九州高校野球 大崎、エース好投 「優勝」まで手綱緩めず

【準々決勝、延岡学園-大崎】3安打2失点で完投した大崎のエース坂本=県営ビッグNスタジアム

 第147回九州地区高校野球大会第3日の3日、大崎が悲願の甲子園を視界に捉えた。2年前の清水監督就任と現3年生入学までは部員不足で、他校と合同で大会に出ていた。そんなチームが、わずか3年弱で選抜出場が有力となる九州4強に名を連ねた。「生徒たちが信じて一生懸命ついてきてくれた」。指揮官の表情は試合中の緊張感と対照的に穏やかだった。
 少子高齢化が進む長崎県西海市大島・崎戸地区の生徒数114人の小規模校。全国的にまだ無名だが、予想外の強さではない。県外の私学にも負けない厳しく、質の高い練習と生活を重ねてきた。その成果を中心となって披露したのは、この日も絶対エースの坂本だった。
 二回にワンバウンドの暴投で先制を許したが、ぶれずに低めを突き続けた。27アウトのうち実に18個が内野ゴロ。八回に1点差に迫られ、なおも2死一、二塁のピンチでは、それまでの配球を生かした。2球で追い込むと、低めの変化球を意識させた上で外角いっぱい138キロの直球で三球勝負。「ボールに気持ちが乗っていた」。相手は手が出なかった。
 昨季の新人大会から県内公式戦28連勝中の実力、活躍を多方面から支える地域、そして県内無敗ながらコロナ禍で夢舞台を奪われた3年生の思いも胸につかんだ今回の4強。センバツを戦う資格は十分あるが、まだ、チームは手綱を緩めていない。掲げているのはあくまでも「優勝」だ。
 試合後、球場で応援した昨季のエース田中は、打っても3点目の適時打を放った後輩右腕に「やってくれた」と柔らかな笑みを浮かべた。その坂本は「3年生の力でもある。今まで以上に制球を大事に次も流れをつくりたい」と最後まで冷静だった。


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