佐世保・相浦の広大な土地 行方は? 「土地改良区」解散へ 優良農地、利用進まず

解散する方針を固めた相浦土地改良区が所有する農地=佐世保市

 16年前、イオン九州(福岡市)の大型商業施設を誘致する計画が浮上し、市を二分する論争の舞台となった長崎県佐世保市相浦地区の広大な農地。当時、市は土地の商業利用を認めず計画は頓挫したが、その後も農地の活用は進まず、地権者組織の「相浦土地改良区」が2022年春までに解散する方針を固めた。土地活用の行方が、再び注目を浴びそうだ。
 農地は、市総合グラウンド(同市椎木町)の目の前にある。約40ヘクタール。地権者128人で構成する同改良区が管理する。国、県、市の支援を受け、1996年度までに約20億円を投じ「優良農地」として整備したが、農家の高齢化などで稲作面積は3割未満。残りは牧草地となっている。
 農地を転用し、イオン九州の商業施設を誘致する計画が表面化したのが2004年。当時、客足の分散を懸念する市商店街連合会などが反発し、賛否の論争が巻き起こった。06年、当時の光武顕市長が商業利用は認めないと表明し、事態は収束した。
 ただ、改良区はその後も水面下でイオン九州との協議を続けた。17年以降、先端技術を導入した「スマート農業」と商業施設をミックスした計画などを提案した。しかし、市は、農地の転用による開発は法的に困難と回答。昨年6月の市議会で朝長則男市長は「非常にハードルが高い」との認識を示した。
 改良区は昨年12月の役員会で、22年春までの解散に向けて準備を進める方針を決定した。今後も農地の活用が見通せないほか、土地改良法の改正で22年度から簿記の事務作業が複雑になるのが理由。今年春の総会で承認された。
 改良区の浦久男理事長は「解散によって地権者がばらばらになり、団体で活動ができなくなる心配はある。しかし、いつまでも組織の維持に労力を使えない」と話す。解散まで、市に対し町づくりや地域活性化のための提案を続けるとしている。
 県によると、土地改良区を解散する場合、保有する水路やポンプなどの施設を市町や関連団体に移譲する必要があり、農地の維持管理が課題となる。県は「解散すれば行政の支援が受けにくくなり、土地の整備が難しくなる。組織の存続が望ましい」とする。
 このまま“塩漬け”の状態が続くのか、それとも、一体的、有効的に生かせる場面が訪れるのか。相浦地区の将来を見据えた議論が活発になるとみられる。


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