社説:核禁条約発効へ 日本も批准の道模索を

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 核兵器を違法とする核兵器禁止条約を批准した国・地域が50に達し、発効が決まった。広島、長崎への原爆投下から75年を経て、「核なき世界」の実現に向け、大きな一歩が踏み出されたことを歓迎したい。

 核兵器の使用や開発、実験、保有などを禁止する史上初の条約で、来年1月22日に発効する。中南米やアフリカ、オセアニアなど核を持たない国が批准国に名を連ねる。

 中には、欧米の核保有国による核実験の舞台となった南太平洋の島国も多い。今なお放射能汚染の被害に苦しみ、その歴史を繰り返してはならないとの願いからだ。

 ところが、唯一の戦争被爆国である日本は、米国の「核の傘」の抑止力に頼って条約に背を向ける。核廃絶を求める国内外の失望と批判を招いている。

 今年は、核拡散防止条約(NPT)の発効から50年の節目に当たる。同条約は核保有を米英仏ロ中の五大国にだけ認める。非保有国は、大国の論理で核軍縮が進まない現状に不満を募らせてきた。

 そんな中で、世界の核兵器の9割を保有する米ロは昨年、中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄した。来年2月に失効期限が迫る新戦略兵器削減条約(新START)の行方も予断を許さない。

 トランプ米政権は「使える核」として、小型兵器の開発、配備を進める。200発超とみられる核弾頭を保有する中国も、迎撃困難な新型ミサイルの開発に乗り出している。

 世界では、むしろ「核の無秩序化」が進んでいる。それゆえ、「全廃のみが核兵器の不使用を保証する唯一の方法だ」と前文でうたう核兵器禁止条約の発効の意義は大きい。いま一度、核廃絶への原点に立ち返るべきだ。

 ただ、核を保有する国々は核禁止条約に参加しておらず、核軍縮は進まないとの懸念もある。しかし、核兵器は絶対悪である、との理念の広まりは保有国への強い圧力となり、行動の転換を迫る契機になり得る。

 日本政府は、核保有国と非保有国の橋渡し役を自任しながらも、米国追従の姿勢を崩していない。加藤勝信官房長官は「わが国のアプローチとは異なる。署名は行わない」との考えを改めて示している。

 核保有国の論理を代弁するだけでは、被爆国として核廃絶の先頭に立つ責務は果たせない。オブザーバーとして関与し条約に参加してこそ、核廃絶を進めることができるのではないか。