人気球団の“洗礼”に「耐えれるかどうか…」 阪神ドラ1近大・佐藤に恩師が助言

阪神が交渉権を獲得した近大・佐藤輝明(左)と阪神・矢野燿大監督【写真:宮脇広久】

矢野監督「いろんなヤジも飛んでくるが、タイガースファンは熱い」

阪神からドラフト1位指名された近大・佐藤輝明内野手は27日、大阪府東大阪市の近大東大阪キャンパスで、阪神・矢野燿大監督らから指名あいさつを受けた。兵庫・仁川学院高3年の夏は県大会初戦で敗退した無名の存在から、アマチュア球界No1スラッガーに成長。超人気球団特有の重圧、桁違いの注目度の下で、果たして実力を発揮できるだろうか。

矢野監督から「トリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁)のさらに上の、40&40(40本塁打、40盗塁)を狙ってほしい」と日本球界初の快挙を期待された佐藤は、「走塁に関しては、まだまだ改善すべき点があるので、阪神に入ってから勉強していきたい」と語った。

「甲子園ではいろんなヤジも飛んでくるけれど、タイガースファンは熱い。僕がドラフトで佐藤君(の交渉権)を引き当てた瞬間から、ファンの夢はどんどん広がっていると思う。その夢を追いかけていきたい」と矢野監督。虎党からの熱い応援、期待の大きさを肌で感じている様子だ。

コロナ禍で入場者数が制限された今季はともかく、例年の甲子園での阪神戦には4万6000人超の大観衆が詰めかけることも多い。佐藤の野球人生では経験したことのない数だ。

近大・田中監督「浮かれなければいいなと思う」

それでも、本人は「2年生の時に出場した、大学日本代表対高校日本代表の試合も、神宮が満員になったと記憶しているので」と、どこ吹く風。確かに2018年8月28日、神宮で行われた侍ジャパン壮行試合に大学日本代表の「5番・DH」でスタメン出場している。観客は2万5018人で、佐藤は2打席連続三振に終わったが、「その時も自分を失わず、集中できたので、満員の甲子園はまた雰囲気が違うかもしれませんが、まあ、大丈夫だと思います」と言い切った。恩師の近大・田中秀昌監督が「とにかくマイペース」と評する佐藤は、本当に肝が据わっている。

もっとも、阪神の場合、多いのは観客だけではない。田中監督は「人気球団だから、ちょっと調子が悪くなると、マスコミに騒がれるでしょう。そういうことに耐えられるかどうか」と心配が尽きない。阪神の選手ともなれば、写真週刊誌などにマークされることも多く、「佐藤には『行動に気を付けろ。いつもカメラがついて来ていると思いなさい』と言い聞かせています」と明かした。

さらに田中監督は「タニマチや若い女性ファンも多いと聞く。浮かれなければいいなと思う」とも。ちなみに佐藤のような、その年の目玉のドラフト1位は、契約金1億円プラス出来高払い5000万円、1年目の年俸は1600万円が相場だが、恩師は「プロは契約金と同額の年俸をもらえるようになって、初めて一人前だ。そうでなければ、スカウトの方をはじめ、お世話になった人たちに恩返しできない」と自覚を促しているという。

「多少窮屈に思うかもしれないが、佐藤本人が『子供に夢を与えたい』と言っている以上、野球人としてのみならず、社会人として常識的な立ち居振舞いを心がけてほしい」と田中監督。阪神でスターになるには、技術を磨くことはもちろん、プラスアルファも重要になる。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2