「炭酸ガス」起源は恐竜? 野母崎温泉を調査 長崎大大学院生

温泉水とガスを採取する成冨さん(右)と利部准教授=長崎市野母町

 温泉に含まれる「炭酸ガス」の起源は恐竜かもしれない-。長崎市南部に位置する野母崎温泉について、長崎大の大学院生がロマンあふれる調査を進めている。これまでに同温泉の詳しい研究報告はなく、調査協力する京都大大学院地球熱学研究施設の大沢信二教授(諫早市出身)は「非火山性の炭酸温泉の起源に関して新たな発見が期待できる」としている。年度内には調査結果が出る見通しだ。
 同温泉は二酸化炭素を多く含む天然の炭酸温泉。神経痛や関節痛などに効能があるとされている。今回、調査に着手したのは長崎大大学院水産・環境科学総合研究科2年、成冨真由さん(24)。10月下旬、環境科学部の利部(かがぶ)慎准教授らと現地を訪れ、源泉井戸からガスと温泉水を採取した。
 ガスの成分は大沢教授の研究施設と東京大の研究施設で分析、温泉水の分析は別の機関に依頼する予定。温泉水に付随する二酸化炭素やヘリウムの同位体比などのデータを基に起源を解明していく。
 大沢教授によると、野母崎温泉に含まれる炭酸ガスの起源として想定されるのは大きく分けて二つ。一つは地殻変動に伴い発生した「変成岩」由来、もう一つは埋没した動植物など有機物の分解によって発生した「堆積岩」由来だ。
 野母崎地区では、2004年に初めて草食恐竜の化石が見つかって以降、多様な恐竜の化石が次々と発見されている。今回のデータが、仮に堆積岩由来に分類された場合、起源となる堆積物中に恐竜の死骸が含まれていても「不思議ではない」とする。
 また、かつて炭坑で栄えた端島(軍艦島)や高島が近くに存在する立地にも着目。「炭田が何かしら関係している可能性もある」との推測も示す。
 同地区を巡っては、1月から休館中だった市の温泉宿泊施設が7月に民間業者に譲渡された。現在、リニューアル工事中で来春に新施設が開業予定。来年10月には市恐竜博物館の開館も控えている。
 過疎地域の活性化に向け、一連の動きを「最後のチャンス」と捉える住民は少なくないという。成冨さんは「野母崎温泉の知られざるヒストリーが分かり、その結果を地域に還元できればうれしい」と話す。

リニューアル工事が進む温泉宿泊施設(白枠)と来年10月に開館予定の市恐竜博物館周辺(赤枠)。温泉や恐竜を生かした地域活性が期待される=長崎市野母町

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