FP横山光昭さんに聞く「必要な貯金は手取り月収の何ヶ月分?」

コロナ禍において「お金」の心配が増えた人も多いのではないでしょうか。収入が減った、貯金が足りない、少しでも増やしたい……。そんな悩みもよく聞かれます。こういった声に対し「お金の賢人」はどう答えるのでしょうか。そこで話を聞いたのがFPの横山光昭さん。著書の売上が累計330万部を超える横山さんに、コロナ禍で身につけるべき「お金の習慣」を教えてもらいました。


「必要な貯金」の目安は、7.5ヶ月→12ヶ月へ

――今年に入り、お金の不安を持つ人も増えたと思います。実際、横山さんのもとを訪れる相談者は増えたのでしょうか。

増えましたね。たとえば「資産運用を始めたい」という方は間違いなく多くなりました。自分の資産について考える機会が増えましたし、さらに春先は株価も大きく下落。安く株を買える時期だったので、これから少しでも自分の資産を増やしたいと考える人は多かったですね。

でもそれはまだ幸せな方です。投資どころではなく、貯金がなく困っている方、収入が大きく減った方……本当に厳しい状況に置かれているケースもありました。その悩みを聞いて、改めて「貯金」の大切さを痛感しています。コロナ禍では、必要な貯金の目安も変わってくるなと。

――「貯金の目安が変わる」とは、どういう意味ですか?

これまで私は、手取り月収の7.5ヵ月分の生活費を余裕資金として貯めておくべきと話していました。しかし今は、手取り月収の12ヵ月分の余裕資金があった方がいいでしょう。

――12ヵ月分……。それほどお金を持っておくことが必要ということですか?

はい。コロナ禍で家計がピンチになった人にとって、大きな分かれ目になるのが「貯金があるかどうか」です。当たり前の話ではありますが。たとえば仕事がなくなったとき、自分の手元にどれだけの余裕資金があるかで、身の振り方や対策の仕方も変わってきます。余裕資金がないと選択の幅が狭まり、次の仕事に就くにもいい条件に出会いにくくなる。そういう可能性がありますから。

なぜ今、変動費が増えているケースが多いのか

FPの横山光昭さん

――では、どうやって貯金を増やせばいいのでしょうか。今回はそのあたりを「コロナ禍に身につけるべきお金の習慣」として聞きたいです。

将来の為に貯金を増やすためにできることは3つです。「収入を上げる」、「支出を減らす」、「お金を増やす(資産運用)」ですね。この3つのバランスが貯金に関わります。1つめの「収入を上げる」については、自分の本業でキャリアアップしたり、副業をしたりということが考えられるでしょう。これはその人の仕事や立場に依るところが大きく、一概にアドバイスするのは難しいものがあります。

一方、「支出を減らす」「お金を増やす」については、共通のアドバイスができます。

――ぜひ教えてください。

まず「支出を減らす」について話しましょう。支出は大きく「固定費」と「変動費」に分かれます。固定費は毎月変わらない費用。住居費や生命保険料、通信料などです。対する変動費は、毎月の変動がある費用。食費や日用品、交際費や被服費など。

今まで支出の削減を考えるときは、固定費を意識するよう伝えました。携帯電話や生命保険の契約見直し、住宅ローンの借り換えなど。今もこれは重要ですが、一方でコロナ禍では変動費にも注意する必要が出てきたのです。

――それはどうしてですか。

コロナ禍の中で、変動費が高くなり、支出が増えている方が多いのです。そして、変動費を上げる原因となるのが「コロナ禍の不安」なんですね。

たとえばこんなケースがありました。家計相談に訪れた方の変動費を見ると、コロナ前より大きく上がっている。原因を調べると、自粛期間中に大量の食料品を買い込んで冷凍庫に保存していました。食費は2倍近くに膨らんでいたのです。

それは極端な例ですが、食料品を過剰に買い込んだり、除菌液やマスクなどを大量に備蓄したりという方が非常に多かった。もちろんコロナに備えるのは悪いことではありません。しかし、貯金したいと相談に来ている方が、こういった理由で変動費が大きく上がっていることに気づいていないのです。

知らないうちに変動費が急増するケースを防ぐには

――なぜ気づかないのでしょうか。

食費や日用品は、毎日のように細かく何度も買うので、記録をしていないとトータルの費用を把握しにくいのです。光熱費などは月1回の支払いで、かつ明細が届くので増減に気づけますが、毎日の積み重ねになる食費・日用品は増減に気づきにくいのです。

しかも、コロナ禍で生活スタイルが大きく変わりました。リモートワークで出勤が減るなど、それまでとは違う行動が増えています。これまでのお金の使い方が大きく変わる時期なので、なおさら自分の支出が増えていることに気づきにくいのです。

――変動費の推移や支出全体のチェックは、どうやればいいのでしょうか。

感覚で増減を感じ取るのは難しいので、家計簿アプリなどで推移を捉えるのがいいのではないでしょうか。といっても、支出の費目すべてをがっちり正確に記録する必要はありません。たとえば食費や日用品、被服費など、自分の中で「増減がわからない」と思う費目について、2つ3つで良いので記録をつけてみると良いでしょう。そうやって、特定の費目の増減を見るべきです。

貯金がうまい人の特徴は、細く長く続けられることです。そのためには、なんでも最初からパーフェクトにやろうとするのではなく、大体で良いのでストレスなく続ける。家計簿も完璧にやろうとすると、仕事みたいになりますから(笑)。自分のできる範囲で、簡単にできるレベルで細く長く家計簿をつける。これが支出コントロールで大切な習慣です。

横山さんが考える「コロナ禍に身につけるべきお金の習慣」は次回も続きます。


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