新しいブランドづくり目指し、ソバ栽培 遊休農地を活用

ソバを収穫する石井代表=秦野市内(石庄丹沢そば茶屋本舗提供)

 新たな「松田ブランド」づくりを目指し、松田町寄(やどりき)地区でソバ栽培が始まった。秦野市の老舗そば店が遊休農地を活用して取り組み、9月に初めて収穫作業が行われた。同店では隣接する同市三廻部地区に「そばの里」を整備・展開中で、両地区でそばによる地域おこしを夢見る。

 ソバは、「石庄丹沢そば茶屋本舗」(同市堀川)が遊休地約20アールで栽培。7月に種をまき、9月に収穫した。現在は再び種をまいたソバが成育中で、11月に収穫できる予定。来年はさらに作付面積を50アールに広げ、4、6、9月に種をまく三期作を計画している。

 同店はこれまで同市を中心に計約10ヘクタールでソバ栽培を行い、早い時期からソバを製粉・製麺して販売する6次産業化を手掛けている。店内での食事・販売のほか、百貨店などに卸したり、OEM(相手先ブランドによる生産)を行ったりもしている。

 ソバ栽培では農業アカデミーを開校し、30人ほどが在籍しているという。石井勝孝代表(61)は「今の農家はソバの実だけではもうからない。麺にして販売する出口をつくらないといけない」と話す。以前から関係のあった松田町から「寄地区の遊休地活用にソバ栽培はできないか」と相談を受けたが、農作業ができる若者が少ないことから地元だけでは難しいと判断。同店のアカデミー生を動員しての栽培を決意した。

 今年2回の収穫で計80キロのソバの実が取れる見込み。「十割そば」を打つ同店では約千食分に当たるという。石井代表は「寄名産の茶を混ぜた茶そばや、松田山の河津桜を入れた桜そばにして、松田のブランド品としたい」と意気込みを語る。手打ちそば教室の開催なども考えている。町もブランド品の開発のほか、将来的な農泊事業と連携した体験プログラムなどにも期待している。

 同店は隣接する秦野市三廻部地区でソバ栽培からそば打ち、簡易コテージで滞在もできる「天空の丹沢そば村」を展開している。現在は会員制だが、11月からは予約制で一般開放する。

 「三廻部と寄は連携できる。景色のいい所で、本物の料理で、本物の体験ができれば他の観光地に勝てる」と話す石井代表。おいしい水が湧く丹沢山系の裾野に「そばの里」を広げる夢がある。「温暖で三期作ができる神奈川は、長野を抜くそばの里になれる」

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