部下が突然退職…そうなる前に上司が気をつけたい3つのポイント

働き方の多様化が進んだ現代では、ひとりひとりが自身の価値観をこれまで以上に大事にするようになりました。

仕事に取り組む際も、自分の思い描くキャリアに対して目の前の仕事がどのようにつながっているか、そこに納得感があるかどうか、が仕事に取り組む上で大切なモチベーションになっています。

その納得感が得られないと、働くモチベーションが下がるばかりか、早々に転職を決断してしまうこともあり得ます。

そうならないよう、上司は部下とどのように関わっていけばいいのでしょうか。今回はそのプロセスを具体的にご紹介します。


部下は今、危機に瀕している

部下に納得感を持って仕事に取り組んでもらうためには、その価値観に基づいたキャリア開発に上司が積極的に関わっていく必要があります。

なぜなら、自分の描くキャリアと目の前の仕事のつながりが重要であることに加え、急速に普及したリモートワークによって、モチベーションの維持が難しくなるケースが増えてきているのです。

1人仕事となったことで、ある部下は多量の仕事を抱え込みます。またある部下は仕事量が少なすぎて不安を感じます。どちらの部下も、ふとした時に今の仕事に疑問を覚え、自分の目指すキャリア・生活との乖離に直面します。

周囲とのコミュニケーション量が減ってしまうリモートワークでは、不安や不満の共有や解消がうまくなされません。結果、低下したモチベーションのまま、突然の転職までに踏み切ってしまうケースが様々な企業で起きています。

この状況は、忙しい上司にありがちなトラブルがあったときのみ相談に応じる「受け身」の関わりだけでは拡大するばかりです。

部下のキャリア不安を払拭し、モチベーション高く仕事に取り組んでもらうためには、部下のキャリア開発につながる「意図的」な関わりが必要になっています。それは「部下のキャリアを一緒にデザインした上で、成長につながる経験を与え、経験からの学びを促進すること」です。

部下の持つ価値観と成長イメージを尊重する

では、具体的にどのようにコミュニケーションをとっていけばよいのでしょうか。今回は3つのポイントに分けてご紹介します。それは (1)デザイン、(2)アサイン、(3)サポートです。

(1)デザインとは、部下の個性を踏まえたキャリアデザインを指します。そのためには、部下を知り、成長イメージを描き、成長課題を設定することが必要です。

まずは、「部下を知る」です。キャリアを一緒に考えていくためには、部下のモチベーションの源泉・やりがい・得意・不得意を知る必要があります。具体的に知る方法としては、部下にモチベーション曲線を描いてもらうと良いでしょう。

その上で、部下のモチベーションが上がったとき・下がったときの状況や気持ち、考えを聞き、対話を深めていきます。この時に、上司のモチベーション曲線も見せると相互理解につながります。

次に、「成長イメージを描く」です。部下は今後どのようなキャリアを目指していきたいと考えているか、会社や上司は部下のキャリアをどのように考えているか、について擦り合わせを行っていきます。

成長イメージを描く際の留意点としては、心理的安全性の高い場をつくり、部下の考える成長イメージを最大限尊重することです。決して会社や上司の考える枠に押し込めようとしてはいけません。

そして、「成長課題の設定」します。成長イメージに向けて、より伸ばしたいことをスタンス面・知識面・スキル面から、設定しましょう。

ちょっと背伸びした業務を任せる

部下と成長イメージを共有できたら、次は(2)アサインです。アサインとは、部下の成長課題を踏まえたストレッチ(少し難易度が高い)経験を与えることを指します。そのためには、成長課題を踏まえた仕事のアサイン方法とストレッチな経験の理解が必要になります。

アサイン方法には3通りあります。1つ目は、上司自ら新たな仕事を「引っ張ってくる・創る」こと。2つ目は、今の仕事を部下の成長課題に合わせて「意味付け」することです。

今の仕事が、目指すキャリアにつながらないと部下が捉えていても、それは一つの見方でしかありません。上司の立場から仕事の「意味づけ」をすることで、部下の見方は変わる可能性があります。

3つ目は、部下の成長課題を「要素分解」してみることです。要素分解してみると全ての要素ではないものの、今の仕事で成長につながる要素が見つかるはずです。

では、ストレッチな経験とはどれ位の難易度と考えたら良いのでしょうか。現在の部下が完遂できる仕事を100とした際に、110くらいの仕事が適切と言えるでしょう。

ここで大切なことは、部下毎に「現在の100」を上司が的確に把握することです。部下によって完遂できる仕事は大きく異なるので、120を越える、部下がパニックに陥るほどの仕事は、まだ早いと判断した方が妥当です。

部下の目線に立ち、経験学習を促す

最後に(3)サポートです。サポートとは、ストレッチな仕事に向き合っている部下に対して、対話による支援を行うことです。一般的には、月1回以上の頻度・30分程度の時間・1対1の形式で行います。これを「1on1」と呼び、実践する企業も増えてきました。

面談は、経験学習サイクルに基づいて進めていきます。これは人材育成に関する最新アプローチの1つで、「仕事上の経験を振り返り、そこから何を学んだかを明らかにし、次にやるときに応用してみる」といったステップを繰り返していくものです。

1on1はあくまでも部下主体で話す場です。上司が一方的に話し続けたり、把握したいことばかりを質問してはいけません。また、指摘や注意ばかりするのも良くありません。1on1の場においては、部下を前向きにすることを心掛けましょう。終わった後に、部下の表情が生き生きしているか確認してみましょう。

1on1を効果的に行うことができれば、部下は適切に経験学習サイクルを回すことができ、成長を促進することができます。

キャリア自律が求められる日本社会において、「デザイン・アサイン・サポート」を意識した上司の関わりは、ますます求められていくでしょう。

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