【調剤報酬改定2022】薬局現場から伝えたい“社会に評価される業務”とは

【2020.10.30配信】今春に行われた「調剤報酬改定2020」から早6カ月が過ぎた。薬局現場ではすでに、次なる「調剤報酬改定2022」に向けた議論がスタートしている。ある薬局は、「医療的ケア児(者)へのサポート体制の確立」に向けた薬局への評価の必要性などを指摘する。「機会があれば厚労省に提言したい」とする。

手が行き届いていない「医療的ケア児(者)」

薬局の評価の在り方について話を聞いたのは、広島市を中心にすずらん薬局を展開する株式会社ホロン会長の古屋憲次氏。「在宅医療や地域コミュニティー活動など、これまでに長年取り組んできた中から、地域包括ケアを推進する上で薬局が果たすべき役割は多い」と指摘する。

「それらを実践し薬局の社会的存在意義を示すため、喫緊の社会的課題である『医療的ケア児(者)へのサポート体制の確立』、『疾病予防・重症化予防・介護予防・健康寿命延伸における薬局の総合力の活用』、またそれらを継続的に行える『薬局の評価のあり方』などが必要だ」と話す。

医療的ケアを必要としている患者が「どこに」「どのような環境でいるか」を可視化した、“サポートマップ”を自治体ごとに作成し、行政、医師会、薬剤師会等が連携することで、支援体制を拡充すべきと指摘する。まだまだ手を差し伸べられてきれていない患者がいるのではないかとの懸念からだ。

多くの薬局が支援に当たる上で障壁となるのは、患者1人につき3〜4時間以上もかかることがあるにもかかわらず、負担に応じた報酬が得られないことを挙げている。

そのため、「医療的ケア児(者)加算」といった報酬項目の新設を要望している。
そのことで、希少な薬剤を取り揃えなければならず、しかも期限切れとなってしまうことも少なくないといった薬局の経営的な負担も、いくらかは軽減することができると考える。

医療的ケア児(者)だけでなく在宅緩和医療など、きめの細かな支援をしようとすればするほど、経営的負担は重くなる。報酬制度とは別に、地域ごとに国や自治体製薬企業等と連携した「在宅拠点薬局」を全国的に構築し医療材料や特殊薬剤などの供給を円滑にし、社会資源の無駄をなくすことも以前からの古屋氏の考えだ。

また、自然災害時やパンデミック等に備えたさまざまな備蓄も「流通備蓄体制の整備」に行政や医薬品卸とともに薬剤師会としても関わっていくことで社会に認められるのではないかと考えているという。

さらに、「医療ケア“児”」に焦点が絞られすぎると、一定の年齢を超えた途端に支援が届きづらくなるとの懸念から、「医療的ケア児(者)」という広い概念での制度設計が不可欠であることにも触れている。無菌製剤の乳幼児加算についても同様という。

胃ろうからの薬剤注入などきめの細かな対応が求められる医療的ケア児(者)<写真はすずらん薬局提供>

居宅療養管理指導に関する厚労省令に「栄養士」追加を

2つ目の「疾病予防・重症化予防・介護予防・健康寿命延伸における薬局の総合力の活用」については、このいずれをとってみても、管理栄養士の持つ職能が果たす役割は大きく、実際に薬局の管理栄養士が活躍する場が増えているという。

例えばすずらん薬局では、早い時期から在宅療養現場に管理栄養士が出向き栄養指導を行ってきた。多くの医師やケアマネージャーなどと連携しながらの活動で、多職種からの信頼も得てきた。実際に在宅の現場や地域で活動できる管理栄養士は現状では少なく、地域包括ケアを推進していく上で薬局の管理栄養士の活用は欠かせない。

また、薬局が行っている健康教室や測定会などの場で、薬剤師とともに測定結果によって個別食事指導などを行っている。腎臓に疾患がある人に向けた特殊食品を使った料理教室やレシピ紹介などでも管理栄養士は活躍している。それが行政と連携した糖尿病予防事業へと発展し、今年度からは広島市の「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施事業」につながっている。

全国的にも栄養士がいる薬局は増えており、予防事業に欠かせない存在になっている。薬局の新たな機能・事業としての可能性を秘めている。

訪問栄養指導も実施している<写真はすずらん薬局提供>

「薬局は組織として対応している」「薬局の評価は機能と実績で」

在宅での緩和医療や医療的ケア児(者)や健康サポート薬局としてさまざまな活動を継続していくには多くの人的・経済的負担が必要である。

以上のような考えから、まずは薬局に求められる機能を定義し、その機能を提供しているか否かによってポイント制などを導入することも一案なのではないかとする。

「在宅医療への参画、緩和ケアへの従事、医療的ケア児(者)へのケアなど、薬局に求められる機能をK P Iとして複数設定し、必ず必要な項目、個別評価項目に分け、ポイント制にして評価する方式にしてはどうか」と提案している。

「地域の状況によって求められる機能は異なる。地域ニーズに応じて、薬局ごとに特徴があってもいいのではないか」(古屋氏)と指摘する。

評価されるべき「対人業務」とは何なのか

国は、薬局に対して、「モノからヒトへ」をキーワードに、医薬品を中心とした対物業務から患者を中心に据えた対人業務へのシフトを迫っている。今後、薬剤を取り揃える「調剤料」への報酬は逓減させていく方針だ。

すずらん薬局(広島県)

すずらん薬局を展開する株式会社ホロン会長の古屋憲次氏

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