米フィラデルフィアが夜間外出禁止令 黒人男性射殺で抗議続く

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米ペンシルヴェニア州フィラデルフィア市当局は28日、黒人男性が警官に射殺された事件をめぐり連日抗議行動が起きていることを受け、同日午後9時から翌29日午前6時までの外出を禁止した。

フィラデルフィア西部のコブス・クリーク地区では26日、ウォルター・ウォレスさん(27)が警官に撃たれて死亡した。事件を受け、300人を超える人々が26日夜、路上で抗議行動を繰り広げ、91人が逮捕された。

抗議者たちは27日夜に再び警察と衝突。多数の事業所や商店が略奪された。

抗議行動の現場にはペンシルヴェニア州兵も派遣された。

複数の事業所は、新たな暴力行為に備えて窓に板を張っている。

フィラデルフィアでは、5月にミネソタ州ミネアポリスで男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に首を圧迫されて死亡した際にも、警察の残虐行為や人種差別に対する大規模な抗議デモが起きた。

米大統領選の候補者たちの反応

27日にウィスコンシン州で開かれた選挙集会で、ドナルド・トランプ大統領は抗議者たちと民主党の大統領候補ジョー・バイデン前副大統領を結び付けようとした。両者の関連性を示す証拠は示さなかった。

トランプ氏は、「昨夜(26日)フィラデルフィアはバイデンが支持する過激派によって切り裂かれた」、「30人のフィラデルフィアの警官が負傷した。ひどいけがを負った警官もいた。バイデンは暴徒を支持している。私は法執行機関の英雄を支持する」と述べた。

翌28日には、ケイリー・マケナニー大統領報道官がこの暴動は民主党による「警察に対する戦争」の「新たな結果」だとし、「衆愚政治」は決して許されないと述べた。

一方でバイデン氏と民主党の副大統領候補カマラ・ハリス上院議員は27日の共同声明で、「この国でメンタルヘルスの危機が死に至ることは容認できない」とした。ウォレスさんは精神的な問題を抱えていたと、父親がメディアに述べたのを受けたものとみられる。

また、略奪は犯罪行為だと非難した。

バイデン氏は28日に記者団に対し、「抗議は完全に合法であり全く理にかなっていると思う。しかし、だからといって略奪の言い訳には通用しない」と述べた。

フィラデルフィアはペンシルヴェニア州の最大都市。同州は来週の大統領選挙の行方を左右する重要州となっている。

ジム・ケニー市長(民主党)は、ウォレスさんが射殺された動画について、「答えが必要な問いを提示するものだ」と述べた。市長は詳しい説明は避けたが、「ウォレスさんと家族、警官、フィラデルフィアのため、迅速で透明な解決」を望んでいると話した。

大規模な略奪

当局によると、26日夜から日付をまたいで続いた抗議行動で、警官ら30人がけがを負った。警官1人は車両(ピックアップトラック)に衝突され、足を骨折するなどして病院に運ばれたという。

27日のデモ行進は平和的に始まったものの、夕方になるにつれてより対立的なものとなった。

市内各地では商店が早めに営業を終え、バリケードを作るなどした。警察や市の緊急対策当局によると、複数のエリアで略奪行為が報告されたという。

地元紙フィラデルフィア・インクワイアラーによると、抗議者らはごみ箱を使ってバリケードを作ろうとした。警察は抗議者らから攻撃を受けたとし、こしょうスプレーや警棒を使用した。

27日夜の抗議行動では81人が逮捕され、そのうち53人は強盗容疑で訴追された。当局によると、警官23人が負傷した。

事件で何があったのか

警察によると、26日午後4時ごろ、フィラデルフィア西部のコブス・クリーク地区に武器を持った男性がいるとの通報を受け、警官2人が急行した。

AP通信が警察の報道官の話として報じたところでは、後にウォルター・ウォレスさん(27)と判明する男性が、ナイフを手にしていた。警官らが手放すよう命令したところ、「警官らに向かって前進して来た」という。

警官2人は「数回」発砲し、ウォレスさんの肩と胸に命中した。警官の1人が病院に運んだが、死亡が確認されたという。

ソーシャルメディアに投稿された動画には、ウォレスさんが歩いて警官2人に近づき、警官らはウォレスさんに銃を向けている様子が映っている。警官らは後ずさりし、ナイフを置くよう大声で指示している。

その後、発砲があり、ウォレスさんが路上に倒れているのが動画で確認できる。

ウォレスさんの父親は地元紙フィラデルフィア・インクワイアラーに、ウォレスさんは精神的な問題を抱え、薬を摂取していたと説明。「なぜテイザー(電気ショックを与える器具)を使わなかったのか?」と述べた。

27日の記者会見で警察は、発砲した警官2人について、7発ずつ発砲したと説明。どちらもボディカメラを身につけ、テイザーは携行していなかったとした。

警官らの氏名は明らかにされていない。

救急車の代わりに警官到着

ウォレスさんの家族の弁護士シャカ・ジョンソンさんは、ウォレスさんの精神問題に対応するため、家族が救急車を呼んでいたことを明らかにした。

フィラデルフィア・インクワイアラーによると、ジョンソン弁護士は、救急車の代わりに警官2人が到着したと説明。ウォレスさんの妊娠中の妻は警官らに、ウォレスさんが双極性障害で危機的な状態にあると伝えたという。

(英語記事 Curfew in Philadelphia after police kill black man