札幌市北区・新琴似にある、1984年創業の菓子店「菓子の樹」。「小さいころは車屋になりたかった」と話すオーナーシェフの田中英雄さんは、北海道洋菓子協会の会長を務めています。
ものづくりと甘いものが好きだった田中さんは、中学校を卒業してすぐにお菓子作りの世界へ。
まずは小樽の千秋庵に入社して4年半菓子作りを学び、その後「コンテストに出れば賞を取る自信があったから」と更なるチャレンジをこころざし、会社の紹介で東京の菓子店に就職しました。その結果、初めて出展した大会で技能賞を受賞。その後も数々の賞や勲章を受章し、獲得したタイトルは23にも上ります。その功績が認められ、3度の知事賞と、2014年には国からは黄綬褒章を贈られました。
田中流アレンジが光る!「お店をまもりたい」という気持ちが生んだ2つのケーキ
高級感のある見た目が特徴の「カラク」。ココアパウダーが振りかけられ、上部、縁、中身とたっぷりのガナッシュクリームが使われています。
ガナッシュクリームはトリュフのガナッシュ用チョコレートと同じものを使用し、くちどけのいい生チョコの食感を。シロップに使うブランデーを薄く混ぜるのが田中流です☆
バタークリームとあんずジャムを塗って丸めた「バターロール」は、やさしいあじわいの昔ながらのロールケーキです。
かために作ったスポンジの底にあんずジャムを塗り、その上からバタークリームをON♪あんずジャムから出る水分がスポンジのしっとり感を維持してくれるんですって!
まわりにまぶす、バターと小麦粉を薄く焼いて作るそぼろ。通常よりもまぶす量を多めにすることで、田中さんらしさを出しています。
この2つのケーキは菓子の樹の歴史を語る上で外せないケーキ。
いずれも昔ながらの手法に田中流アレンジを加えたもので、田中さんが最後に勤めた札幌の洋菓子店「モンレーブ」時代から作っていたケーキなんです。
誕生のきっかけは、1年で辞めようと思っていたモンレーブで先輩たちが次々と辞めていき、「このままではまずい」「モンレーブの名前を売らなければ」と思い、モンレーブと菓子の樹、それぞれで同じケーキを作ればいいと思い現在も販売しているのだそう。
他人とはちがうことを…♪店主のこだわりは趣味にもケーキにも生かされている
甘さ控えめで、素材本来の味を生かしたケーキを作る田中さん。画用紙を枕元に置いて、アイディアが浮かぶと描き留めていたといいます。
そんな田中さんの「素材本来の味を試してほしい」という思いを形にしたのが、開店当時から作り続けている「まるごと苺」。
たっぷりのイチゴを生クリームとカスタードクリームでサンドし、最後にクレープ生地が乗せられています。
使用しているイチゴは苫小牧の苫東ファームで栽培されているもの。苫東ファームでは高度な環境制御技術により通年で高品質なイチゴを生産していて、受粉の手伝いをしているのはなんとミツバチ!
1~2か月に一度、田中さんは趣味のバイクに乗って苫東ファームを訪れ、ケーキに使用するイチゴをみずからチェックしに行っています。
バイクの他にも一級小型船舶免許も持っている田中さん。水上バイクを楽しんだり、休みの日は庭造りや日曜大工に取り組んだりと多趣味な一面もあります。遊びと仕事のメリハリをつけ、人のやらないことをなるべくやることがモチベーションを保つ秘訣なのだそう☆
お店の脇にあるデッキやイスは自作、植えられているぶどうの木も田中さん自身が植えたものなんですって!
そんな田中さんの遊び心から生まれたのが、他とはちょっと違う形をした「アップルパイ」。
実はこれ、パウンドケーキの型を使って焼いているんです。
パウンドケーキ型を使うことによってリンゴのみずみずしさを保つことができ、熱伝導がゆっくりで適しているのだとか。
菓子作りの楽しさ伝えるため専門学校講師に!弟子や孫へ託す「菓子の樹」の味
お店を営むかたわら、40年間調理専門学校の講師も務めてきた田中さん。パティシエを志す子どもが減ってきていることを感じ、「ケーキ作りの面白さを伝え、子どもたちがもっとケーキ作りに興味を持ってくれるようなことをやっていきたい」と話していました。
現在は弟子の水津雛さんの他に、娘の小熊友美さん、孫の小熊来夢さんとともにお店を切り盛りしている田中さん。
将来の夢は、弟子と孫に店を譲りたいと考えているのだそうです。
長年地域の人に愛されてきた「菓子の樹」のケーキ。代替わりを見据えながらも変わらず続く田中さんのこだわりが詰まったケーキの味は、弟子や孫の代になりどのようにアレンジされていくのでしょう。今後も目が離せませんね!
【菓子の樹】
住所:札幌市北区新琴似1条10丁目2-7
電話番号: 011-764-9111
営業時間:午前9時~午後7時30分
定休日:不定休
(10月8日放送「みんテレ」より)