<レスリング>【2020年全日本大学選手権・展望】重量級が強い山梨学院大が初の大学二冠王へ挑戦! 日体大、拓大が阻止できるか

 2020年内閣総理大臣杯全日本大学選手権は11月7日(土)~8日(日)に大阪・東和薬品RACTABドームで行われ、大学対抗得点では、昨年大会と今年10月の全日本大学グレコローマン選手権を制した山梨学院大が団体戦3連覇を目指す。優勝すれば、同大学初の両スタイルの大学王者に輝く。

 大学対抗得点と各階級の見どころをさぐった。(優勝=12点、2位=9点、3位=6点、5位=3.5点、7位=2点、8位=1点)。

《大会日程》11月7日(土) 57・61・65・70・75kg級(1回戦~敗者復活戦・ファイナル)
               86・97・125kg級( 同 )

(注)各大学の正エントリー選手の昨年まで、および今年10月の成績をもとにした予想です。コロナ禍によるブランクや直前の負傷による実力ダウン、選手の交代等は勘案しておりません。


大学対抗得点・展望

昨年、3年ぶりに王座を奪還した山梨学院大。2年連続優勝なるか

 8階級制に変わってからの優勝得点は、2014年が63点(日大)、2015年が53.5点(山梨学院大)、2016年が58点(山梨学院大)、2017年が48.5点(拓大)、2018年が55点(日体大)、昨年が49点(山梨学院大)。今年は戦力が均衡しているので、優勝ラインは「50点」、もしかしたら「45点」を下回るかもしれない。

 昨年優勝の山梨学院大は、86kg級で山田修太郎、97kg級で大津拓馬、125kg級でバグダウレット・アルメンタイの3階級で優勝を目指す。全日本大学グレコローマン選手権も制して波に乗っている重量級3選手がそろっているのは強み。初日に優勝はなくとも、61kg級の服部大虎、70kg級の森川陽斗らが上位入賞を果たして15点をマークしていれば、最終日に36点(12点×3)を上乗せして51点へ。逆転優勝する可能性は十分。

 王座奪還を目指す日体大は、65kg級に出場する昨年の61kg級世界選手権代表の山口海輝と74kg級に出場する同79kg級代表の髙橋夢大の2階級は優勝を外したくない。山口には昨年優勝の安楽龍馬(早大)、高橋には昨年70kg級優勝の志賀晃次郎(拓大)と70kg級全日本王者の原口伸(国士舘大)が、それぞれ難敵となろう。この壁を乗り越えれば24点(12点×2)を獲得し、3位以内入賞が3選手いて(6点以上×3)、残る3階級で上位入賞を果たせば優勝ラインの50点を超える。

東和薬品RACTABドームで行われた2年前の大会で優勝した日体大

 拓大は2018年65kg級優勝の谷山拓磨を70kg級に、昨年70kg級優勝の志賀晃次郎を74kg級に起用する布陣。負傷から復帰して65kg級に出場する2018年高校三冠王の森川海舟とともに3階級を制すれば優勝ラインに近づく。

 昨年2位だった早大は、65kg級の安楽龍馬と70kg級の米澤凌の2階級を取り、97kg級に起用される梅林太朗や125kg級の山崎祥平らが上位入賞することで優勝への道が見えてくる。

 日大と国士舘大も2階級優勝が団体優勝の必須条件。日大は86kg級の石黒隼士と97kg級の吉田ケイワンの2階級で優勝し、61kg級の田縁真大や70kg級の坂野秀尭らの健闘にかけることになろう。国士舘大は2人の全日本王者(74kg級に出場する原口伸、86kg級の奥井真吉)が勝ち、57kg級で世界ジュニア王者の阿部敏弥、65kg級で昨年の70kg級1年生学生王者の諏訪間新之亮が勝つことで優勝圏内に食い込むことが可能だ。


各階級展望

 【57kg級】

世界ジュニア王者の阿部敏弥(国士舘大)

 昨年の世界ジュニア選手権を制し、この大会2位の阿部敏弥(国士舘大)が一歩リードか。アジア・ジュニア選手権優勝の竹下雄登(日体大)、昨年3位の山口叶汰(神奈川大)、全日本学生選手権2位の荒木大貴(専大)、西日本学生選手権2連覇の永本竜平(中京学院大)らが、阿部の牙城を崩すことができるか。

 新人では、世界カデット選手権55kg級3位の菅沼碧久(青山学院大=東京・自由ヶ丘学園高卒)が優勝争いに食い込めるか。

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 【61kg級】

全日本選手権2位の清水蛍汰(拓大)

 昨年の1位(榊流斗)はエントリーなし、2位(山口海輝)は65kg級へ、3位の2人は卒業の階級。全日本選手権2位の清水蛍汰(拓大)が初の学生タイトルを手にするか。

 全日本選手権3位の小川航大(日体大)、2018年全日本学生選手権優勝の田縁真大(日大)、昨年57kg級3位の服部大虎(山梨学院大)らが、どう闘うか。西日本からは西日本学生選手権65kg級優勝(昨年の61kg級とともに2連覇)の秋山拓未(九州共立大)に期待がかかる。

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 【65kg級】

学生二冠王者の安楽龍馬(早大)

 昨年の学生二冠王であり国体王者の安楽龍馬(早大)が一歩リードと思われるが、61kg級で世界ジュニア選手権を制し、シニア世界選手権にも出場した山口海輝(日体大)がこの階級にエントリーした(昨年大会は61kg級2位)。闘うことになれば、激戦が予想される。

 全日本学生選手権70kg級で1年生王者に輝いた諏訪間新之亮(国士舘大)は階級を下げて出場。この階級で実力を発揮できるか。

 東日本学生秋季選手権優勝の佐々木虎次郎(専大)、負傷から復帰した2018年高校三冠王者(全国高校選抜大会55kg級、インターハイ60kg級、国体60kg級)の森川海舟(拓大=東京・自由ヶ丘学園高卒)らが、優勝争いにからんでくるか。

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 【70kg級】

2018年65kg級優勝の谷山拓磨(拓大)

 昨年優勝の志賀晃次郎(拓大)は74kg級へ出場し、2018年65kg級優勝、昨年同級3位の谷山拓磨(拓大)がこの階級にエントリー。一階級上でも強さを発揮するか。昨年2位の米澤凌(早大)、はこの階級で闘ってきた意地を見せねばなるまい。

 昨年3位の伊藤朱里(中大)、全日本学生選手権74kg級3位の森川陽斗(山梨学院大)、全日本選手権3位の坂野秀尭(日大)、西日本学生選手権2連覇の佐長拓未(同志社大)らの中から優勝争いにからむ選手が出るか。

 新人では、国体少年71kg級王者で全日本選手権で2位に躍進した高田煕(日体大=千葉・日体大柏高卒)がエントリーされている。一気に王者を奪取するか。

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 【74kg級】

昨年70kg優勝の志賀晃次郎(拓大)

 昨年、70kg級で世界選手権に出場し、この大会優勝の志賀晃次郎(拓大)と、70kg級で全日本選手権を制した原口伸(国士舘大)が、ともに階級を上げてエントリー。一方、79kg級で世界選手権に出場し全日本選手権2位だった髙橋夢大(日体大1年=京都・網野高卒)も出場する。階級を上げた選手と下げた選手の争いは、だれが勝つか。

 全日本学生選手権3位の三木雄平(青山学院大)、10月の全日本大学グレコローマン選手権2位の前田明都(専大)、アジア・ジュニア選手権3位の藤田悠(日大)らが全日本でもトップの3選手の壁を破ることができるか。

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 【86kg級】

2連覇を目指す石黒隼士(日大)

 昨年優勝の石黒隼士(日大)の連覇なるか。全日本選手権でも2位に進出しており、地力は十分。昨年は3位だった山田修太郎(山梨学院大)は、今年2月のアジア選手権(インド)で優勝し、コロナ・ブランク後の全日本大学グレコローマン選手権87kg級で勝つなど好調。勢いを持ち込めるか。

 79kg級全日本王者の奥井真吉(国士舘大)もこの階級に出場する。アジア選手権(インド)でも3位に入るなど力をつけており、1階級上でも実力を発揮できるか。西日本学生選手権92kg級2連覇の河津佑季(日本文理大)、国体3位の八木海里(中大)らも殊勲を目指したい。

 アジア・ジュニア選手権優勝の白井達也(日体大)が、どこまで実力を伸ばしているか。

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 【97kg級】

2階級にわたっての学生二冠王者の吉田ケイワン(日大)

 昨年の全日本学生選手権92kg級で勝ち、この大会は97kg級で優勝した吉田ケイワン(日大)の連覇なるか。昨年3位ながら、全日本選手権で優勝しアジア選手権(インド)で2位躍進の大津拓馬(山梨学院大)との優勝争いか。ともに10月の全日本大学グレコローマン選手権に出場し、慣れないスタイルながら実戦を経験しただけに(大津が優勝、吉田は初戦敗退)、ハイレベルの闘いが期待される。

 西日本学生選手権2連覇の村田優(中京学院大)、東日本学生秋季新人戦92kg級優勝の伊藤飛未来(日体大)、チーム事情でこの階級に出場する全日本選手権79kg級3位の梅林太朗(早大)、10月の全日本大学グレコローマン選手権で2位に躍進した横田裕大(立大)らが優勝戦線に浮上するか。

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 【125kg級】

無敵の白星街道を突き進むバグダウレット・アルメンタイ(山梨学院大)

 バグダウレット・アルメンタイ(山梨学院大)が、2017・18年の97kg級を含めて4年連続優勝を目指す。10月の全日本大学グレコローマン選手権でも3連覇を達成しており、強さはとどまることを知らない。4連覇の可能性はかなり高い。

 全日本学生選手権優勝の森右秀(中京学院大)、同3位の武藤翔吾(中大)、昨年のグレコローマン学生二冠王者の番地啓太(国士舘大)、昨年3位のアビッド・ハルーン(日体大)山崎祥平(早大)らが、その牙城へ挑む。

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