者の筒香を起用。ここでドジャースのデーブ・ロバーツ監督は左腕ビクトル・ゴンザレスを投入するのではなく、速球を苦手とする筒香に対して速球派のメイを続投させ、レフトフライに打ち取った。

次打者ヤンディ・ディアスはドジャース先発のクレイトン・カーショウからタイムリー三塁打を放つなど、この試合3打数2安打と活躍していたが、キャッシュは右打者のディアスに代えて左打者の崔を起用。これを見てロバーツは左腕ゴンザレスを投入し、キャッシュは「代打の代打」として右打者のマイク・ブロソーを代打に送った。

ブロソーが四球を選んだあと、右打者のランディ・アロサレーナと左打者のブランドン・ラウがともにセンターフライに倒れ、レイズは一死一・二塁のチャンスで無得点。9回裏も先頭のマニュエル・マーゴがヒットで出塁したが、後続3人が倒れ、2点差を追い付けないまま敗戦を喫した。

8回裏の攻防を振り返り、疑問として浮かび上がってくるのが「キャッシュは本当に筒香をメイと対戦させるつもりだったのか」ということだ。キャッシュはこれまで、左腕だけでなく右の速球派と対戦するときにも筒香の起用を避けてきた。よって、筒香は左腕ゴンザレスをおびき出すための「エサ」として使われたと見るのが自然だろう。キャッシュは筒香に対してゴンザレスが投入され、そこで「代打の代打」として左腕キラーのブロソーを起用するシナリオを思い描いていたのではないだろうか。

もしキャッシュのシナリオ通りに進めば、左腕ゴンザレスに対してブロソー、ディアス、アロサレーナと右打者3人をぶつけることができたことになる。ファンのなかにはそれを踏まえ、「メイに対して筒香を打たせるより、ゴンザレスに対してディアスを打たせるほうがよかった。筒香より先に崔を起用すべきだった」と指摘している人もいる。

キャッシュにとっての誤算は筒香に対してロバーツがゴンザレスを投入しなかったことだ。ドジャース側は筒香が速球に弱いことを把握し、メイを続投させるほうがベターだと考えたのだろう。ファンが指摘するように筒香より先に崔を代打に送っていれば、ロバーツはそのタイミングでメイに代えてゴンザレスを投入していたと思われる。

レギュラーシーズン中、筒香は右腕と142打席対戦して打率.183、6本塁打、OPS.686だったが、左腕には43打席という限られた出場機会のなかで打率.243、2本塁打、OPS.781をマークしていた。ところが、ポストシーズンでの16打席はすべて右腕との対戦となり、左腕との対戦は1度もなし。「左腕とは対戦させない」「右の速球派との対戦もできる限り避ける」というキャッシュの方針の下で、筒香は非常に厳しい立場に追いやられている。

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