風雨に強い米作りへ新装置 横浜の市民団体に国際環境賞 太陽光で稼働、途上国でも活用期待

「エネルギーグローブ賞」を受賞した恩田町堀之内地区まちづくり協議会のメンバーら=オーストリア大使館(同協議会提供)

 横浜市青葉区の市民団体が、台風でも倒れにくい稲を作るための新たな栽培技術を開発した。酸素の含有率を高めた水を与える点が特徴で、根や茎を強くする効果が確認された。水に酸素を供給する装置は太陽光発電で稼働し、持ち運びも可能。送電線の整備が十分でない発展途上国をはじめ、広く利活用が期待される。こうした点が評価されて9月に、持続可能な環境プロジェクトに与えられる「エネルギーグローブ賞」の日本部門賞に選ばれた。

 技術を開発したのは、同区の「恩田町堀之内地区まちづくり協議会」。2017年に地域課題の解決を目指して同地区の住民らが結成した。

 同区はベッドタウンとして都市化が進む一方、田畑も多い。農業従事者にとって、近年、悩みの種になっているのが米の収穫期の秋に襲来する大型台風だ。倒れた稲が水に漬かると収穫に手間取るだけでなく、品質低下も招く。協議会代表で兼業農家の鈴木敏文さん(69)は「頭を抱える同業者の姿が目に浮かんだ」と話す。

 18年冬、鈴木さんら協議会メンバーは風雨に強い米作りを目指すプロジェクトを立ち上げた。産業技術大学院大学の客員研究員だった桐原悦雄さん(68)をアドバイザーに迎え、植物の成長に必要な酸素を水田により多く供給して、稲の根や茎の成長を促す技法を開発した。

 ポイントとなる酸素を水に送り込むエアポンプは太陽光発電で稼働。衣装ケースほどの大きさのソーラーパネルや車のバッテリーを組み合わせた太陽光発電装置を電源としている。大人なら一人で持ち運べる重量で、どこでも手軽に使えるようにした。

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