マイナンバー大丈夫?

 ちょっと切ない、かつてのサラリーマン川柳がある。〈マイナンバー下2桁で妻が呼ぶ〉。その呼び名は「ごろう(56)」か「さぶ(32)」か▲もちろんマイナンバー制度が始まる前の作品で、実際は番号で誰かを呼ぶほど身近ではない。5年前、もうじき届くといわれたマイナンバーの通知カードがなかなか届かず、国民をあきれさせたこともある▲税や年金にまつわる行政の事務が楽になり、国民もいろいろな手続きに使える-と、触れ込みはいいことずくめだったが、実際は国があたふたして、国民はどこか遠目に見ていた▲希望者に交付する「個人番号カード」の取得率は、いまだ2割ほどにすぎない。情報漏れの不安があり、やすやすと個人情報の“信用貸し”はしかねる、という向きはどうやら今もって強い▲一律10万円給付の際、マイナンバーだとすぐに手続きできるとしながら、ずいぶん遅れた。この失態をばねに、ということらしい。菅義偉政権はデジタル化を進め、マイナンバーカードと健康保険証は来年3月から、運転免許証とは早ければ6年後にも一体化するという▲思えば国は、マイナンバーをいつも「いいことずくめ」とお勧めし、そのたびに空回りしてきた。勇み足で大丈夫?-国民に危なっかしいと思わせる制度は、どうも心もとない。(徹)

 


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