トランプ大統領の選挙集会で700人のコロナ感染死亡の可能性 米スタンフォード大の研究者が推計

米スタンフォード大の経済学者を中心としたグループが、回帰分析の手法を使いトランプ大統領が6月から9月まで開催した選挙集会の影響を分析したところ、少なくとも30,000回の新型コロナウイルス感染の機会を発生させ、そのうち700人の死亡に関与した可能性があると発表した。発表した論文は査読前の議論を目的としたもので、政権側は政治的な意図に基づいたものとして非難している。

コンタクトトレーシングが機能していない米国、実際に集会開催地では感染者急増

論文を発表したのはスタンフォード大学経済学部長であるダグラス・ベルンハイム氏を中心としたグループ。研究グループではトランプ大統領が6月から9月にかけて開催した選挙集会の開催地18郡と、開催日前の時点でその18郡と同様の人口、感染者推移の経緯をたどっている他地域(200郡)とその後の推移を比較した。その結果、18郡で開催された選挙集会が10万人の居住者あたり250人以上の患者増加に影響したとし、トータルで30,000を患者増加、そのうち少なくとも700人以上が亡くなった可能性が高いと結論付けた。なおトランプ大統領はその後も全米各地で選挙集会を数多く繰り返している。

なお感染予測については通常は感染者から接触者について情報を聞き取り、隔離と予防を行うコンタクトトレーシング(接触追跡)が行われており、そのデータに基づいて行われるものだが、トランプ政権がそのための予算を拠出せず、各公衆衛生当局が統計を出せない状態が続いている。

大統領が6月最初に集会を開催したオクラホマ州タルサでは、集会後2週間で1日で206件の新規感染者数を記録しており、公衆衛生当局はおそらく関連しているだろうと見解を述べた。またミネソタ州の公衆衛生当局は、9月18日にトランプ大統領がベルトラミー郡ベミジ市で開催した集会で16人の感染者(うち入院2件)が発生したことを確認している。同日に同州ダルースでバイデン氏も集会を開いているが、こちらで発生した症例は1件(入院なし)だという。

論文についてベルンハイム氏がSNSなどに投稿すると、各方面から多くの反応があった。ホワイトハウスのディアー報道官はこの論文について、仮定が間違っており、政権側を非難するための政治的意図があるとして批判している。また同時期に起こっていた警察による黒人差別に抗議するデモの影響をまったく考慮していないとの批判も出ている。これに対し同氏は「集会は開始と終了が決まっている研究しやすいイベント」であるから対象としたまでで、デモの影響を意図的に除外したわけではないと述べている。なお論文は主に研究者同士で議論を行うための投稿サイト「SSRN」に30日付で掲載された。

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