TCRデンマーク最終戦:FK8ホンダ・シビック・タイプR TCRのジェンセンが初代王者に輝く

 10月10~11日にパドボルパークでの開催が予定されていた第4戦が急遽キャンセルとなり、10月23~24日にFDMユランズリングで開催されたTCRデンマーク・シリーズ最終戦は、ポールポジションから2勝を挙げた開幕勝者のキャスパー・H・ジェンセン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/マッシブ・モータースポーツ)が、初代シリーズチャンピオンに輝いた。

 欧州モータースポーツ・シーンの先陣を切り、6月20~21日という早い段階での開幕戦実施に漕ぎ着けた創設初年度シーズンのTCRデンマーク。しかし、10月初旬に予定されていた第4戦は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの第2波拡大の影響を受け、サウス・ユトランド警察から「デンマーク国内での50人以上を集客するイベントの自粛に抵触する」との通達がなされ、デンマークのモータースポーツ連盟DASU(Danish Automobile Sports Union)の交渉も虚しく、キャンセルの決定が下されていた。

 これにより第4戦にしてシーズン最終戦となったFDMユランズリングでのイベントは、予選から決勝3ヒートを争うフォーマットを採用。シリーズ初代ウイナーであり選手権首位のジェンセンに対し、ランキング2位のマーティン・アンダーセン(ヒュンダイi30 N TCR/アンダーセン・モータースポーツ)や、同3位の若手ニコライ・シルベスト(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR/LMレーシング)がどこまで巻き返せるか。

 そしてシルベストのチームメイトを務める元F1ドライバーのヤン・マグヌッセン(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR/LMレーシング)が、TCR規定初勝利を飾った前戦の勢いを持ち込めるかが焦点となった。

 するとレース1に向けた予選から、その予想どおりの展開で週末の幕が上がり、シルベストを0.653秒、マグヌッセンを0.898秒差と、LMレーシング勢を退けたジェンセンが幸先良くポールポジションを獲得する。

 そのままスタートでも悠々ホールショットを奪ったFK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRは、レース序盤こそ背後のシルベストに再三のアタックを受けディフェンスを強いられるも、中盤を過ぎた頃にはフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRを突き放しセーフティマージンを構築。

前戦でTCR規定ツーリングカー初勝利を飾ったヤン・マグヌッセン(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR/LMレーシング)は、3位、3位、2位で初年度最終戦を締めくくった
若手有望株ニコライ・シルベスト(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR/LMレーシング)は、ランキング3位でシーズンを終えている

■タイトル獲得のジェンセン「この週末も本当にすべてがうまくいった」

 ジェンセンが13周を走破してタイトル獲得へ近づく最初の勝利を手にし、2位にシルベスト。さらに序盤は4番手グリッドにいたミカエル・マルクセン(プジョー308 TCR/マルクセン・レーシング)に先行されながらも、終盤にポジションを奪還したマグヌッセンが3位に続き、予選グリッドそのままの顔ぶれがポディウムに上がった。

 続くレース2は前戦トップ8のリバースグリッドが採用されるが、ポールシッターとなったマイケル・カールセンのプジョーがまさかのストール。これで労せず首位を手にしたジェイコブ・マティアセン(アルファロメオ・ジュリエッタTCR/インサイト・レーシング)が、後方の集団バトルを尻目にリードを広げていく。

 ヒュンダイのアンダーセン、プジョーのマルクセン、そしてホンダのジェンセンと4台での鍔迫り合いを演じたマグヌッセンは、2番手アンダーセンに続き連続の3位表彰台を獲得したものの、ジェンセンがタイトルを獲得するのには4位のスポットで充分との判断もあり、そのまま12周のチェッカー。

 続くレース3もポールから出た優位性を活かしジェンセンが週末2勝目を飾ると、2位にマグヌッセンが入り、北米の耐久スポーツカー・シーンでも活躍を演じてきた大ベテランが週末全ヒートで表彰台を獲得。3位にキャスパー・エルガード(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/TPRモータースポーツ)が続く2020年最終レースのリザルトとなった。

「今季は最初から素晴らしいシーズンが送れていて、この週末も本当にすべてがうまくいった。チーム、スポンサー、JASモータースポーツの多大な努力に感謝したい」と、全15戦で4勝12回の表彰台を獲得し、初代TCRデンマーク王者となったジェンセン。

 2021年に向け、ジェンセンはすでにマッシブ・モータースポーツとの契約延長を発表しており、マグヌッセン擁するLMレーシングは、新型『クプラ・レオン・コンペティションTCR』へのスイッチが決まっている。

レース3のスタートではマーティン・アンダーセン(ヒュンダイi30 N TCR/アンダーセン・モータースポーツ)らが絡むアクシデントも発生
「すべてのサポートを得て、この成果を成し遂げられたことを誇りに思う」と初代王者キャスパー・H・ジェンセン

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