GoToトラベルやイート、実際どれくらい利用されている?

新型コロナウイルスの影響で低迷した需要の喚起策として、政府が利用額の一部を負担する「GоTоキャンペーン事業」が次々と開始されています。

GoTo事業はトラベル、イート、商店街、イベントの4つから成りますが、先行して7月下旬からトラベルが、9月からイートが開始されています。10月中旬からはイベントや商店街での事業者の募集が始まり、順次開始される予定です。

夏の感染再拡大の状況が落ち着いた9月以降、少しずつ行動範囲を広げる消費者は増えているようです。旅行や外食をお得に利用できるGоTоキャンペーンに興味のある方も多いでしょう。実際にどれくらいの人が使っているのでしょうか。ニッセイ基礎研究所が実施した調査 で確認していきましょう。


9月末時点でGoToトラベルは15.2%、イートは1.4%が利用

調査を実施した9月末の時点では、「利用した/予約済み」の割合は、GoToトラベルは15.2%、イートは1.4%にとどまります(図1)。イートは9月から順次開始されましたので、10月現在では大幅に伸びていることが予想されます。

なお、これに「具体的に検討中」をあわせて『利用積極層』とすると、トラベルは21.3%、イートは9.4%を占めます。さらに「今後、検討予定」をあわせて『利用意向あり』層とすると、トラベルは47.2%、イートは50.8%となります。つまり、どちらも現時点では、利用積極層は少数派ですが、約半数の方は興味を持っています。

時間やお金があり、不安が弱く、見通しの明るい人がGoToトラベルを利用

GoToトラベルの利用積極層は、独身の若者のほか、既婚で子どものいないミドル層や子どもが独立したシニア層、既婚で子どものいる若い夫婦、職業は公務員や正社員、世帯年収は高いほど多い傾向があります 。

意識の面では、感染による「世間からの偏見や中傷への不安」や「適切な治療が受けられない不安」、「収入が減少する不安」や「仕事を失う不安」のない層で利用積極層が多い傾向があります。さらに、「半年以内の国内の感染状況の収束」や「1年以内の日本経済の回復」に対して肯定的な見方をする層で多くなっていました。

つまり、GоTоトラベルは、時間やお金に余裕のある人、感染による不安が弱く、今後の見通しを明るく持っている人が積極的に利用しています。

利用しない理由は「国内の感染がまだおさまっていないため」が最多

一方で、図1では「利用するつもりはない」が約半数を占めていました。その理由を見ると、トラベルでもイートでも最も多いのは「国内の感染がまだおさまっていないため」です(図2)。トラベルを利用していない理由を順に見ると、感染状況がおさまっていないため、そもそも旅行を予定しておらず、外出を控えている、といった様子が読み取れます。なお、当初、東京はトラベルの対象地域から除外されていましたが、それを理由に利用していない人は1割以下です。

一方、イートでは「キャンペーンの内容が分かりにくいため」が2番目に多くなっています。とはいえ、イートの仕組みは、対象のオンライン飲食店予約サイトから飲食店を予約すると、利用時にポイントが付与されるなど、さほど複雑なものではないでしょう。よって、これは、9月末時点での内容の認知度の影響によるものと考えられます。トラベルは全国的に感染が再拡大した時期に実施されたため、賛否も含めて、メディアで大きく取り上げられましたが、イートは取り上げられる機会がトラベルより少ない印象があります。

感染不安より、お金の問題で利用できない消極層も

利用消極層のうち過半数は、完全状況が改善されたら利用したいと答えていますが、3割程度は感染状況によらず「利用したいと思わない」と答えています。この超利用消極層は世帯年収の低い層で多い傾向がありますが、必ずしも感染不安が強いわけではありません。

現在、失業率は徐々に上昇しており、新型コロナで苦境に立たされている業種のパート・アルバイトなどでは雇い止めも見られます。超利用消極層は、お金に余裕がないために「利用したいと思わない」ということなのかもしれません。

最近、一律10万円の「特別定額給付金」に加えて、さらに5万円を給付という案が浮上しています。前回は迅速さの観点から一律10万円となりましたが、今後は対象を絞って、就業状況や家族構成などの各自の事情に合わせた手厚い支援策を継続的に実施していくことが望ましいのではないでしょうか。

GoToトラベル東京追加の効果は

今月からGoToトラベルの対象地域に東京が加わり、一層の需要喚起が期待されるところです。しかし、東京を理由に利用をしていない人は少数で、最大の理由は感染がおさまっていないことです。よって、東京が追加されても、短期間での観光業の劇的な回復は難しいでしょう。

一方で、長期化するコロナ禍で、感染対策が習慣化するなど、消費者の経験値は上がっています。当初のやみくもに不安という状況を脱し、ウイルスと上手く付き合いながら、行動をしていこうという気持ちが芽生え始めているのではないでしょうか。

また、企業側でも、ソーシャルディスタンスを保つために、レストランなどで使わない座席に大きなぬいぐるみを置いたり、スーパーのレジなどで並ぶ時の足元マークをすごろくのような見せ方をするなど、楽しみながら感染対策をする工夫も見られるようになりました。

気を緩めてはいけませんが、楽しい気持ちも持ちながら、安心して消費生活を送ることのできる環境が広がることに期待をしたいと思います。

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