マスク生活で口臭に悩む人が増えた?ケア不足が新型コロナ感染リスクを高める可能性

新型コロナウイルスの感染拡大により、歯科からも足が遠ざかる人が増えていると言われます。しかし、コロナやインフルエンザなどの感染症リスクがある今だからこそ、歯やオーラルケアが重要であると専門家は指摘します。

10月14日に行われた日本歯科医師会主催の「歯と口の健康シンポジウム2020」から、コロナと歯周病、そしてオーラルケアとの関係性、感染予防のために気をつけるべきポイントをお伝えします。


20、30代が歯科から足遠のく

医療法人社団桜翔会桜堤あみの歯科が9月に行った、「新型コロナウイルスの感染拡大による歯科医院への通院頻度と歯への意識変化」という調査によると、20代、30代を中心に、新型コロナ感染拡大以降は歯科医院への通院頻度が減っている人が多いことがわかりました。

感染拡大前(2020年2月以前)と感染拡大後(2020年2月以降)の歯科医院への通院頻度を比較すると、20代は「1ヶ月に1回程度」が22.7%から18.7%に、「2~3ヶ月に1回程度」が24.1%から19.2%に、「3~6ヶ月に1回程度」が18.2%から23.2%に変化。

30代は「1ヶ月に1回程度」が22.0%から増減がなかったものの、「2~3ヶ月に1回程度」が28.4%から22.9%に、3~6ヶ月に1回程度が18.8%から24.8%に変化しました。歯科医院は特に、患者がマスクを外し、口を大きく開けて診療するために感染症を恐れる人が多いのかもしれません。

日本歯科医師会によると、10月14日現在までに歯科治療を通じての感染拡大の事例は1件も確認されていません。この件について日本歯科医師会の堀憲郎会長は、「日頃から歯科医療現場では高いレベルの感染防止が維持されている」と語ります。

マスク生活による唾液の減少

近年、口腔と全身は健康上で大きく関連していることが注目されています。まだ解明されていないコロナとオーラルケアの関係性の研究が期待されています。

生活の必需品となったマスクによって、口臭が気になる人が増えてきています。神奈川歯科大学副学長の槻木恵一氏は、唾液の減少が原因であると指摘しました。ストレス、マスクによる水分補給不足、人と話さない生活、口呼吸といった習慣により、唾液が減り、口腔細菌が増えてしまうそうです。

そもそも唾液中にはIgAという抗体が最も多く存在し、唾液は有害な細菌やウイルスを排除してくれる粘膜免疫として働いてくれます。ウイルス感染の入り口となる口腔内をケアすることは唾液の量と質を改善し、コロナに限らずあらゆる感染症から身を守ることにつながります。

歯周病はコロナウイルスのリスクになる?

また、歯周病とコロナの関連も指摘されています。歯周病とは、歯と歯ぐきの間に繁殖する細菌に感染し、歯の周りに炎症が起こる病気で、全身のさまざまな病変に影響を与えると言われています。病変は心筋梗塞や糖尿病、大腸がん、早産など多岐に渡り、まさに歯周病は万病の元といえます。

最近の研究で、コロナと歯周病に因果関係がある可能性がわかってきました。歯と歯ぐきの間にできる歯周ポケットから新型コロナウイルスが侵入する可能性があるという研究結果があるそうです。舌に付着する白い苔状の舌苔(ぜったい)にも要注意。舌苔は細菌の温床ともなり、新型コロナウイルスの感染リスクを高めると考えられています。

また、歯周病菌によって、肺炎やインフルエンザが重症化してしまう可能性も忘れてはいけません。

唾液を増やすには

「歯周病にならないことや舌のケアをすることが、新型コロナやインフルエンザなどの感染症対策の上で重要であることは間違いない」と槻木氏は警鐘を鳴らしていました。

唾液の分泌を増やすためには、発酵食品や水分の摂取が大切です。それらに加え、毎日の歯磨きと舌磨きで唾液の質と量が強化され、感染症に罹りにくい状態を目指すことができるのだといいます。

加齢、喫煙、口腔内の健康とコロナには共通点が多い

厚生労働省の「平成28年度歯科疾患実態調査」によると、成人の7割が歯周病であると言われています。特に一気に症状が進行するのが35歳以降。シンポジウムでは、コロナと歯周病はともに、加齢が重要なリスクファクターであることと指摘されました。

喫煙習慣でも唾液量が自然と減り、口腔細菌が増えるそうです。そもそも、喫煙者は新型コロナウイルスにかかりやすく、また重症化しやすいというデータがあることも指摘されました。これは口腔内の防御機能の低下や喫煙による肺のダメージ、慢性の炎症を引き起こすといったさまざまな理由が考えられるそうです。

新型コロナ感染対策の3つのポイント

新型コロナウイルスについては、まだまだ解明されていないことが数多くあります。治療法も限られている中で、口腔ケアとの関連性についても今後の研究成果が待ち遠しいところです。一方で、新型コロナウイルスと関連があるとわかっている歯周病はセルフチェックができ、効果的に予防ができる病気です。

・歯ぐきに赤く腫れた部分がある
・口臭がなんとなく気になる
・歯ぐきがやせてきたみたい
・歯と歯の間にものがつまりやすい
・歯を磨いた後、歯ブラシに血がついたり、すすいだ水に血が混じったりすることがある
・歯と歯の間の歯ぐきが、鋭角な三角形ではなく、うっ血していてブヨブヨしている
・ときどき、歯が浮いたような感じがする
・指でさわってみて、少しグラつく歯がある
・歯ぐきから膿うみが出たことがある
当てはまる項目が1~2つ以上の場合は歯周病の可能性があり、3つ以上の場合は歯周病が進行している恐れがあります。

日本歯科医師会は、新型コロナの感染や重症化を防ぐため、マスクや手洗いなど基本的な感染症対策を行う、唾液の免疫力による細菌やウイルス防御を高める、そして感染症と密接な関係がある歯周病にならない、という3つのポイントを進言しています。

「最近、歯医者に行っていない」「歯周病になりかけているかも」という方は、早めに歯科医院を受診することが良さそうです。歯周病のセルフチェックは1つでも当てはまったら、歯周病の可能性がありますよ。

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