静岡県=ブラジル人学習施設が資金支援募る=「子供に授業料1カ月分を」=親のコロナ切りで学校通えず

オンラインで取材に応じるボランティアのヴィアナ沙織さんと黄地理事長

オンラインで取材に応じるボランティアのヴィアナ沙織さんと黄地理事長

 「まずは1カ月でも長く通わせてあげたい」――静岡県菊川市で在日ブラジル人向けに託児・学習施設NPO法人「ミライ」を運営する黄地潔(二世、57歳、リオ州出身)理事長は今回のクラウドファンディングを始めた思いをそう語る。同校は生徒の月謝のみで運営しており、すでに借入金が1600万になっている。同校に通う生徒の保護者は9割が派遣社員で、殆どがコロナ切りで失業した。その結果、一時期は87人いた生徒が37人まで激減。現在は52人に戻ったが、依然として施設運営は厳しい状況にある。

 クラウドファンディングでは「まずは急を要する、復学出来ていない生徒から助ける事」を目標に、生徒20人の月謝1カ月分と手数料を含む116万円を募る事にした。

日本語の勉強をする子供達

日本語の勉強をする子供達

 復学出来てない生徒は、これから公立の小学校や中学校へ入学を控えている6歳から12歳の学習支援クラスの生徒で、両親自身も日本語が出来ない家庭が殆どだ。同クラスでは日本語の勉強のほか学校でのルールも指導しており、公立学校への円滑な就学を支援していた。
 黄地理事長は「少しでも勉強から離れるとせっかく覚えた事を忘れてしまう」と生徒達への心配を募らせる。同件で支援対象となる生徒の両親は45歳以上の年齢で再就職が難しく、学費が払えないので復学の目途が立っていない状況だと語る。
 同施設に通う生徒の両親は単にデカセギとしてではなく「子供を安心して育てたい」と治安の良さから来日してきた人も多い。中にはブラジルでエンジニアや弁護士など高度な専門職に就いていた人もいるという。
 一方で、下調べが足りないまま訪日する家族も多く「家族で来日する時は両親のどちらか先に来て現地を把握する事をお勧めします」と提言している。
 黄地理事長は89年から日本に定住し、車の製造工場で働いていた。娘がブラジル人学校に通いだしてから教育に疑問を抱き「良い教育をさせたい」と学校を立ち上げたのがきっかけ。日本語とポ語だけでなく世界でもコミュニケーションが取れるようにと英語も組み込んでいる。
 同施設には1歳から6歳までの託児クラス、主に日本語を教える6歳から12歳の学習支援クラス、ブラジルに帰国予定がある児童のためにブラジル人学校のほか、学校の宿題を支援する放課後クラス、年齢を問わない日本語支援教室も設けている。
 クラウドファンディングは500円からの支援が可能。中には菊川市名産のお茶や送迎車両にバナー広告掲載などのお礼が選べるコースもある。募集期間は11月23日(月)まで。支援募集ページ(https://readyfor.jp/projects/crechemirai/preview?preview_token=33873646744bde1fd7e69cc7995c81136f5554e2
 託児・学習施設NPO法人「ミライ」にはホームページやフェイスブックも開設されている。▼ホームページ(https://www.crechemirai.org/)▼フェイスブック(https://www.facebook.com/business/dashboard/)

大耳小耳 コラム
    ◎
 在日ブラジル人向けに託児・学習施設NPO法人「ミライ」は、託児所から日本の公立学校へ就学する子供を支援するクラスや、いずれブラジルに帰国予定の子供向けにブラジル人学校もある。正式なブラジル人学校としての認定申請中で、取材中に東京都北青山にあるブラジル大使館を通じ、「受付け番号」の書類が届き「これで安心できる」と顔を綻ばせる黄地理事長。というのもブラジル政府へ申請を始めたのは3年前で、政権交代のタイミングが重なって申請が破棄されたこともあり今回で3度目の申請だという。審査に合格して嬉しい知らせが続いて欲しい所だ。

ブラジルで定められた教育課程に加え日本語と英語も教える。
日本語クラス。生徒にあわせて勉強を進める。
4~6歳のクラスの授業風景
日本語の文法ドリルに取り組む生徒

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