年賀はがき発売の日に

 昔の週刊誌で、コピーライターが出したお題に読者がキャッチコピー(宣伝文句)を付けるという人気コーナーがあった。その秀作集で、お題「年賀状の言葉」に応えた、楽しい1作を見つけた。〈昨年はご厚情をいただいた気がしません。本年はよろしく〉▲普通は〈ご厚情を賜り、御礼申し上げます〉だが、もらう方は案外、読み飛ばすかもしれないし、クスっと笑うかもしれない。いたずら心が利いている▲当方の文面といえばありきたりだが、思えば一工夫、ひとひねりした年賀状を数多くもらった覚えがある。「出すのが当たり前」の時代には、時間と労力を賀状に注ぎ、ひと味加えるのも“慣例”だったのだろう▲年賀はがきの販売がきのう始まった。発行枚数は19億4千万枚で過去最低と見込まれ、40億枚を超えた2000年代の半分にも及ばない。新型コロナで企業の業績が悪化し、広告用の利用が減るためだという▲近年は高齢の人が出すのを辞退する向きも強い。「寄る年波を感じ、来年からは…」と記したはがきを知人らに送ったという話も身近に聞いた。「年賀状離れ」は時代を映す▲年賀状を出す人も出さない人も、来年こそはコロナ禍が終わり平穏な1年にと、心につづる思いは同じだろう。壁の暦は薄くなり、願いは膨らんで厚みを増す。(徹)

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