光った選手起用、若手の成長… 3年ぶりVの鷹・工藤監督が大事にしたマネジメント

リーグ優勝を決め、王会長や孫オーナーに祝福されるソフトバンク・工藤公康監督(中央)【写真:藤浦一都】

先発投手陣は登板間隔を意図的に空けてローテを採用

ソフトバンクが3年ぶり19度目のパ・リーグ優勝を決めた。27日、本拠地PayPayドームで行われた2位ロッテとの直接対決。優勝へのマジックを「2」としていたソフトバンクはロッテに勝利して自力でパ・リーグの頂点に立った。

試合後に行われた優勝会見。工藤公康監督が語ったのは、今年ならではの調整の難しさだった。「しっかりした準備をしようと伝えてきましたし、100%で開幕を迎えるのは難しいだろうと考えました。トレーナーさんともコーチともミーティングをしながら、どうしていくのがベストかと話しながらやってきた。全てが初体験。コーチの皆さんと話をし、少しでも怪我人がでないようにいいコンディショニングで試合に臨んでもらえるように考えてきたと思います」と言い、選手たちのコンディション面の管理を最重要視した。

新型コロナウイルスの感染拡大で3か月遅れて開幕を迎えた今シーズン。キャンプや自主練習期間はあったとはいえ、通常のシーズンと異なり、十分な実戦機会が得られないまま、選手たちは開幕を迎えた。特に苦慮したのは先発投手の調整だ。本来であれば、徐々にイニングを伸ばして開幕を迎えるはずが、十分な登板機会を得られなかった。

そこで工藤監督ら首脳陣は思い切って割り切った。シーズンが開幕してからの1週間、2週間は先発投手の登板イニング、球数を制限。オープン戦終盤のような形で100球以内や5回メドなど、ある種、開幕後は公式戦本番を戦いつつも、調整の機会とした。

さらには登板間隔に関しても、最大限にコンディションを考慮した。手術明けの東浜巨やベテランの和田毅、既往歴のある石川柊太ら先発陣には数回の登板をこなした後には登録を抹消し、次回登板までの間隔を空けて、身体を回復させる時間を設けた。

野手も主力のコンディション面を考慮し“日替わりDH“を採用

当然、中継ぎ陣には大きな負荷がかかることになった。ただ、極力、3日連続での登板を避けたり、リリーフの中にも、いわゆる“上がり“と言われる休養日も作った。

シーズンはこれまでに例を見ない形で進んだ。シーズン序盤は同一カード6連戦の連続。8月下旬からは3連戦×2カードの6連戦が続いた。毎週金曜日は過酷な移動ゲームに。毎日試合に出続ける野手たちにも疲労が溜まるのは当然だった。

そこで野手陣にも“日替わり指名打者“を導入。助っ人のデスパイネやグラシアル、チームにとって欠かせない中心選手の柳田悠岐や中村晃をコンディション面を日によってDHで起用した。

もちろん選手たちの頑張りがあってこその優勝だ。先発陣では千賀と石川が9勝、開幕投手を務めた東浜が8勝、ベテランの和田が7勝、そして開幕直後に離脱のあった助っ人のムーアも5勝と先発投手が軒並み白星を積み重ねた。

リリーフ陣でも勝利の方程式を担う森唯斗、モイネロ、高橋礼らに限らず、嘉弥真新也や若い泉圭輔や笠谷俊介といった若い選手も軒並み好成績を残した。チーム防御率はリーグダントツで、捕手の甲斐拓也、高谷裕亮とともに鉄壁のバッテリーを構築した。

野手陣でも開幕スタメンを奪った栗原陵矢が成長を遂げてチームの中軸に成長。シーズン終盤には周東佑京が1番打者として定着してラストスパートの原動力になった。難しいシーズンだったが、勝負の終盤戦で最大12連勝をマークするなど、仕掛けどころを熟知した戦いぶりも圧巻の一言。選手層も含めて、改めてホークスの常勝軍団たる所以を示した3年ぶりのリーグ優勝だった。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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