【社説】SDGsと学校

◆地球共生への実践進めたい◆
 「世界の人々が幸せになって一緒に笑い合えるように」「私にも世界に貢献できることがあるのではないか」―。国連が掲げる持続可能な開発目標「SDGs」について10~11月、探求している宮崎市の清武中3年生が書いたアンケートの一部だ。
 同校の太田京子教諭が、国際協力機構(JICA)デスク宮崎に助言を仰ぎ指導案を作成。太田教諭は「10こまという時間で内容を掘り下げるのは限界がある。しかし、一瞬でもいい。外国の貧しい子どもたちのこと、社会貢献について懸命に思いをはせてくれたら。その経験が将来、何かにつながることがあるかもしれないという願いを込めている」と意図を話す。
 SDGsは達成期限の2030年までに「あるべき未来像」を実現するため、今やるべきことを考えて行動するという考え方だ。同校では「貧困をなくそう」「海の豊かさを守ろう」など17の目標や現状の紹介から始まり、生徒自ら関心のあるテーマを選んで身近な生活での行動の変化を目指す。途上国のワクチン接種を支援するペットボトルのキャップ回収運動など、身近にできる国際協力の大切さに改めて気付く生徒もいた。
 ただ、県義務教育課によると、県内の公立小中学校ではこうしたSDGs全般について学ぶ取り組みはまだ少数という。「17の目標のうち環境教育は、理科や総合学習などを使ってどの学校でも進んでいるが、部分的で個別的なもの。SDGsの全ての視点をトータルで学ぶまでは至っていない」と同課。
 新学習指導要領の前文には「持続可能な社会の創(つく)り手」を育成するとの文言が盛り込まれた。環境破壊、貧富の格差、紛争や暴動など、次世代が直面、または差し迫る地球規模の問題が山積している中で、教育現場での取り組みはますます重要になる。誰もが安心して暮らせる平和な社会や地球環境を築くため、SDGsを深める教育実践を活性化させてほしい。
 新型コロナウイルスの感染拡大による一斉休校で、子どもたちは教育機会を奪われた。親の就労・経済状況が激変し、貧困が深刻化した家庭も少なくないだろう。足元の生活の揺らぎが社会への関心につながり、新たな学びや思索を生み出すきっかけになることを期待したい。
 JICA九州市民参加協力課の上島篤志さんは「コロナ禍は先進国にも大きな苦境、打撃となったが、実は途上国では貧困などはごく日常のこと。途上国の現実を知り、日本社会を見直す機会でもある」と話す。世界規模の感染症の危機に直面する今だからこそ、地球市民としての感覚を磨き、共生の道を探す責務が増している。

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