「えっ、そうなの?」 日本とは全く視点の異なるアメリカでの家探し(2)

 NYやLAなどの沿岸都市部に比べると、圧倒的に知られていないアメリカ南部。その文化、習慣、宗教観などをケンタッキー州よりジョーンズ千穂が紹介するコラム『アメリカ南部のライフスタイル』。「アメリカでの家探し」の第2回目は、新築よりも中古物件の方が人気ある理由を解説しよう。

アメリカでは、なぜ中古物件の方が人気が高いのか?

 「アメリカでは中古の家を改築すると価値が上がって高く売れる」という景気の良い話を聞いたことがある人も多いだろう。しかし、それは、不動産市場が沸騰しているアメリカ東西の沿岸部での話。しかも、その中の一部の地域に限られた話だと思った方が良いだろう。

 だからといって、沿岸部の大都会以外の州や地域でも中古物件は支持されていないわけではなく、不動産価格が高騰していない地域でも新居を選ぶ際に、新築よりも中古物件を選ぶ人のほうが多い。中古物件の方が新築に比べて割安であることや、人気のエリアには既にコミュニティーができていることなど理由はいろいろあるが、最大の理由は、多くの人たちが「早く引っ越して落ち着きたい」から。要はみんな時間がないからだ。

 一軒家を購入する世代は、学校に通学する子供がいることが多い。従って、子供の学校の休暇に合わせて引っ越し、新学期には新居で落ち着いていたいと考えると、与えられた期限内に家を見つけて引っ越さなくてはならない。時間的なプレッシャーを抱えている人は、工期通りには終わらないアメリカで、悠長に家を新築している時間がないのである。

こんな家は「マネーピット」。中古物件を購入する際の注意点とは?

 家の購入は大きな買い物だ。中古物件を購入後に問題が起きる家をできるだけ避けるために、注意したい点を挙げてみよう。「マネーピット」(金食い虫)の家とは、どんな家だろうか。

 家を探しているときは、購入を考える家を実際に見にいくのは当然だが、内覧をする前に家の周辺を回ってみる。その際、周辺の通りにある店舗の窓に鉄格子がついていたり、近所の家のフロントヤード(前庭)や道にごみが散らばっていたり、簡易的なフェンスが付いている家があったら要注意だ。また、ランニングや犬の散歩ではない人が道を歩いていたり、車道の表面がガタガタだったり、家の外構や芝生の手入れがされていない家が多い地域は、まず避けるべきいうサインである。

 日本から渡米して日が浅いと、人が道を歩いていることには何の違和感も覚えないかも知れないし、鉄格子を見ても「あのアンティーク調の窓の飾り、可愛いな」と思うかもしれない。私自身、その発言をしたことがあり、そのとき一緒にいたアメリカ人の友人に苦笑いされてしまった。というのも、鉄格子は泥棒防止のためのものであり、手入れをせずに汚くなったものがアンティーク調に見えただけだったからだ。今は見ればすぐ区別がつくが、渡米してきたばかりの11年前の私には区別がつかなかった。

購入後に起こりうることを事前にチェック

 中古物件には、「購入後に起こりうるハプニング」もある。

 ヒーターやお湯のシステムは日本とは異なるものが多く、たいていHVAC(全館空調)、お湯はホットウォーター・タンクが設置されているが、それぞれに寿命がある。中古物件の場合、白物家電が家にそのままついてくることが多いが、その交換時期も知っておくべきだ。忘れがちなのは屋根。屋根は築年数によって定期的に張り替える必要があるので、購入時の状態によって購入後の出費が大きく変わってしまう。それらを長年交換していない家は、HVACだけでも約$6,000~$10,000(日本円で約65万~110万円)、屋根は約$10,000(約110万円)はかかる。住む地域によっては、持ち家の前の歩道の補修費用や樹木の手入れが自費なところもあるため、そういうことを購入前に確認しておかないと、いくらあっても足りなくなってしまう、まさに「マネーピット」(金食い虫)の家となるのである。

 ちょっとした家の修理や家電のトラブル修復も、アメリカでは電話をたらい回しにされて埒が明かなかったり、作業員が時間に来なかったり、言われるまま料金を前払いしたら音信不通になるなど、トラブルが多い。しかし、そういうことをアメリカ人に言うと、同情はしてくれても、「Welcome to America !」(アメリカへようこそ!)と言われるがオチ。こういうトラブルは「アメリカあるある」なのだ。しかし、トラブルでクタクタになっていた私は「Welcome to America!」と言われても、全く嬉しくなかったが(苦笑)。

 中古の家を購入する前には、購入後に起こりえる修理や故障のときのための期間限定の保険(ホームオーナーズ・インシュランス)を売主に払ってもらうように交渉するか、自分たちで入っておくと良いだろう。そういうセイフティーネットがないと、万が一、すべての修理や交換が一度に重なってしまった際には、せっかくの家を手放すことにもなりかねないので、購入前のリサーチはしっかり行おう。

© 株式会社メディアシーク