【新型コロナ】緊急事態宣言後「接触」も2割に激減 GPS情報から導き出した初の研究結果 年収と接触減少率に半比例の関係も

東京大学、東北大学、大阪市立大学、ヤフーなどの研究グループは、携帯電話の位置情報(GPS情報)を用いて、東京でのコロナ禍の外出自粛や緊急事態宣言の効果を検証し結果を発表した。GPSを用いた人出の計測だけでなく、複数のデータを用いて接触率について検証しているのは初めての成果だ。

緊急事態宣言で「接触率」も2割に削減

成果を発表したのは、東京大学 生産技術研究所の関本義秀准教授、矢部貴大 短期来訪国際研究員(アメリカ・パデュー大学 博士課程)、ヤフー株式会社、東北大学の藤原直哉准教授、大阪市立大学の和田崇之教授、アメリカ・パデュー大学のSatish V. Ukkusuri教授らの研究グループ。

ヤフーがユーザー同意のもと取得した人々の携帯電話(スマートフォン)の位置情報を解析、時々刻々の都市全体での「接触率」を算出した。接触率は、まず100mの距離圏内に30分以上滞在したユーザー数の平均値と定義。コロナ禍以前の1月平日の平均値に対する割合と比較した。東京都にて発生した日々の新規感染者数からCOVID-19の実効再生産数も推定し、これらの関係性も調査した。

東京都市圏での人々の接触率(Contact Index)の変動を示したもの。緊急事態宣言を経て平時の2割程度まで減少していることが確認された。
推定されたCOVID-19の実効再生産数と接触減少率の非線形な関係性が確認された。
E)平時において接触数の高い地域ではより大きな減少率が観測された。F)平均所得と緊急事態宣言後での接触率には負の相関がみられた。

結果、緊急事態宣言が発令される前の3月初週時点で人々の自宅外での接触率は平時の6割程度に減少し、緊急事態宣言を発令したことで4月中旬での接触率は平時の2割程度まで抑えられていたことが示された(図A)。また、接触率の減少には東京都内で地域差があり、平均所得の低い地域では高所得地域に比べて接触減少率が低かったことも明らかにされた(図E、F)。さらには、接触減少率が高いほど実効再生産数も抑えられるが、接触減少率が70%程度以上の場合、実効再生産数の抑制も限定的であることが示唆された(図B、C)。

研究グループでは「流行の第二波、第三波が予想される中、どの程度人々の接触を抑制するべきかについての定量的なエビデンスを示した点に意義がある。本研究成果は、今後の政策決定に大きく貢献するものと期待される」としている。

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