カリフォルニア州の記録的な山火事がワイナリーに残した傷痕

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山火事の被害

  この夏、カリフォルニア州は新型コロナウィルス、記録的な高温、山火事と三重苦に見舞われた。特に山火事は年々酷さが増しており、昨年はロサンゼルス北部の超高級住宅街の近辺で出火し、数十億円の豪邸が焼失する危険にさらされたが、今年はさらに広域な範囲で火災が発生し、過去最大の消失面積を更新している。なんと、カリフォルニア州の史上トップ20の山火事のうち、5つが今年発生したという。

  特に8月は相次ぐ落雷によって山火事が発生し、そこから小規模な山火事が燃えひろがって、複数の郡を横断する大規模火災へと発展してしまった。植物はすっかり乾燥して燃えやすくなっており、記録的な熱波に加え、強風など山火事が発生しやすい気象が続いたことが原因の一つと考えられる。

  ここロサンゼルスでも近隣の山火事により、2週間ほど煙を多く含んだ空気に包まれ、晴れているのに終日雲っているという変な天気が続いた。場所によっては、チラチラと灰が降ってくるところもあった。

 またサンフランシスコでは、街全体がオレンジの空気に包まれたという。景勝地として有名なヨセミテ国立公園の一部も焼失し、カリフォルニアワインの生産地として世界的にも有名なナパバレーにも甚大な被害を与えた。

 ナパバレーの惨状

 記録的な山火事はワインの産地として有名なナパバレーにも大きな被害を与え、名だたるワイナリーらにも影響を与えている。シャトー・ボスウェル(Chateau Boswell)はワイナリー自体焼失してしまい、カステッロ・ディ・アモローサ(Castello di Amorosa)ではワイン120,000本が破壊され、ざっと見積もっても5億円相当の被害を受けた。

  また、たとえ直接的な被害を受けていなくても、近隣エリアのブドウは大量の煙によって汚染され、灰を含んだ味へと変わってしまった。山火事により発生した煙はブドウの皮に染み込み、次第に果実に吸収されていく。果実そのものを食べると味はいいため、最初は果実の味は煙の影響を受けていないように感じるが、煙の香りは発酵と熟成の過程で放出され、時間の経過とともにより灰を含んだ味に変わっていく。一般的に、赤ワイン、特にピノノワールのような皮の薄いブドウで作られたものが影響を受ける傾向がある。こうした理由により、多くのワイナリーがブドウの収穫は時間や投資の価値がないと判断し、ワインの生産を減らすか、もしくはワインの生産自体行わないことを決定した。少なくとも12以上のワインビジネスが、山火事による建物や土地、ブドウへの被害に苦しめられている。

 過去にもナパバレーはたびたび山火事の危険にさらされていたが、その多くは10月中旬頃に発生しており、その頃には既に多くのブドウ園ではブドウの収穫が終了していた。しかし、今年は、例年よりも早い時期に山火事が発生したため、その段階ではまだ多くのブドウの木が収穫されていない状況だったため、被害が拡大する結果となった。

 2017年にもこの地域で大規模な山火事が発生し、その際も多くのワイナリーではほとんどのブドウを収穫しないことを選択したが、今回の2020年ヴィンテージは、2017年の5倍から15倍の煙の汚染レベルだそうだ。州全体のワインメーカーにとって損失の全範囲がどの程度になるかはまだはっきりとしていないが、過去最悪の事態が想定される。

 本来2020年ヴィンテージのワインが販売されるはずの2023年に、2020年ヴィンテージのカリフォルニアワインを見つけることは難しくなるかもしれない。