静岡銀行と山梨中央銀行が業務提携、株式持ち合いも視野

 10月28日、静岡銀行と山梨中央銀行は包括的業務提携「静岡・山梨アライアンス」に関する基本合意書の締結を発表した。
 同日16時から、都内のホテルで静岡銀行の柴田久頭取と山梨中央銀行の関光良頭取が会見した。今回の提携に至った背景を東京商工リサーチ(TSR)情報部が取材した。

 静岡銀行と山梨中央銀行は、来年度に予定されている中部横断自動車道の全面開通を見すえ、2019年7月からNEXCO中日本を加えた3社で地方創生を目的に協業に取り組んでいた。
 また、静岡県と山梨県は、これまで新潟県、長野県を加えた4県で連携を進めており、地域金融機関として行政による連携を金融サービス面でいかに支援するか共通の課題となっていた。

静岡・山梨アライアンス1

‌静岡銀の柴田頭取(左)と山梨中央銀の関頭取

 静岡銀行の柴田頭取は「連携の実効性を高めるなかで、地域・お客様の夢の実現に寄り添い、株主や従業員の還元に努めたい」と提携の意図を述べた。
 また、山梨中央銀行の関頭取は「アライアンスに取り組むことで、双方のお客様や地域社会の役に立ち、7年後の山梨中央銀行、創業150周年に向け、ステークホルダーの期待に応える金融グループを目指す」と、長期ビジョン、バリュークリエーションバンク実現への期待を込めた。
 今後5年で、収益や経費面など、約100億円の提携効果を見込む。また、提携効果を高めるため株式の相互取得も予定している。
 提携に向け、両行の頭取をトップとするプロジェクトチームを設置する。プロジェクトチームは、頭取級、役員級、部長級の三階層で立ち上げ、部長級では10の施策分野について分科会を設置し、議論を進めていく。

主な質疑応答

Q:提携は、どちらからの話だったのか?
A:(静岡)2020年7月に両行頭取で会談する機会があり、どちらの銀行というわけではなく、2019年7月の協業からさらにもう一歩踏み込んだ取り組みができないかという話になった。この約3カ月間のなかで、かなり大きな効果が両行で実現できるという話となって、包括業務提携という形でさらに一歩進めていきましょうという話になった。
(山梨中央)ビジネスモデルの改革を進めるなかで、今回のコロナ禍のなかでスピードアップしていくためには、2つの銀行が力を合わせることで、それを実現できるのではないかという気持ちになった。7月の時点でどちらからともなく、気持ちが一緒になった

Q:どのくらいの規模の(株式の)相互保有を考えているのか?
A:(静岡)これから議論を詰めていく。主要株主に影響を与えない範囲内でというイメージ。20%とか、大きなものを想定しているわけではない
(山梨中央)そんな大きな規模ではなく、このアライアンスの本気度を示すということ。単なるアライアンスではなくて、実効性のあるものにする、そういうことで株式関係もしたい。

Q:将来的な統合・合併の可能性は?
A:(静岡)今回の包括業務提携のなかに、資本提携は含まれてはいない。この資本を提携することが包括業務提携の前提になっているわけではない。現時点で、経営統合を含めた、さらにもう一歩進んだという部分のところは全く想定していない。
(山梨中央)この提携が資本提携とか、そういう意味合いの濃いといったものでは全くない。将来的な統合があるか、ないかということは、現段階では全く考えていない。ただ、将来、今回のコロナではないが、環境がどう変わっていくか、その時々の判断のなかで、もしかしたらありうるかもしれない。ずっと先のことだと認識している。

Q: 総理大臣が交代し、地銀再編が注目を集めているが、今回の提携に影響したのか?
A:(静岡)新政権になったとか、監督官庁の指導とか、そういったものに基づくものではない。地方銀行が置かれている経営環境を踏まえると、各銀行が創意・工夫しながら、さらに新たな事業領域の拡大といったものをしていかなければならない。そういった環境にあるということが一番大きい。
(山梨中央)当局とか、政治とか、そういったところの関係ではない。あくまでも我々の判断。コロナ禍で、そのスピードを求められているということは意識した。

Q:提携にほかの金融機関が入ってくる可能性は?
A:(静岡)排他的な条項を謳って何か他の提携を排除していく条項はない。目に見える形の成果を出すことで、エリアに関係なく、それからシステムベンダーが違う金融機関とも、さまざまなパーツ・パーツのなかで、連携といったものができるようにしていきたい。これを地銀の一つのモデルにできればと考えている。

Q:地銀のなかで、SBIとメガ構想の動きがあるが、参画することは考えなかったのか?
A:(山梨中央)地域の連携ができるか、機能で連携ができるか、という2つの側面があり、両方ができるということで、静岡銀行とのアライアンスを選択した。しかも、中部横断自動車道が来年開通する時期にあわせてこれができるということは、本当に地域の皆さまにも喜んでいただけるアライアンスだと思っている。それが、機能だけでなく、地域を意識して、全てのステークホルダーに還元されるアライアンスを意識した。

静岡・山梨アライアンス2

‌静岡銀の柴田頭取(左)と山梨中央銀の関頭取

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年10月30日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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