読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、43歳、法人職員の女性。夫の給料が一部歩合制のため、家計管理が難しいという相談者。家計を安定させ、教育費や老後資金を効率よく貯めるには? FPの秋山芳生氏がお答えします。
収入の一部が歩合のため月の家計簿管理が難しいです。家計簿管理を安定させたい。また教育費と老後のために貯蓄する方法を知りたい。
【相談者プロフィール】
・女性、43歳、法人職員、既婚
・同居家族について:夫(49)、住宅メーカー社員、固定給プラス歩合制、手取り13万円~60万円ぐらいでばらつきあり。子ども13歳、17歳
・住居の形態:持ち家(戸建て)
・毎月の世帯の手取り金額:50万円
・年間の世帯の手取りボーナス額:100万円
・毎月の世帯の支出の目安:46万3,000円
【毎月の支出状況】
・住居費:5万円
・食費:5万7,000円
・水道光熱費:1万8,000円
・教育費:6万円
・保険料:7万円
・通信費:2万2,000円
・車両費:5万6,000円
・お小遣い:3万円
・その他:10万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:0
・現在の貯蓄総額:130万円
・現在の投資総額:0
・現在の負債総額:800万円
・ボーナスからの年間貯蓄額:35万円
秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー 兼 FPYouTuberの秋山芳生です。収入に変動がある中、家計簿の管理と、教育費・老後の資産形成についてどうしたらよいかというご相談ですね。
ご主人が、固定給+歩合の給与形態なのと貯蓄が少ない状況ですので、「今月はいくら使えるかわからない」と不安になりますよね。一旦俯瞰して家計全体を見て、年間収入が最低でもいくらもらえるかを、過去の経験から割り出して、月あたりの平均を出していくしかないと思います。ご相談者さまは法人職員ですので、ご収入は安定していると思います。ご夫婦合わせての収入が平均50万円ほどになるということは、ざっくり25万円ずつとして考えていきたいと思います。
現在の貯蓄が130万円、一方で負債が800万円なので、借入の方が大きい状態にありますね。負債の内訳はわかりませんが、持ち家でありながら住居費があり、また車両費が5万6,000円あることから、住宅ローンと、マイカーローンがあるものとします。また、保険料、通信費、車両費が高いのでこの辺が見直しの肝になってくると思います。
それでは、一つ一つ見ていきたいと思います。
家計管理にはアプリを推奨
家計簿の管理方法は、家計簿アプリを使われると良いと思います。家計簿アプリは、手入力で一つ一つの情報を入力するタイプもありますが、銀行やクレジットカードの利用履歴を自動で集計して、費目ごとに振り分けてくれるタイプが良いでしょう。家計簿アプリを活用しながら、現金を使わずカードや電子決済を利用したキャッシュレスで生活できるとより家計簿管理の精度を上げることができます。金融機関の口座にひもづくので、利用するサービスのセキュリティ体制やプライバシーポリシーはしっかり把握しましょう。
アプリによって自動で家計簿がつけられるようになっても、「費目が間違って仕分けされる」ことは往往にしてあるので、月に2、3回は費目の仕分けをすると、家計簿の振り返りにもなり、何にいくら使っているかがわかり、改善のポイントが見つかるでしょう。
また、支出の中で「その他10万円」とのことですが、この中に、日用品、衣服美容、交際費、健康医療、旅費交通費なども含まれていると思います。こちらは、費目ごとに細かく管理できると無駄なポイントが見えるでしょう。
支出の改善ポイント、まずは保険料から
平均の月収入が50万円に対して、支出が46万3,000円は支出が大きすぎると思います。食費5万7,000万円は高いということもないので他の支出から削れそうなところを探したいですね。そのほか特に高いと感じるのは保険、通信費です。保険については、7万円とのことですが、死亡保険、医療保険に加えて貯蓄型の保険に加入していると思います。
仮に、死亡保険と医療保険で1万5,000円として、5万5,000円ほどの貯蓄型の保険に入っているのではないかと想定します。借入が800万円ある中で、おそらくそれほど増えないであろう貯蓄系の保険に入る必要はないと思います。
例えば、ドル建て変額終身保険などで、予定利率3%とうたった商品もありますが、実質の金利になおすと0.5%前後の金利しかないことが多いです(予定金利は、保険会社が保険料の一部を運用しているため、実質の金率になおすと少なくなります)。その横で、カーローンが仮に2.8%ぐらいすると、「逆ザヤ(保険の運用の利息よりも、借入の利子の方が大きいので差し引きすると損している状態)」になってしまいますので、保険の積み立てをやめてカーローンの返済に充てた方が良いかもしれません。貯蓄系の保険は途中解約すると、解約返戻金が元本を割ってしまうことが多いので、解約返戻金の表を取り寄せてから損切も含めて解約を検討し、返済を優先した方が良いと思います。
携帯代は家族で下げることができれば大きな改善に繋がる
通信費も、携帯電話、Wifi、NHKなどの費用がかかるかと思いますが、格安SIMなどに切り替えることで下げられるのではないでしょうか。現在の契約プランはわかりませんが、仮に5,000円ほどの携帯料金が、夫婦で2台と17歳のお子さんの携帯で3台あるとすると、1万5,000円になります。これを、格安SIMなど3000円以下のプランもあると思いますので、家族で変更すると、それだけで月に6,000円支出が減ります。年間で7万2,000円と考えると大きな変化になりますので、見直しを検討されると良いでしょう。
自動車ローンはできるだけ早く返済を
続いて自動車ですが、車の残債がわからないので正しく回答できませんが、毎月5万6,000円車にかかっているとするとローンがあると思われます。先の貯蓄型保険を解約して、できるだけ早く返済した方が良いと思います。また、車両保険に入っている場合は解約をして月のキャッシュフローを軽くするということも考えられますね。
教育費は聖域化しやすいものの…
教育費に6万円とのことですが、年間で72万円かかっているのですね。17歳ということで受験などの費用がかかっているのでしょうか? ここは聖域化しやすい費目ですが、減らせるポイントが無いかを検討ください。ただお子さんの将来を考えるとなかなか手を入れずらいところなので、先に上げたような改善可能な費目を集中的に変えていくことが重要になると思います。
老後資金はどう貯めていく?
老後費用については、現在貯蓄が少ないので、第二子の大学費用を支払ってから貯めていくことになるでしょう。先に挙げた固定費の見直しをして、確定拠出年金などの税制優遇制度を活用していくことが最良と思います。貯蓄と投資のバランスをとっていくと良いと思います。
年金制度の変化によって、年金は65歳以降の受給にして繰り下げれば、1カ月繰り下げるごとに0.7%受給額が増えます。70歳ほどまで繰り下げることを考えると、その間の生活費は稼いでいかないといけませんので、仕事やアルバイトはできるだけ長く続けられるとよいと思います。
住宅ローン返済で気をつけたいこと
最後に住宅費5万円ですが、こちらは住宅ローンの返済額でしょうか?ご収入に対して住宅費が高すぎるということはないと思いますが、一点注意が必要になります。ボーナス100万円から手残りが35万円ということは、住宅ローンの支払いにボーナス払いが設定されていませんか? 住宅ローン破綻の大きな要因は、ボーナスがカットされてボーナス払いが滞ることで起こりがちです。現在の住宅ローンの金利にもよりますし、借り換え手数料も発生する可能性があり損得の計算が必要になりますが、ボーナス払いをしているようであれば住宅ローンの組みなおしを検討してもよいかもしれません。
以上、全体的にメタボ家計だと言えます。しっかりと、ご夫婦で家計把握の習慣をつけられるとともに、各支出ポイントをいしっかり改善していくと、より良い未来が描けると思います。以上、ご参考になれば幸いです。