北海道を再エネの大地へ㊤先行する長崎・五島

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今回のテーマは「再生可能エネルギー」。2回にわたって伝える。北海道では2年前、胆振東部地震でブラックアウト(=全域停電)が発生。また先月には、高レベル放射性廃棄物いわゆる核のごみをめぐって、寿都町や神恵内村が国の文献調査の受け入れを表明し、大きな波紋を広げている。電力の安定や安全・安心をめぐる議論が巻き起こるなか、北海道で相次ぎ参入を目指す風力発電。その可能性と課題を先進地の長崎・五島から探る。

北海道の電源構成 現状は?

そもそも私たちが使っている北海道の電力は、どのようなエネルギーで発電されているのか。

2019年の実績では、約7割が化石燃料(石炭・石油・LNG=液化天然ガス)で、再生可能エネルギーは24%。そのうち風力は、1割に満たない。

先進国の中でも日本の数字は低い

環境への配慮などから、世界中で再生可能エネルギーの導入・拡大が必要とされている。欧州各国と日本の導入実績・目標を比べてみると、数字の低さが分かる。こうした中、北海道で次々に計画が立ち上がり、今後大きな期待をされているのが、洋上風力。

国もその推進に力を入れていて、国内では現在4つの地域が洋上風力発電の設置が可能となる「促進地域」に指定されている。北海道でも桧山や後志など、一部地域が手をあげているが、まだ促進地域には選ばれていない。このうち商業ベースでの発電がすでに始まっている、長崎の五島市を取材した。

再エネ率8割超えへ!先進地の長崎・五島

九州の西、約150の島々からなる五島列島。その最大の島=福江島にある五島市。人口3万7千人。世界遺産である潜伏キリシタンの関連遺産も島内に数多くあり、五島椿や五島牛など名産も多い。農業、漁業、観光を中心に、豊かな自然に恵まれた島だ。

そんな五島市が産業の大きな柱に育てているのが、再生可能エネルギー。この島の電力は現在、風力・太陽光・水力で5割をまかなっている。なかでも今、最も力を入れているのが、洋上風力発電。現在、国指定の促進地域に含まれ、今は1基だけだが商業ベースでの発電も国内に先駆けて始まっている。

2011年から国の実証実験として始まった洋上風力。五島では2013年から商業ベースでの稼働が続いている。これまでに7千人が視察に訪れ、今や重要な観光資源にもなっている。その洋上風力は島の港から10キロほどの沖合にある。中心部に近い港から、ボートで20分ほどで洋上に浮かぶ風車にたどり着いた。この一基で最大出力は2メガワット。約1,800世帯の電力を賄うことができる。

風車を水面に浮かべる浮体式

洋上風力には大きく2つのタイプがある。比較的水深が浅い海域では、海底に直接、躯体を埋め込む着床式と呼ばれるタイプが採用されるが、ここでは風車を水面に浮かべる浮体式という形態を採用している。沿岸の水深が深いことや、騒音、景観に配慮して沖合に造る浮体式を選んだ。着床式に比べて1基数億という高い建設費用も、10基を一斉に発注することでコストを圧縮した。完成すれば島全体の8割の電力を賄えるという。本格稼働は早ければ2~3年後だ。

人口減でも経済効果は約41億円!

長崎・五島市の人口はピーク時9万人以上を数えたが、現在はその4割にまで落ち込む。2060年には2万人を切ってしまうという試算もあり、市の関係者は「2万人で食い止めたい」と話す。

五島市は、世界遺産・五島椿・マグロの養殖・再生可能エネルギーの4つの分野を産業の柱に育てる計画だ。再エネをめぐっては、すでに市の大きな財源になっているものがある。

洋上風車を運ぶ専用の台船

フロートレイザー船。一万トンを超える巨大な船で、船体を海に潜りこませながら風車を建設することができる。造船費は30億円。五島市を拠点港としているため、ことしから市に年間数千万円の固定資産税が入っている。建設予定の洋上風力10基が完成するまで、少なくとも数年はここに留まる。これだけではない。洋上風力は、島内に新たな雇用も生んでいる。

島内にあるイー・ウィンド。五島から北海道など、全国の風車約120基のメンテナンスや管理をする会社だ。社長の橋本さんは、イーウィンドのほかに地元企業や団体からなる「五島市民電力」という新電力の社長も務め、五島産再エネ100%の電力販売をスタート。電力のブランド化に挑んでいる。

五島市は新たな洋上風力の建設と稼働で20年間で41億円の経済効果を見込んでいる。こうした経済効果の一方で、洋上風力の建設にあたって当初から懸念されていたのが、漁業への影響だ。

漁業への影響は?“海洋牧場”目指す

これは長崎五島沖の洋上風車の水面下。風車設置から2年くらいで、胴体が見えないほどサンゴなどが張り付き漁礁ができている。

洋上風力は海を使うため、一般的に課題とされるのが漁業者への影響だ。五島ふくえ漁業協同組合の熊川長吉組合長は「海を使うということは、風車を置くことで漁場が狭くなる。漁業者と事業者がお互いに共存共栄、どちらも良くなる。これを目指すことが条件」と話す。

熊川組合長は、不安視する漁師たちの声と行政や事業者の間を取り持ち、洋上風力を実現に導いた。数年にわたり集めた国のデータや水中の様子を見せることで漁師の同意が得られるようになった。熊川組合長は「魚を捕るためにあまり遠くに行かず、あまり燃料を使わずに魚を釣って所得を得る。そういう形ができれば後継者が一人でも二人でも育つ。そこに行けば魚が釣れる、いわゆる“海洋牧場”を作りたい」と話す。

再生可能エネルギーの導入にはコストがかかり、地元の理解も不可欠だ。良い循環を作ることで、地域経済の活性化につながるかもしれない。
(2020年11月7日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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