コロナで求人は増えた? 減った? 転職事情のリアルを人材コンサルタントが解説

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自分の会社は大丈夫……? 新型コロナ感染拡大の陰で常に気になっていたこと

この半年間、コロナ禍の世界的な感染拡大のニュースの陰で、誰もがいつも気にしていたのが、「経済にどの程度の影響があるのか」「自分の会社は大丈夫か」「雇用や収入に影響はないだろうか」という不安である。

海外渡航や国内でもヒトの移動が制約されるようになってから、隔離期間や自宅待機といった抑制的な言葉を目にすることが増え、私たちは自由を奪われてきた。最近になって緩和モードが広がり、生活そのものの自由度は増し、街中に人が戻ってきているが、果たして冒頭のいくつかの質問に光明は見えだしただろうか。

元ヘッドハンターで「35歳からの転職成功マニュアル」「人材紹介の仕事がよくわかる本」など多数の著書がある人材コンサルタントの小松 俊明が、昨今の転職市場から気になるwithコロナ時代の転職事情のリアルを紹介する。

withコロナ、深刻な打撃を受けたアノ業界の現状は

最も分かりやすい事例で、まずは企業の取り組みを考察してみたい。コロナ禍の影響を最も受けた航空業界の現状である。日本の航空業界大手2社は大きな赤字を発表している。もちろんこれは想像に難くない結果であるが、両社ともに航空機事業以外の収益力強化に取り組み始めている。つまり、航空事業に偏重した収益構造からの脱却である。

例えば、日本航空は小型無人航空機(ドローン)の最新技術を活用した地域サービスを新たな収益源の柱に掲げている。ドローンの運行管理システムの提供、小型航空機による近距離輸送業、そして旅行商品開発などで、年間1千億円を売り上げるなど数値目標も明示している。では企業のこうした新しい取り組みから見えてくることは何だろうか。

街に人が戻ってきたように、転職市場にも人が戻りつつある

コロナ禍の打撃を最も受けた航空業界では、業績悪化や冬のボーナスの大幅削減などのニュースが目立つが、その陰では新規事業への取り組みが急ピッチで進んでいることを指摘した。このような状況がみられるとき、転職市場には変化が起きるものだ。

つまり、新しいビジネスにはノウハウや潜在顧客の獲得が必要であり、それが既存の社員だけでできるのかといえば、実に心もとないというのが現実ではないだろうか。

フライト数の大幅な削減により、余剰な時間ができた客室乗務員を地上勤務にシフトさせているというニュースもあるが、その陰では、本来やりたかった業務ができないことに不満を持つ社員の存在や、仮に不本意ながらも社内異動を受け入れたとしても、新しい仕事で力を発揮できない社員にとっては、新たな活躍の場を求めて転職市場に活路を見出すのも自然な流れである。

このように、既存の社員の流出が静かに水面下で進む中で、それと同時に新規事業の分野で実績のある人材の中途採用への需要は、今後高まっていくことが予想される。ここしばらく転職活動を自粛してきた層にとっては、久しぶりにチャンス到来かもしれない。

withコロナはbeforeコロナと何が違うのか~新卒採用の場合

コロナ禍の影響が大きい業界の例として航空業界を取り上げたが、多くの人が在宅勤務にシフトしたことで自宅にいる時間が増えてネット販売が拡大したように、コロナ禍で業績を伸ばした業界や会社もある。前者の航空会社では新規事業への挑戦で新たな求人需要が生まれた可能性もあり、後者のケースでは事業拡大による増員が見込まれて、求人需要が拡大した会社もあった。

一方、コロナ禍が今年の大学新卒の採用に与えた影響を振り返れば、感染が収束する時期の先行きが不透明であるゆえに、新卒採用の数を削減した会社が目立っていた。前述の航空会社をはじめ、中には新卒採用そのものを中止した会社もあったが、もともと業務経験がない新卒採用の人数を増減させるかどうかの判断は、業務への影響が少ない分、比較的容易である。

コロナ禍の影響で就活生が戸惑ったのは採用枠が減少したという問題よりも、従来よりも採用活動が1~2カ月後ろ倒しになったこと、そして面接がオンライン化したことで、企業研究や業界研究が例年ほど十分にできなくなったことである。この結果として、内定を確保するタイミングがbeforeコロナの時代よりも大きく遅れ、そのことで不安を募らせた学生は多かったに違いない。

withコロナはbeforeコロナと何が違うのか~中途採用の場合

さて、withコロナの中途採用は、この半年間どうだっただろうか。コロナ禍がビジネスに大きな打撃をもたらした航空業界のようなケースを除けば、結論としては、それほど大きな影響はなかったと考えられる。

非常事態宣言が出された4月直後は、さすがに転職活動を控える動きが見られ、企業もいったん採用活動を見合わせたケースもあった。ただし、中途採用は増員需要よりも、実務経験のある社員の退職に伴う補充が中心であるため、もし企業が採用活動を控えた場合、職場の現場へのしわ寄せが即座に現れる。

つまり、過去に起きたリーマンショック並の大きな衝撃が起きない限り、中途採用に急ブレーキがかかることはない。今回withコロナでよく聞くようになったのは、定年退職する社員の補充を控えたケースである。ただし、これはbeforeコロナの時代であっても見られた現象である。

人事の視点、人材エージェントの視点で見れば、コロナ禍にあっても企業の中途採用の需要は一部のコロナ禍が直撃した業界を除けば大きくは減らず、採用プロセスは多少慎重さを増して時間をかけた採用にはなっているが、あくまでも退職者(定年退職者は除く)の欠員補充の需要を中心に、転職市場はbeforeコロナと同様に活況な状態を保っているのである。

在宅勤務の広がりによって、多様な働き方が定着してきた

コロナ禍の影響は、求人案件の減少のように転職機会を削減させたことよりも、むしろ人々の自由度を奪って、文字通り身動きが取れなくなるような心理的な影響を与えた点で、そのネガティブな影響を過小評価してはならない。

2020年に新入社員として入社した多くの若者たちが、4月から会社に出勤できなくて自宅待機を命じられて仕事へのモチベーションを下げたことのように、コロナ禍には多くの人の働く意欲を奪うだけのネガティブなインパクトがあった。

熱意をもって取り組んできたプロジェクトが止まり、国内外の出張もできず、仕事が滞った人も多かったはずだ。一方、テレワーク、リモートワーク、在宅勤務という言葉を毎日のように目にするようになり、多様な働き方の議論が一気に前進したことはプラス材料だった。

在宅勤務をする人が増えたおかげで、通勤時間帯の電車も、以前のような過剰な乗車率ではなく、ストレスが少ない移動手段となっている。副業を認める企業も増えてきた。週3勤務の正社員も出現している。

オンライン会議が増え、会議の短縮化や回数削減にもつながっている。コロナ禍は憂鬱だが、長年議論してもなかなか前進しなかった多様な働き方が、この半年間で一気に進んだことは、コロナ禍の中だからこそ実現したといえるだろう。この点で、withコロナ、afterコロナの世界には期待できることも多い。

withコロナの時代、人材エージェントのサービスも多様化していく

最後に、withコロナの時代に、上手に人材エージェントと付き合い、自分のキャリアメーキングを成功させるための視点について考えることにしよう。

最初に知っておいてほしいのは、働き方の多様化が進むことは人材エージェントにとっては大きなビジネスチャンスであるということ。企業が求める適切な人材を提案するのが人材エージェントの仕事だが、なかなか企業が求める経験や実績、総合的な能力と人格を備えた人物は見つからないものだ。

フルタイムの正社員で転職回数が少なく、年齢にも注文があるとなれば、人材エージェントとしては、紹介を断念することの方が、実際に紹介できる件数と比べたらはるかに多いのが現実である。在宅勤務OK、週3日勤務OK、副業OK、兼業OKとなれば、フルタイム勤務、正社員などにこだわらなくてもよくなり、多様な人材を紹介しやすくなるかもしれない。

ビジネスパーソンにとっても、複数の企業に勤務し、本業以外に副業もできるとなれば、今よりもっと自らのスキルアップにも身が入るのではないだろうか。人材の流動性が高まることは、産業界全体にとってもよいことであり、一つの会社が、終身雇用的に一人のビジネスパーソンの自由を長期間にわたって縛ることは必要がなくなる。

別の言い方をするならば、1人のビジネスパーソンの面倒を長期にわたり会社がみることも不要になる。これは企業にとって、経営に柔軟性が生まれ、コスト削減にもつながるメリットもある。

企業の採用が変化し、今よりもさらに多様な人材、そして多様な働き方ができる人材を求めるようになっていく。これに伴い、人材エージェントの仕事も同様に変わっていく。ビジネスパーソンにとって、人材エージェントのサービスの使い方も、今後は多様性を増していくため、その変化には引き続き注目していくことが必要である。

(文:小松 俊明(転職のノウハウ・外資転職ガイド))