社説[学術会議任命拒否]矛盾に満ちた首相答弁

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 菅義偉首相が行った初の所信表明演説に対する衆参両院の代表質問が終わった。日本学術会議の会員候補任命拒否を巡り、ようやく首相が国会の場で説明したが、到底納得いくものではなかった。

 首相は、学術会議の推薦によるとされる会員任命を「必ず推薦通りに任命しなければならないわけではない」と従来の説明を繰り返した。

 加えて、学術会議の会員構成を「旧帝国大学に所属する会員が45%」「民間出身者や若手が少なく偏りがある」などと強調。「多様性を念頭に判断した」と、任命拒否の正当性を主張した。

 それなら、なぜ元々少ない女性や私大所属の候補を拒否したのか。拒否された6人の中には会員が1人もいない大学の研究者も含まれ、首相の説明は矛盾に満ちている。

 法律の定める会員の選考基準に所属大学や地域性の規定はない。首相が、学術会議に「多様性」が必要と考えたなら、直ちに任命拒否するのでなく推薦の在り方を学術会議と議論すべきだった。

 政府は1983年、会員の推薦制度について「政府が行うのは形式的任命」と国会答弁していた。2004年の制度改正の際も、内部文書で「首相が任命を拒否することは想定されていない」と明確に記載している。

 首相が従来の法解釈を逸脱して任命拒否したことは明白だ。だが首相は、その理由を最初は「総合的、俯瞰(ふかん)的に」と曖昧に語り、国会では「多様性」を持ち出した。後付けの理由で切り抜けようとしている印象を拭えない。

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 首相は26日のNHK番組で、この問題について「説明できることとできないことがある」と述べた。だが任命拒否は学問の自由を侵しかねないほか、首相による違法な権力行使が疑われる問題だ。

 政府は一貫して、任命拒否に当たり法解釈を変えておらず従来の立場と齟齬(そご)はないとするが、想定されていなかったことが今回できたのはなぜか。その説明は政府の責任だ。「説明できないこともある」で済ませてはならない。

 一方で政府は問題発覚後、国費10億円が投じられていることを理由に会議を行政改革の対象とした。年内に改革の方向性を打ち出すとして検討を加速している。

 会議の予算の多くは関係省庁から出向する事務局職員の給与などだ。その運営に問題がないかの検証は必要だが、それと任命拒否は別の問題である。論点のすり替えを許してはならない。

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 国会での論戦は、週明けから一問一答形式の予算委員会に舞台を移す。

 国民が聞きたいのは、6人の任命を拒否した具体的理由であり、「多様性」といった漠然とした説明ではない。首相としても、この問題で時間を取られるのは本意ではないだろう。

 首相は、拒否に深く関与したとされる杉田和博官房副長官も加え、予算委で丁寧に説明すべきだ。任命拒否問題を放置して携帯電話料金引き下げなどの「看板政策」を推し進めても、国民の目をごまかすためとしか映らない。