11試合連続盗塁は“脚力”だけにあらず 鷹・周東佑京の記録にある本当の凄さ

ソフトバンク・周東佑京【写真:福谷佑介】

スタメンに定着した9月から打率3割超えの打撃成績を残す

■ソフトバンク 2-0 ロッテ(28日・PayPayドーム)

28日のロッテ戦で日本タイ記録となる11試合連続盗塁を成功させたソフトバンクの周東佑京内野手。ロッテ戦の3回に二塁への盗塁を決めて、1971年と1974年に福本豊(阪急)が樹立したプロ野球記録に肩を並べた。

この試合に「1番・遊撃」でスタメン出場した周東は3回1死一塁で迎えた第2打席で、遊ゴロ併殺崩れで出塁。続く川島の打席でチェン・ウェインの牽制球に誘い出されてスタートを切った。「ヤバイと思った」というが、そのまま止まることなく、一気に二塁を狙った。

「前に(牽制に引っかかって)止まったので行ってみたらどうかなと思って。(日本ハムの西川)遥輝さんとかもよく行ってるんで、行ってみました」。驚異的なスピードで間一髪のところでセーフとなり、二盗に成功。これには工藤公康監督も「僕はあれが正解なのかなと思います」と語り、牽制にも構わずスタートを切ることが成功の要因だと指摘した。

11試合連続の盗塁で今季47盗塁とした周東。これで10月だけで月間21盗塁目となった。驚異的なペースで盗塁を量産しているが、この盗塁を支えているのは、その俊足ぶりだけではない。塁に出なければ、盗塁も企図できない。この11試合連続盗塁には、周東の打撃面での成長も凝縮されているのだ。

今季の周東は開幕時は代走や守備固めでの起用がメインだった。スタメンでの出場を増やしたのは7月も半ばになってから。ほぼレギュラーとなったのは9月になってからで、主に1番を任されるようになったのは9月半ばを過ぎてからだった。

福本氏から言われた助言「走りたいなら塁に出ろ」

8月末の段階で周東の打率は.208だった。だが、9月に入り、一気にその数字を上げていった。9月の月間打率は24試合で.307、出塁率は.346を記録。10月もここまで打率.306、出塁率は前月を上回る.358を記録。連続で盗塁を決めた11試合は46打数15安打で打率.326をマークし、5つの四球も選んでいる。

周東自身も28日の試合後に「それだけよく塁に出れたな、と思います」と言う。記録を持つ福本豊氏からは対談した際に「走りたいなら塁に出ろ」と言われたという。福本氏は通算2543安打を放ち、3割超が7度、最多安打を4度記録した大打者でもあり、周東自身も「どうやったら塁に出られるかを考えるようになりました」という。

この日の出塁は走者を一塁に置いた状態での内野ゴロ併殺崩れだった。ただ、周東は「最悪あの形でもいいな、とずっとシーズン通して思っている」。内野ゴロでも併殺にさえならなければ、自身の盗塁で再び得点圏に走者を置ける。犠打を決めたのと同じようなもので「萎縮せず、楽な気持ちでいけています」と精神面でもプラスに働いている。

「世界の盗塁王」と称された福本氏のことを「憧れでもなんでもないです。本当に無理、異次元です」と語るが、その福本氏の記録を塗り替えるチャンスが目の前にある。12試合連続盗塁のプロ野球新記録はなるか。29日のロッテ戦に向けて「チャンスだな、と。それだけです」と静かに意欲を滲ませていた。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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