「軍事研究の排除を」 放影研外部諮問委が「助言」

放射線影響研究所の兒玉氏(左)に「助言」を手渡す片峰氏(中央)=長崎市、放影研長崎研究所

 放射線が人体に与える影響を日米共同で調査する広島市と長崎市の公益財団法人放射線影響研究所(放影研)は28日、被爆者の血液や尿などの保存試料に関し、改めて軍事研究での利用を排除する方策など7項目を盛り込んだ外部諮問委員会の「助言」を発表した。
 原爆投下後の1940年代後半に設置された米原爆傷害調査委員会(ABCC)が前身の放影研は、被爆者と被爆2世計約3万人の血液と尿のサンプル計約190万本を保存している。
 現在は定款で平和利用を掲げ、原発労働者などの研究にも関わる一方、外部の軍事関係の共同研究を排除。ただABCCの初期は「軍事研究だったといえ」(丹羽太貫(にわおおつら)理事長)、被爆者の間に「調査すれども治療せず」との批判もあった。
 外部諮問委は、国民の理解を得る目的で2018年に両市で設置。両市で同日、「助言」の受領式があり、放影研長崎研究所(長崎市中川1丁目)では長崎の委員長を務める片峰茂・長崎大前学長が放影研の兒玉和紀業務執行理事に「助言」を手渡した。片峰氏は「平和研究への特化を改めて何らかの形で社会に表明することが、軍事研究の明確な歯止めになる」と語った。
 助言はほかに、究極の個人情報であるゲノム(全遺伝情報)を解析する際、結果をどう社会に還元するかの方針やカウンセリング体制の整備など。放影研は今後、対応策を検討する。

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