【一変したスイッチOTC検討会議】今後はドラッグストアも参画か

【2020.10.30配信】10月28日、厚生労働省は医療用から一般用医薬品への転用を話し合う「第12回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(スイッチOTC検討会議)を開催した。第12回の模様を一言でいうならば、「一変した」といっても過言ではない。現実的な推進へ舵を切った。政府の規制改革実施計画に対する対応については、ほぼ異論が出ず、これまでスイッチの可否を握ってきた検討会が、スイッチ促進へ向けた課題解決案を話し合う場へと姿を変える見通しとなった。一般用医薬品における服薬フォローアップや医師への情報フィードバックなどが課題として話し合われる見込みだ。

「流通・販売の関係者」委員を追加

規制改革実施計画ではスイッチOTC検討会議について、「評価検討会議の役割は、提案のあった成分のスイッチOTC化を行う上での課題・論点等を整理し、薬事・食品衛生審議会に意見として提示するものであり、スイッチOTC化の可否を決定するものではないことを明確化する」と記載されていた。これに対し、事務局は、「評価検討会議では、要望成分のスイッチOTC化を行う上での課題・論点等を整理し、評価検討会議としての意見をまとめ、薬事・食品衛生審議会に意見として提示することとし、可否の決定は行わないこととする」との対応案を示した。

全会一致をルールとし、医療側の反対意見によって否決を連発、スイッチが停滞してきたスイッチOTC検討会議は姿を変えることになる。

対応案では、「多様な意見があり集約が図れない場合は、それらの意見を整理して提示することとする」とし、決定権ではなく、「意見」の提示にとどまることになる見通しだ。 また、メンバーのドラッグストア関係者も加わりそうな気配だ。

実施計画では「消費者等の多様な主体からの意見が反映され、リスクだけではなく必要性についても討議できるよう、消費者代表を追加するなどバランスよく構成されるよう評価検討会議のメンバー構成を見直す」としていたが、これに対し、対応案は、「より多様な主体からの参加を求めることとし、消費者代表をはじめ、産業界や流通・販売の関係者などから複数名の委員の追加を行う」と示した。一般用医薬品にかかわる「流通・販売の関係者」に、現在の一般用医薬品販売の過半を担っているドラッグストア産業が含まれないことは考えにくい。場合によっては薬粧卸産業も、メンバーに追加される可能性がありそうだ。

検討会の意義は「課題の解決策を議論」

では、可否に権限のなくなるスイッチOTC検討会議の意義は何なのか。

具体的には、現在の構成委員から、治療中断者や治療の必要な人がOTC医薬品を購入した場合に、医師への情報フィードバックを含めて医師と薬剤師の情報連携が重要になるとの指摘がされている。そこにおいては、ICTの活用により、薬剤師が検査情報を共有することも有効だが、個人情報を保護した上での共有は不可欠ではないかとの意見が出ている。

こうしたシームレスな情報連携の在り方も議論の俎上に上がりそうだ。

都道府県ごとの販売実態結果の精査も

このように、これまでの停滞感から、推進ムードに一気に変容した検討会議においては、やはり“強い政府”の存在を感じずにはいられない。

同時に、より実践的な議論に入っていく可能性が高いことから、担い手である薬局、薬剤師側から具体的な改善策の提示を求められる場面が多くなることが想定される。

例えば日本薬剤師会常務理事の岩月進氏は、かねてから批判を受けてきた不十分な一般用医薬品の販売実態について、「具体的にどこが悪いのかを指摘する必要がある」と話し、都道府県別の精査に踏み出す考えを示した。

これらは、場合によってはドラッグストアの企業ごとの分析などにつながる可能性もあるのではないだろうか。

ドラッグストア産業が仮に検討会に参画していくとすれば、それは主張と同時に、責任が求められる場面にもなることが想定される。

検討会で挙げられた「PPI」「血圧の薬」

スイッチOTC促進が現実味を帯びるにしたがって、推進後の具体的なビジョンを組み立てておく必要もありそうだ。

例えば日本OTC医薬品協会は、「OTC医薬品の具体的な領域・範囲の考え方」の中で、「PPI」や「血圧の薬」が該当すると述べている。これらの医薬品がスイッチ化されるとしたら、どのようなリスクがあり、リスク軽減のためにとるべき対策案にはどのようなものかを検討・構築する必要があるだろう。

構成委員からは「メーカーの講習を必須化する」、あるいは「時間経過とともにネット販売できる第1類薬に移行する枠組みから除外する」といったアイデアが出されている。

今回の検討会議の議論でも提示されている通り、OTC医薬品利用者には少なからずの治療中断者もいると考えられ、その溝をつなぐ機能発揮は十分ではない現状がある。そうであるならば、医療用医薬品、つまり、治療とのかけ橋の役割を果たせる存在としてもOTC医薬品の意義を見直し、医療用医薬品で義務化された服薬フォローアップの実施を含め、“渡しっぱなし”ではない関りを店頭ができれば、国民へのQOL向上に資する意義は大きいと考えられる。

検討会議は年内の中間とりまとめを目指して、当初予定よりも実施回数を増やし、年内にあと2回開催される予定。

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