大阪市廃止に、分割コストでまだまだ加熱中!『大阪都構想』勝手に歩きルポ(オフィス・シュンキ)

2015年5月17日以来、2回目の住民投票を11月1日に迎えるいわゆる「大阪都構想」。10月12日に告示になってからいよいよ、最終週を迎えています。私は、この間、反対派の集会、賛成派の街宣活動に、政党による住民説明会の現場に顔を出したりしながら、「都構想」の街の息づかい、をうかがってきました。その中で、この選挙が、ぼんやりした「都構想」から、名の通り、「大阪市廃止・特別区設置住民投票」になっていくのを目の当たりにした気がします。

9月22日に行われた「大阪のための緊急会議」と題する反対派の集会に、聴衆として参加した私は、約百人の反対派の方々の熱気をまず浴びることになりました。この時点では、まだ話題の中心は新型コロナウィルス。

「コロナと都構想 両立するか?」が話のメインとなり、8月のコロナ感染による死者数が「大阪は65名で、東京の32名の倍になった」ということを軸として、大阪府のコロナ政策から、二重行政を生み出さないために大阪市が動けない当時の状況を説明することで、「維新が進めてきた都構想が足かせになってる」と訴えていました。

正直、この時点では、遠い世界の話に私には聞こえました。『都構想とコロナを結びつけるのは、もうなんぼなんでも』という感じです。ただ、いくつか、心に結び目を作る声も、この会での質疑応答で拾えました。「投票率が下がると、維新の支持者が投票に行くだけになる」、あるいは「前回(2015年)の賛成投票者のうちの8割が、大阪市がなくなることを知らなかった」。

とくに、前者の、投票率が上がらなければ、都構想が実現する、という話は、目から鱗(うろこ)でした。投票率が下がれば、有利になるのは既得権益を持っている側、というのが私の理解でしたので、この反対派の会で、明確に「大阪維新の会」あるいは「日本維新の会」が、大阪で、その側にある、という見方があるのを初めて知ることになりました。

この会で、反対派が、どうやって大阪市民に伝えたらいいか、質疑応答でも対応に困っていたのが「大阪市がなくなる、が伝わっていない」ということでした。そして、私は、その反対派の心配が、思わぬ形で解消した、と思える現場に直面することになります。それは、反対派集会に参加してから、約一か月後の10月24日に、私が現在、在住している隣の兵庫県から大阪府へ足を踏み入れ、大阪市内の地下街に降りた時でした。

目に入ってくるポスター。今回の選挙を宣伝する、大阪市選挙管理委員が作成した投票を促すポスターなのですが、本来、目に強く入らなければいけない「行こう!投票」のキャッチコピーや豹の写真、投票日の「11月1日」の赤文字以上に、「大阪市廃止・特別区設置住民投票」の文字が、目に衝撃的に入ってきました。

公式のポスターなのですから、公平中立。しかし、この「廃止」の文字をどう捉えたら、でした。投票率を上げるための、前向きな感覚が求められるはずのポスターに「廃止」というネガティブととられても仕方のない文字がある不思議。それが、大阪市とつながって、ポスターの文字となっているのですから、正直、驚きました。

インパクト十分だったのですが、それは、私にとっては、デザインというよりも、文言によるものでした。通称「都構想」といわれていたものの、投票で問われるべきことを端的に表した文字群。反対派が一か月前に危惧していた、「大阪市がなくなるが伝わっていない」は、このポスターが、大阪市内を走る地下鉄やバスをはじめ、公共のあらゆる場所に貼られていることで、なくなった、と、思わざるを得ませんでした。

ポスターに衝撃を受けたその足で、賛成派の有志が、住之江区で催した「都構想ウォーク」に参加してみました。南海電鉄の「粉浜」駅から、地下鉄四つ橋線「玉出」に至るまで、約2時間のウォーク。日本維新の会からは、東京都の区議らが参加して、約30人での街頭活動でした。

2か所のスポットで、「都」である東京都の区議は、横浜市の水道料金を12パーセント挙げる方針、神戸市の敬老無料乗車券の廃止、京都市の来年度予算500億円不足の見通し、など、ここ最近の政令指定都市で起こった出来事を並べることで、大阪市が「政令指定都市」にこだわる必要がないことをアピールし、住民サービスの低下など起こりえないことも丁寧に説明。

この東京都の区議は「住民サービスに関して東京都と大阪府の財源では、スケールが違いすぎますよね。そこを、反対派の方に言われればどうするのですか?」の私の質問に、「現実に東京都は(財源で考えると)特別ですからね」と、現在、この財源の格差に関する確実な反証情報を持ち合わせていないことも正直に語られていました。

同じ日。今度は、自民党大阪府連が主催する「住民説明会」に取材参加しようとしたのですが、手違いもあって、会場の中には入れていただけませんでした。しかし、会場内で配られた資料は受付でいただけたのと、ネットでの同時配信があったことで、会場外でパソコン画面とにらめっことなったにもかかわらず、大事には至らず、でした。ただ、「記者クラブに通知を出している」と、既存メディアだけ、という自民党大阪府連の姿勢には、いろんな意味も含めて「なるほどな」と思ったことは付け加えておきます。

この説明会で示された、前回と今回の投票用紙の変更も驚きました。前回の「大阪市における特別区の設置についての投票」と書かれている部分が、「大阪市を廃止し特別区を設置することについての投票」となり、「特別区の設置について賛成の人は賛成と書き」の部分が、「大阪市を廃止し特別区を設置することについて賛成の人は賛成と書き」と変わっていました。「大阪市を廃止」が一枚の投票用紙の中に、今回は2度出てきており、これも「ポスター」と同じく、インパクトを感じさせてくれるように私は感じました。

大阪市選管のWEBページより

この説明会では、大阪市4分割によるコスト増(約200億円)も示されましたが、この数字とほぼ同じ数字が、10月26日の一部新聞上で「市分割コスト218億円増」と、大阪市財政局の試算として紹介がなされ、終盤になって「市分割コスト」が論点として加わっています。共同部署の「副都心推進局」は試算の提示はしておらず、私の眼には、大阪市役所内部での主導権争いが大切な局面で表面化したように映っています。

前回の投票が否決となったことで、政界から引退した元大阪府知事で、元大阪市長の橋下徹氏は、この報道を受けて、27日のツイッターで「この数字は、燃費の悪い大排気量車(大阪市)を、その仕様のまま4台にする場合(分市案)のもの。それではだめだということで燃費のいい環境適合車(特別区)4台にしたのが大阪都構想だ」と反論。それ以後も、橋下氏は断続的にツイッターを更新し、『誤報』であることを訴え続けるなど過熱。賛否拮抗しての終盤。結果はいやでももうすぐ出るのです。(オフィス・シュンキ) 
 
 

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