「来期は5割増益のV字回復」?米株安でも日本株は底堅い3つの理由

日本株相場が相対的に堅調さを維持しています。一昨日の27日は欧米株の急落を受けて日経平均は3桁円の下落で始まったものの、後場はじわじわと下げ幅を縮小。プラス圏にはあと一歩届かなかったものの、ほぼ前日終値近辺まで戻し、高値引けとなりました。


米でIT関連株安でも底堅い日本株

この日の前日の米国市場ではダウ平均が600ドルを超える大幅下落となりました。ダウ平均の下げ幅は一時、965ドルまで拡大しました。米国での1日あたりの感染者数が8万人を超え、7月を上回って過去最高となったことが嫌気されました。

米国市場に先行する欧州でも悪材料がありました。スペインやフランスの経済規制に加えて独ソフトウエアのSAPが売上高見通しを下方修正したのです。一因に挙げたのが、出張や経理精算関連のクラウドサービスで需要の持ち直しが今期中には見込めないことでした。

IT企業は新型コロナの感染拡大の影響が相対的に少ないとみなされていましたが、SAPの下方修正でIT企業も無傷ではいられないと市場心理が悪化しました。これを受けて26日の米株式市場では、オラクルやマイクロソフト、セールスフォース・ドットコムなどIT企業が軒並み売られました。

こうした欧米市場の下落を受けて開いた東京市場ですから、これまで通りなら大幅安は避けらない状況と市場関係者の多くが身構えたことでしょう。しかし日経平均は終わってみれば前述の通りほぼ変わらずの8円安で引けました。

日本株が強い3つの理由

日本株の強さの背景はなんでしょうか。大きく3つほど理由があると思います。
ひとつは新型コロナウィルスの感染者数が欧米に比べて低位で安定していることでしょう。そうしたなか、GoToキャンペーンなども盛り上がりを見せています。感染拡大を抑制しつつ経済を回す措置が奏功していることは日本経済、ひいては日本株市場がポジティブに評価される点でしょう。

2つ目は企業業績の改善期待です。4~9月期の決算発表はまだ始まったばかりですが、それでも幸先の良いスタートとなっています。

決算発表に先立って村田製作所は2020年4~9月期の純利益が前年同期比9%増と、従来予想の24%減益から一転して増益となったと発表しました。これを受けて村田製作所の株価は20年ぶり高値まで買われました。

同じく電子部品のロームも4~9月期の純利益予想を上方修正しました。また、日本電産は4~9月期の好決算を受けて2021年3月期通期の営業利益を従来予想から150億円引き上げ、日東電工も業績予想を上方修正しました。

好調なのは電子部品だけではありません。信越化学は今期純利益は10%減益にとどまる見通しを示しました。キヤノンや積水化学も今期の減収減益見込みは変わりませんが従来予想よりは上振れで着地しそうと業績予想を引き上げました。

シマノは純利益が24%増と従来予想から60億円上振れしました。工具販売大手のMonotaROの1~9月期の純利益は前年同期比31%増の101億円。同期として最高益になりました。ゲームソフト大手のコーエーテクモHDも増益で最高益となる見込みを発表しました。

もちろん業種や企業によるばらつきはあるものの、全体としては記録的な落ち込みとなった4~6月期からは着実な回復を確認する決算発表となるでしょう。Quickの予想によれば今期はざっくり2割程度の減益予想です。4~9月期の決算発表でどこまで減益幅を縮小できるか注目ですが、これまでのところは好調な決算が目につきます。

そして、同じくQuickの予想によれば来期は5割程度の増益にV字回復する見込みです。市場はまだこれを完全には織り込んでいるとは思われず、今後決算発表が進むにつれて株価は堅調度合いを増していくでしょう。

そして3つ目の理由は、「環境」というわかりやすいテーマがますます明確になってきたことです。日本には環境関連の企業がたくさんあります。

首相は26日の所信表明演説で温暖化対策について再生エネルギーを最大限導入すると明言しました。これを受けて市場ではウエストホールディングスやレノバ、エフオンなどの再生エネ銘柄が買われています。

また、中国政府は2035年をめどに新車販売のすべてを環境対応車にする方向で検討すると伝わりました。これらは日本の自動車産業にとって朗報です。前述した電子部品の好業績も自動車関連の好調さがけん引したものでした。

自動車関連は産業の裾野が広く、日本の多くの企業にとってチャンスが広がるでしょう。

日経平均は2万3000円台半ばでのもみ合いに終始していますが、こうした3つの理由を背景に米国大統領選の不透明感払しょく後は上昇基調を強めていくと思われます。

<文:チーフ・ストラテジスト 広木隆>

© 株式会社マネーフォワード