さらば自粛警察! ママ友の同調圧力に負けないために

子育ても終盤のママライターが、ドライな視点で育児のモヤモヤをぶった切りこの企画。今回は新型コロナウイルスの影響で増えた「同調圧力」について切り込みます。

警察と言えば、あの名作コント

ドンドンッ

「警察だ。麻薬現行犯で逮捕する。開けろ!」

「だ、だ~れ~?」

「警察だ!開けろ!おい、開けないか!おい、警察だぞ!」

「け、けえさつ~?」

「そうだ。大人しくしていれば手荒な真似はしない」

「ここは、けえさつじゃないよお」

というギャグが昭和の昔に流行りましてね。発信元はスネークマンショー。小林克也と伊武雅刀(当時は伊武雅之)が組んで、YMOともコラボレーションしていた伝説のコントユニットです。ベースがラジオでしたから、セリフと音楽のみで聴かせるんですが、それがメチャクチャ下品&過激でねぇ。淑女のあなたはYouTubeで探したり聴いたりしないでくださいね(聴くなよ、聴くなよ、絶対聴くなよ!)。

なんでこのギャグを思い出したのかって、この「withコロナ」時代に、自粛警察とやらがウロウロしているそうじゃありませんか。

家族で行きつけの飲食店に行ったら、PTAがらみの人が見ていて、あとでチクチク言われた、とかね。

「仲のよかったママ友が自粛警察になってしまった」といったお嘆き、あなたの耳にも入っているんじゃないでしょうか。ふだんから同調圧力の強い人が、コロナで可視化されたようにも思えます。さて、この手の面倒な人にどう対応しましょうか。

そう考えたときに、「ここは、けえさつじゃないよお」のギャグを思い出してほしいのです。

ふだんポジティブな人が怒っている

と、その前に、自粛警察になってしまう心情にも目を向けてみましょう。キーワードは「怒り」と「自業自得」です。

自粛警察さんが感じる「怒り」とは、新型コロナ感染拡大防止に非協力的な人への腹立たしさです。「新型コロナウイルスによる生活と意識の変化に関する調査(※1)」が、おもしろいデータを示しています。医療や物流などの現場で働く人たちに、感謝の気持ちをもっている人ほど、この腹立たしさを感じているというのです。ふだん「感謝」を口にするいい人が、実は内心プンプンしていたということですね。

第一生命経済研究所「第2回新型コロナウイルスによる生活と意識の変化に関する調査」より

そして別の調査では、「感染したのは本人のせい」と考える人が一定数いるようなのです。大阪大学の三浦麻子教授らが5カ国(日・米・英・伊・中)で調べたところ、「新型コロナウイルスに感染した人がいたとしたら、それは本人のせいだと思う」と考える人が日本でもっとも多く、15.25%いたそうです(※2)。

感染したやつに病気をうつされるのは社会の迷惑。そう考える人が自粛警察となって、ドアならぬ人間をドンドン叩く行動へ走っているのかもしれませんね。

※1「 」第一生命経済研究所
※2 「どちらかといえばそう思う」「ややそう思う」「非常にそう思う」の合計。『 』大阪大学大学院 人間科学研究科 三浦麻子ら

実は「自業自得だ」と考える人は少ない

こうしたデータを見ていくと、プンプン・ドンドンする自粛警察気味のママたちの心情もちょっとわかる。ふだん「感謝」を大切にしているからこそ、そうでない人へ反感を抱きやすいというのは、共感できなくもない話。

と、やんわりした理解を傍らに置きつつ、いき過ぎた同調圧力に対しては、やはりなんらかの心理的対策をとりたい。そこで冒頭の「ここは、けえさつじゃないよお」です。相手の言葉を鵜呑みにせず、心の距離を置いてみるのです。

方法のひとつは、 説明したように、主語をその人に設定して考えます。

  • 「○○ちゃんのママはあんなこと言っているけど、本当は怖くて不安なんだ」
  • 「○○ちゃんのママは、エッセンシャルワーカーへの感謝を話題にしたらのってくるかな」
  • 「○○ちゃんのママの言っていることは本当だろうか。調べてみよう」

前述の調査でも、感染は本人のせいという意見は、裏を返せば8割以上の人が「そう思わない」と答えているわけで、相手のママが「当たり前だ、こうであるべきだ」と考えていることも、実際は彼女だけの思い込みであることが多いのです。

自分が世間の目におびえていたり、「あ、ちょっと自粛警察になっているかも」と感じるときも同じように立ち止まってみて。そんなあなたには、この言葉をおくりたい。

  • 「世間という人はいない(=個人に分解して考えよう)」
  • 「感染者は被災者(=適切な医療や援助が必要)」

それにもし、コロナに感染した人が自粛警察や差別を恐れて感染を隠したらどうなるでしょうか。過剰な言葉や振る舞いは、自分や家族が感染する確率をかえって高めるかもしれませんよ。

同調圧力に関する本を読もう

本屋さんや図書館へ行くと、「同調圧力」について書かれた好著がいくつも並んでいます。立ち止まって考えたり、異なる視点に目を留めたりするときのヒントになります。『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』(鴻上尚史・ 佐藤直樹 共著/講談社現代新書)など、コロナ禍における日本の社会現象を読み解く本も出ています。

Amazon.co.jp: 同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか (講談社現代新書) eBook: 鴻上尚史, 佐藤直樹: Kindleストア

あるいは「隣組」とか「大日本婦人会」で検索してヒットした本を読んでみる。市民が相互監視する社会がどういうものか、端的に見えてきますよ。戦争に疑問をもっていた人が「非国民」と呼ばれたり、「パーマネントはやめましょう」と私生活にまで介入されたり。うわー、同じ道を進んでいるジャンと背筋が寒くなります。難しい本じゃなくても読みやすい児童書がたくさんあるので手にとってみて。

それにしても、日本て弱者に厳しいですよねぇ。なんで被害者のせいにするんだろう。駅の貼り紙とかもそうじゃないですか。「盗撮に注意」とか。雨もりに注意と同じトーンでしょ。卑劣な盗撮野郎に警告しろって。

新型コロナもそう。感染した人が家に石を投げ込まれたり、引っ越しせざるをえなくなったり。おばあちゃんが切り盛りしている駄菓子屋さんが、「オミセシメロ」と貼り紙でいやがらせされたりね。でも大企業は、「ツウキンヤメロ」とは言われない。

異物扱いして排除しようとしているだけでなく、弱い相手・言いやすい相手をストレスのはけ口にしている感じ。そういう弱者をターゲットにする連中に対して、どういう態度をとるか、私たちも問われているような気がしますね。

あ、ストレスを溜めないようにお気に入りのお笑いを探すなど、気分転換も忘れずに。ちなみに「警察だ!」のコントは「頼む!開けてくれ!開けてくれるだけでいいんだ!あとはなーんにもしないから!」と警察が懇願し出すというオチ。溜飲も下がります。

そのほかの【サラマンダー華子の「育児のモヤモヤ相談室」】は

© Valed.press